この週末は、ブルーレイで『アニー・ホール』を見た。
- 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- 発売日: 2014/07/02
- メディア: Blu-ray
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監督・脚本・主演は、『カジノ・ロワイヤル』(出演)のウディ・アレン。
と言うより、本作が代表作か。
本作は、以前DVDで見たことがあるので、今回が2度目の鑑賞。
ウディ・アレンの名は、子供の頃から知っていた。
あのコミカルなナレーションの予告編を、色々な所で見聞きした記憶がある。
彼自身を特別に好きな訳ではないが、『誘惑のアフロディーテ』は学生の頃、ミラ・ソルヴィーノが好きだったので、何度も見たような。
もう一人の主演は、『ゴッドファーザー』シリーズのダイアン・キートン。
彼女は、ウディ・アレンと付き合っていたことがあるそうな。
本作には、他にも色々と個性的な役者が出ている。
『狼たちの午後』のキャロル・ケイン、サイモン&ガーファンクルのポール・サイモン、『シャイニング』のシェリー・デュヴァル等。
あと、後に有名になった俳優がチョイ役で出ている。
『ディア・ハンター』『天国の門』のクリストファー・ウォーケン、『ジュラシック・パーク』『インデペンデンス・デイ』のジェフ・ゴールドブラム、『エイリアン』のシガニー・ウィーバー等。
更に、トルーマン・カポーティとマーシャル・マクルーハンも出演している。
撮影は、『ゴッドファーザー』シリーズ、『大統領の陰謀』のゴードン・ウィリス。
さて、本作は、オープニング・タイトルのバックに、音楽が一切ない。
ウディ・アレン(あるいは、彼の演じるアルビー・シンガー)の語りから始まる。
本作は、しばしば登場人物が観客に向かって語り掛ける。
物語の流れを観客と融合させようという試みかも知れない。
本作が評価されたのは、こういう斬新な語り口にもよるのだろう。
アルビーは、アニー(ダイアン・キートン)と別れたが、未だ未練があるという。
ここから、アルビーの少年時代への回想。
本作は、時間の流れも自由だ。
話しがポンポン飛ぶ。
先の大戦中のこと。
アルビーは、ブルックリン生まれの少年である。
ローラー・コースターの下の家に住んでいた。
騒音がヒドイ。
更に、この回想の中に、現在のウディ・アレン(あるいはアルビー)が登場する。
通常の物語の時間の流れが、錯綜している。
アルビーは、現在はコメディアンである。
そして、彼がユダヤ人であることが強調される。
ユダヤ人であることによって、様々な差別を受ける様が、コミカルに、しかし、皮肉っぽく描かれる。
まあ、ヘンな映画である。
アルビーはアニーと、イングマール・ベルイマンの映画を一緒に観る約束をしていた。
しかし、アニーが2分遅刻して、不機嫌になるアルビー。
何事にも大雑把なアニーと、神経質なアルビーの対比が、既に出ている。
映画館で並んでいる時、後ろのヤツが映画についてのウンチクを延々と語っている。
こういうヤツ、いるよなあ。
ベルイマンの映画なんか観に行くようなヤツには、尚更いそうだ。
後ろのヤツが、フェリーニの話しから始まって、今度はマクルーハンがどうのこうのと言い出した。
ついに、アルビーがキレる。
後ろのヤツは、どこかの大学の教授らしい。
アルビーは、「それがどうした」とばかりに、本物のマクルーハンを連れて来る。
余談だが、僕は昔、マクルーハンのメディア理論に引っ掛けて『2001年宇宙の旅』を分析しているとかいう本を読んだことがある。
中学生か高校生の頃だったと思う。
『2001年』に引かれて読んだのだが、何が書いてあるのか、さっぱり分からなかった。
それはさておき、アニーとアルビーは、どう見ても性格が合わなそうである。
アニーはセックスを嫌がる。
アルビーは、とにかく神経質である。
本作は、通常の物語の流れを、わざわざ破壊する。
ただ、ゴダールの某映画のように、理解出来ないようなものではない。
それにしても、話しが時系列に縛られず、どんどん飛ぶ。
アルビーは、オマール・エビがキライである。
確かに、よく見ると、気持ち悪いな。
美味いけど。
アルビーの前の奥さんとの出会いについて。
前の奥さんは、政治好きの学生だった。
これまでに2回、結婚している。
次の奥さんは、セックスに対して、異常に神経質であった。
ほんの少しの物音でも、もうガマン出来ない。
アルビーは、前の奥さんについて、言いたい放題に語る。
まあ、本音で語られるところが、本作の(あるいは、本作の主人公の)魅力ではあるだろう。
アルビーがアニーと知り合ったのは、友人に誘われて行ったテニスがきっかけである。
アニーは、最初からアルビーが気に入ったようであった。
この男のどこにそんなに魅かれるのか、さっぱり分からんが。
最初は甘いロマンスだったのに、次の場面では、もう険悪になっている。
アニーはヤク中であった。
マリファナがないとセックス出来ない。
物語の進行と共に、二人の人となりが少しずつ明らかにされる。
アルビーは、ニューヨーク大学をカンニングで退学させられた。
一方、高卒のアニーは、社会人学生として大学に通い出した。
日本にも、もっと社会人学生の制度が定着すれば良いのに。
これから少子化で、大学はますます学生を確保するのが困難になるのだから。
話しが逸れてしまった。
アルビーは、精神科にもう15年も通っている。
まあ、彼の言動を見ていれば、それも納得だ。
アルビーの語りには、独特の皮肉っぽいユーモアがある。
彼は、ついにアニーと大ゲンカをする。
そして、二人は別れる。
アルビーは、友人に別の女性(シェリー・デュヴァル)を紹介してもらった。
でも、すぐにアニーとヨリを戻す。
夜中に、彼女が「大変なことが起こったから、すぐに来て!」とアルビーを呼び出したのだ。
急いで彼女の部屋へ行ってみると、何と「大きなゴキブリがいるの」という。
アルビーは、ゴキブリを叩き潰す。
オマール・エビは怖いのに、ゴキブリは平気なのか。
二人はヨリを戻したように見えても、また、すぐにケンカになる。
まあ、男と女なんて、そんなもんだろう。
我が家も…いや、止めておこう。
この後、クラブ歌手をしているアニーが、プロの歌手(ポール・サイモン)にほめられて有頂天になる辺りから、また雲行きが怪しくなって来る。
アルビーの「男の嫉妬」が始まったのだ。
『マクベス』みたいだな。
さあ、これから二人の恋の行方はどうなるのだろうか。
面白い映画である。
単なる恋愛映画ではない。
好きか嫌いかは別として、その大胆な語り口が、後の映画に多大な影響を与えた。
アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞受賞。