『めまい』

この週末は、ブルーレイで『めまい』を見た。

1958年のアメリカ映画。
監督は、『裏窓』『泥棒成金』『北北西に進路を取れ』『サイコ』『鳥』『フレンジー』『ファミリー・プロット』の巨匠アルフレッド・ヒッチコック
こうして作品名を列挙すると、まるで映画史の教科書のようだ。
音楽は、『市民ケーン』『北北西に進路を取れ』『サイコ』『鳥』『華氏451』『タクシードライバー』の巨匠バーナード・ハーマン
主演は、『グレン・ミラー物語』『裏窓』『西部開拓史』のジェームズ・ステュアート。
本作はカラー、ヴィスタ・ヴィジョンである。
画質は良い。
不安げな音楽で始まる。
有名な渦巻きのタイトル・バック。
CGのない時代に、こんな映像を作るのは、さぞ大変だっただろう。
舞台はアメリカ・サンフランシスコ。
逃げる犯人、追う警官とスコティ刑事(ジェームズ・ステュアート)。
3人は建物の屋根伝いに走る。
隣の建物の少し高い斜めになった屋根に順に飛び移る。
と、スコティが足を滑らした。
何とか雨どいに捕まったが、今にも落ちそう。
ここで、ズーム・レンズを使った有名な「めまいショット」。
本作の中では何度も使われる。
同僚の警官がスコティを助けようとするが、彼は足を滑らせて転落死してしまう。
スコティは、この時のショックで高所恐怖症になり、警察を辞めてしまった。
彼のことを秘かに想うミッジという女性は身近にいたが、彼は独身だ。
高い所から下を見ると、めまいに襲われる。
彼は学生時代の友人エルスターを訪ねる。
エルスターは、妻のマデリン(キム・ノヴァク)が死者にとりつかれたような行動をするので、尾行して調べて欲しいとスコティに頼む。
その夜、レストランで食事をするエルスターとマデリンを遠巻きから見つめるスコティ。
マデリンは若くて、大変な美貌の持ち主だった。
次の日も張り込み。
スコティは車で、マデリンの車を追跡する。
彼女の車は細い路地へ。
車を降りて建物の中へ。
しかし、彼女は単に買い物をしただけだ。
更に付けると、今度は教会の墓へ。
彼女が参っていた墓は、1857年に亡くなったカルロッタ・バルデスという女性のものだった。
続いて、美術館へ。
マデリンがじっと見つめる絵に描かれている女性は、金色の髪を持ち、マデリンにそっくりであった。
それが、実はカルロッタの肖像画なのだ。
そして、美術館を出たマデリンは、古めかしいホテルに入る。
スコティはホテルの管理人に警察手帳を見せ(違法行為!)、マデリンのことを聞き出そうとする。
だが、管理人は「あの女性はカルロッタという名で、2週間前から泊まっているが、今日は来ていない」と言う。
「そんなはずはない、ここへ入るところを見たんだ!」
ところが、スコティが外へ出てみると、彼女の車は消えていた。
スコティはミッジと一緒に、歴史に詳しい本屋の主人を訪ねる。
主人は、店の中でタバコを吸っている(本屋なのに!)。
主人によると、かつてカルロッタは自分の子供を取り上げられて、自殺したのだという。
エルスターによると、カルロッタはマデリンの曾祖母に当たるのだとか。
そして、マデリンはカルロッタが身に着けていた宝石を持っている。
スコティは、再びマデリンの尾行を開始した。
彼女は金門橋のふもとで車を降りた。
そして、海に飛び込んだ。
スコティは、とっさに彼女の後を追い、救助する。
彼は彼女を自分の家へ連れて帰った。
彼女は正気を取り戻したが、何も覚えていない。
完全に、カルロッタの霊(?)にとりつかれていたようだ。
で、いつの間にか彼女は帰ってしまう。
次の回も、またスコティはマデリンを尾行することに。
と、彼女がスコティの家にやって来た。
スコティは、彼女と二人でドライブをする。
山へ、それから海へ。
彼女は、また荒れる海へ飛び込もうとする。
スコティがそれを助けた。
「私は錯乱していない。でも、死のうとしていない。助けて!」とマデリンが叫ぶ。
スコティが彼女を抱き締める。
来た。
要するに、スコティは友人の美貌の妻を好きになってしまったんだな。
で、お決まりのメロドラマ的展開へ。
しかし、この後、悲劇が訪れる。
面倒なので書いてしまうと、二人はマデリンが夢で見たスペイン風の村へ向かう。
マデリンはカルロッタの自殺した教会へと走って行く。
マデリンは教会の時計台に昇る。
スコティは追い掛けるが、高所恐怖症によるめまいのために追い付くことが出来ず、彼女は塔の頂上から飛び降りてしまう。
また出て来ますよ、「めまいショット」が。
マデリンの転落は事故と処理され、エルスターはヨーロッパへ行くとスコティに告げる。
後半は、マデリンにそっくりなジュディ(キム・ノヴァク二役)という女性が現われる。
スコティは、マデリンを自分が死なせてしまったと思っているので、この女性に執着する。
まあ、途中でタネ明かしがあるが。
僕は亡霊の存在など一切信じていない。
合理主義者のヒッチコックも、そんなものは信じていないだろうと思いながら見ていると、案の定トリックがある。
冷静に考えると、この作品のトリックには幾つもの矛盾点がある。
だが、それでも、ずっと観客を物語の展開に引っ張り込む力はスゴイ。
ただ、結末は何となく予想が付いてしまうんだけどね。