『アニー・ホール』

この週末は、ブルーレイで『アニー・ホール』を見た。

1977年のアメリカ映画。
監督・脚本・主演は、『カジノ・ロワイヤル』(出演)のウディ・アレン
と言うより、本作が代表作か。
本作は、以前DVDで見たことがあるので、今回が2度目の鑑賞。
ウディ・アレンの名は、子供の頃から知っていた。
あのコミカルなナレーションの予告編を、色々な所で見聞きした記憶がある。
彼自身を特別に好きな訳ではないが、『誘惑のアフロディーテ』は学生の頃、ミラ・ソルヴィーノが好きだったので、何度も見たような。
もう一人の主演は、『ゴッドファーザー』シリーズのダイアン・キートン
彼女は、ウディ・アレンと付き合っていたことがあるそうな。
本作には、他にも色々と個性的な役者が出ている。
狼たちの午後』のキャロル・ケイン、サイモン&ガーファンクルポール・サイモン、『シャイニング』のシェリー・デュヴァル等。
あと、後に有名になった俳優がチョイ役で出ている。
ディア・ハンター』『天国の門』のクリストファー・ウォーケン、『ジュラシック・パーク』『インデペンデンス・デイ』のジェフ・ゴールドブラム、『エイリアン』のシガニー・ウィーバー等。
更に、トルーマン・カポーティマーシャル・マクルーハンも出演している。
撮影は、『ゴッドファーザー』シリーズ、『大統領の陰謀』のゴードン・ウィリス
さて、本作は、オープニング・タイトルのバックに、音楽が一切ない。
ウディ・アレン(あるいは、彼の演じるアルビー・シンガー)の語りから始まる。
本作は、しばしば登場人物が観客に向かって語り掛ける。
物語の流れを観客と融合させようという試みかも知れない。
本作が評価されたのは、こういう斬新な語り口にもよるのだろう。
アルビーは、アニー(ダイアン・キートン)と別れたが、未だ未練があるという。
ここから、アルビーの少年時代への回想。
本作は、時間の流れも自由だ。
話しがポンポン飛ぶ。
先の大戦中のこと。
アルビーは、ブルックリン生まれの少年である。
ローラー・コースターの下の家に住んでいた。
騒音がヒドイ。
更に、この回想の中に、現在のウディ・アレン(あるいはアルビー)が登場する。
通常の物語の時間の流れが、錯綜している。
アルビーは、現在はコメディアンである。
そして、彼がユダヤ人であることが強調される。
ユダヤ人であることによって、様々な差別を受ける様が、コミカルに、しかし、皮肉っぽく描かれる。
まあ、ヘンな映画である。
アルビーはアニーと、イングマール・ベルイマンの映画を一緒に観る約束をしていた。
しかし、アニーが2分遅刻して、不機嫌になるアルビー。
何事にも大雑把なアニーと、神経質なアルビーの対比が、既に出ている。
映画館で並んでいる時、後ろのヤツが映画についてのウンチクを延々と語っている。
こういうヤツ、いるよなあ。
ベルイマンの映画なんか観に行くようなヤツには、尚更いそうだ。
後ろのヤツが、フェリーニの話しから始まって、今度はマクルーハンがどうのこうのと言い出した。
ついに、アルビーがキレる。
後ろのヤツは、どこかの大学の教授らしい。
アルビーは、「それがどうした」とばかりに、本物のマクルーハンを連れて来る。
余談だが、僕は昔、マクルーハンのメディア理論に引っ掛けて『2001年宇宙の旅』を分析しているとかいう本を読んだことがある。
中学生か高校生の頃だったと思う。
『2001年』に引かれて読んだのだが、何が書いてあるのか、さっぱり分からなかった。
それはさておき、アニーとアルビーは、どう見ても性格が合わなそうである。
アニーはセックスを嫌がる。
アルビーは、とにかく神経質である。
本作は、通常の物語の流れを、わざわざ破壊する。
ただ、ゴダールの某映画のように、理解出来ないようなものではない。
それにしても、話しが時系列に縛られず、どんどん飛ぶ。
アルビーは、オマール・エビがキライである。
確かに、よく見ると、気持ち悪いな。
美味いけど。
アルビーの前の奥さんとの出会いについて。
前の奥さんは、政治好きの学生だった。
これまでに2回、結婚している。
次の奥さんは、セックスに対して、異常に神経質であった。
ほんの少しの物音でも、もうガマン出来ない。
アルビーは、前の奥さんについて、言いたい放題に語る。
まあ、本音で語られるところが、本作の(あるいは、本作の主人公の)魅力ではあるだろう。
アルビーがアニーと知り合ったのは、友人に誘われて行ったテニスがきっかけである。
アニーは、最初からアルビーが気に入ったようであった。
この男のどこにそんなに魅かれるのか、さっぱり分からんが。
最初は甘いロマンスだったのに、次の場面では、もう険悪になっている。
アニーはヤク中であった。
マリファナがないとセックス出来ない。
物語の進行と共に、二人の人となりが少しずつ明らかにされる。
アルビーは、ニューヨーク大学カンニングで退学させられた。
一方、高卒のアニーは、社会人学生として大学に通い出した。
日本にも、もっと社会人学生の制度が定着すれば良いのに。
これから少子化で、大学はますます学生を確保するのが困難になるのだから。
話しが逸れてしまった。
アルビーは、精神科にもう15年も通っている。
まあ、彼の言動を見ていれば、それも納得だ。
アルビーの語りには、独特の皮肉っぽいユーモアがある。
彼は、ついにアニーと大ゲンカをする。
そして、二人は別れる。
アルビーは、友人に別の女性(シェリー・デュヴァル)を紹介してもらった。
でも、すぐにアニーとヨリを戻す。
夜中に、彼女が「大変なことが起こったから、すぐに来て!」とアルビーを呼び出したのだ。
急いで彼女の部屋へ行ってみると、何と「大きなゴキブリがいるの」という。
アルビーは、ゴキブリを叩き潰す。
オマール・エビは怖いのに、ゴキブリは平気なのか。
二人はヨリを戻したように見えても、また、すぐにケンカになる。
まあ、男と女なんて、そんなもんだろう。
我が家も…いや、止めておこう。
この後、クラブ歌手をしているアニーが、プロの歌手(ポール・サイモン)にほめられて有頂天になる辺りから、また雲行きが怪しくなって来る。
アルビーの「男の嫉妬」が始まったのだ。
マクベス』みたいだな。
さあ、これから二人の恋の行方はどうなるのだろうか。
面白い映画である。
単なる恋愛映画ではない。
好きか嫌いかは別として、その大胆な語り口が、後の映画に多大な影響を与えた。
アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞受賞。