『ファミリー・プロット』

この週末は、ブルーレイで『ファミリー・プロット』を見た。

1976年のアメリカ映画。
監督はアルフレッド・ヒッチコック
彼の遺作である。
主演は、『イージー・ライダー』『華麗なるギャッツビー』『エアポート'75』のカレン・ブラック。
とは言っても、別に彼女が主役という訳でもない。
共演は、『華麗なるギャッツビー』のブルース・ダーン、『マラソンマン』のウィリアム・ディヴェイン、『キングコング(1976)』のエド・ローター、『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』のチャールズ・タイナー。
音楽は、『屋根の上のバイオリン弾き』『ポセイドン・アドベンチャー』『タワーリング・インフェルノ』『大地震』『ジョーズ』『未知との遭遇』『スーパーマン』の巨匠ジョン・ウィリアムズ
水晶玉に映し出された若い女性から始まる。
様々に声色を変えて語る。
彼女はブランチ(バーバラ・ハリス)という名の霊媒師。
こんなインチキなものを本気で信じているジュリア・レインバード(キャスリーン・ネスビット)という名の婆さん。
彼女は40年前、未婚の妹が生んだの男の子を、見知らぬ他人のところへやってしまった。
だが、妹が死に、血のつながった身内が、この甥だけになってしまった今、何とかして彼を捜し出し、自分の財産を譲ってやりたいと思った。
この婆さんは、大変家柄が良いようだ。
「霊の力で、どうか甥を捜して」と頼む婆さん。
御礼は1万ドル。
「誰にも知られないように」と。
婆さんは、すごくデカイ家に住んでいる。
この家の前に、タクシーが待っている。
移動するタクシー。
ヒッチコック映画にはいつものことだが、車の移動シーンは、スクリーン・プロセス丸出しである。
タクシーの運転手ジョージ(ブルース・ダ―ン)はブランチの恋人であった。
ジョージに「あの婆さんは、いいカモよ」と話すブランチ。
婆さんは、このことが気掛かりで夜も眠れず、睡眠薬を買いあさっているのであった。
しかし、ブランチは、後々明らかになるが、実は頭が弱い(それで、よく詐欺師が務まるが)。
彼女が霊媒の際に小出しにする情報のネタ元は、全てジョージが探偵のようにしてかき集めているのであった。
彼に結婚を迫るブランチ。
けれども、彼は結婚はしたくないのであった。
タクシーの目の前を横切る黒いコートの女。
フラン(カレン・ブラック)である。
相変わらず、前田敦子のような寄り目だ。
いや、前田敦子のファンに殺されたくないので、止めておこう。
それにしても、見事な場面転換である。
事務所に入って行って、ピストルを向けるフラン。
そして、大きなダイヤモンドを受け取る。
これは、人質との交換条件であった。
彼女は警察の用意したヘリに乗るが、一言もしゃべらない。
ヘリを誘導して、ゴルフ場に着陸。
フランがヘリを降りると、ゴルフ場の奥の茂みの陰に昏睡状態のオッサンが横たわっていた。
そばに立っている男アダムソン(ウィリアム・ディヴェイン)にダイヤを見せるフラン。
ダイヤは本物であった。
アダムソンと車で逃げるフラン。
相変わらず、車のバックは合成。
車は市内の隠れ家へ。
ここには、隠し部屋のようなものがある。
何だか展開が未だ読めないが。
アダムソンはダイヤ収集家であり、金持ちを誘拐しては、身代金として大粒のダイヤモンドを受け取るということを繰り返しているようだ。
場面変わって、昨夜解放された人質のオッサンが、若い刑事達から質問攻めにされている。
だが、彼はずっと気を失っていたので、全く記憶がない。
何を聞かれても手掛かりがない。
一方、ブランチのところに、レインバード家の運転士の娘が見付かったという情報が入る。
ジョージが弁護士のフリをして調査をする。
彼は、ジュリア・レインバードの甥を養子にしたという夫婦の消息を追って、田舎町にやって来た。
しかし、夫婦・子供とも既に死んだという。
墓地へ。
何だか、全体的にセリフが説明的で、冗長である。
大丈夫か。
墓地には、17歳で亡くなったエドワード・シューブリッジの墓が建てられていた。
墓掘りのオッサンに聞くと、不幸な火災で一家は全滅したという。
ところが、死んだ日は同じはずなのに、隣の兄弟の墓と墓石の色が違うのだ。
エドワードの墓石だけ新しいのである。
墓石屋に行って聞き出すと、やはりエドワードの墓だけ後から建てられたようだった。
彼は嫌われていたらしい。
両親を殺そうとして放火したが、彼の墓の中は空っぽ。
エドワードの死亡証明もないという。
ジョージは、エドワードの死亡証明書を申請したマロニー(エド・ローター)という、うらぶれたガソリン・スタンドの経営者に目を付けた。
ガソリン・スタンドを訪ねると、ハゲ頭のマロニーが出て来た。
エドワード・シューブリッジ? 知らんね」とシラを切る。
しかしながら、彼はジョージの車のナンバーを秘かにメモした。
マロニーは宝石商を訪ねる。
出て来たのは、何とアダムソンであった。
「エディ」と呼び掛けるマロニー。
この二人は、会ってはいけないのであった。
マロニーは、ジョージの車のナンバーを警察に聞いて、持ち主が分かった(その手があったか!)
素人なのに、オレの周辺を嗅ぎ回っている。
アダムソン曰く、「君を捜しているということは、オレを捜しているということだ。」
二人の話しによると、アダムソンが両親を閉じ込め、マロニーが火を点けたんだと。
つまり、アダムソンがエドワード・シュ―ブリッジなんだな。
ようやく、展開が見えて来た。
マロニーは「ヤツを殺す」と言う。
そこへ、刑事が訪ねて来る。
「誘拐事件について尋ねたい」と。
マロニーは、いつの間にかいなくなっていた。
夜、ブランチの家の前に車を停めて張り込むアダムソンとフラン。
家の中からブランチとジョージが出て来て、大ゲンカ。
見張られていることも知らずに、大きな声で色々言っちゃうから、全部相手にバレバレになったよ。
ジョージは、シューブリッジに洗礼を授けたという牧師を訪ねに教会へ。
さあ、これからどうなる?
この後も、ヒッチコックらしく、話しは二転三転する。
まあ、それでも、後半は面白くなる。
本作には、飲酒運転のシーンがあるので、現在では大っぴらには公開出来ないかも知れない。
で、この飲酒運転の暴走シーンが、カメラを車に積んで撮影し、車内のセットで演技する役者とつなぎ合わせて編集しただけなのだが、見ていて思い切り酔った。
気持ち悪くなった。
これだけ古典的な手法で気持ち悪くさせるのだから、やっぱり上手いんだな。
ヒッチコックの作品は、技術的には旧式でも、綿密なカメラ・ワークである。
ストーリー自体は、うまいこと出来ている。
伏線の張り方も見事だ。
そうして、最後にはオチまでついている。
これが遺作とは、残念だ。