『我が家の楽園』

この週末は、ブルーレイで『我が家の楽園』を6年ぶりに再見した。

1938年のアメリカ映画。
監督は、『スミス都へ行く』のフランク・キャプラ
音楽は、『スミス都へ行く』『ジャイアンツ』『ナバロンの要塞』『ローマ帝国の滅亡』のディミトリ・ティオムキン
主演は、『スミス都へ行く』『めまい』『西部開拓史』のジェームズ・ステュアート。
共演は、『スミス都へ行く』のジーン・アーサー、『グランド・ホテル』のライオネル・バリモア。
本ブルーレイの画質は良い。
コロンビア映画
軽やかな音楽。
ウォール街にあるカービー社。
車から降りて来るカービー社長(エドワード・アーノルド)。
副社長は息子のトニー(ジェームズ・ステュアート)。
社長のカービーは野心家で、銃や大砲の生産を独占し、世界最大の軍需工場を作ることを目指していたが、トニーはビジネスのことはさっぱりであった。
で、ある土地を買い上げようとしていたのだが、どうしても土地の買収に応じない家が1軒だけあった。
この会社で事務員として働いているポピンズは、退屈な仕事の合間に、ウサギの人形のオモチャを作ったりしていた。
そこへ、「少しだけ働いて、後は楽しく」がモットーのヴァンダーホフ老人(ライオネル・バリモア)が訪れる。
彼こそが、立ち退きに応じない家の主人であった。
ポピンズは、生活の心配も多少あったが、好きなことを仕事にするために、ヴァンダーホフに付いて行く。
まあ、多くのサラリーマンは、生活のために、好きでもない仕事をしている。
僕は出版社で働いているので、比較的好きな仕事をしている方だと思うが、それでも、面倒な人間関係とか、イヤなことはある。
「生活」という意味では、弱小出版社なんて、今や泥舟以外の何物でもない。
で、ポピンズがヴァンダーホフの家に行ってみると、家族は皆、ヘンな人ばかりであった。
孫娘のエシー(アン・ミラー)は四六時中、下手クソなバレーを踊っている。
エシーの母親ペニーは、タイプライターで戯曲を書いている。
地下の作業場では花火を作っているので、しょっちゅう爆発が起こっていた。
エシーの夫エド・カーマイクルは、キャンディを売りながら、シロフォン(木琴の一種)を演奏している。
ポピンズが混乱してオロオロしていると、ヴァンダーホフは「アメリカ精神を忘れるな」という。
フランク・キャプラの映画は、基本的にリベラルなのだろう。
一方、カービー社の副社長室では、トニーが秘書のアリス(ジーン・アーサー)を口説いていた。
そこへ、厳格な母親がやって来る。
トニーが秘書と結婚しようとしていると知って、激怒する母。
さて、ヴァンダーホフは子供達に人気があった。
住民達が、地上げ屋の攻勢に困っていると相談すると、彼は「あくまで立ち退かない」と言い張る。
戦後の日本でも、こういう光景はあちこちに見られたのだろう。
結局は、保守勢力の圧力に屈服してしまうのだが。
本作には、猫や犬などの動物も登場する。
中でも演技派なのが、ヴァンダーホフ家のカラス。
で、ポピンズは作業場の仲間達と革命について語り合う。
彼は、革命の肩を持った。
僕も、今の日本では、コロナ不況打破のために革命を起こすべきだと信じている。
それはさておき、実はアリスはヴァンダーホフ家の孫娘で、家族にトニーを紹介しようとする。
家族は、社長の息子が家へ来ると聞いてビックリ!
ヴァンダーホフは、孫娘に「死んだ婆さんの思い出が詰まっているので、ここを立ち退くことは出来ない」と語る。
で、トニーが来ることになっている日、訪ねて来たのは国税庁の役人だった。
ヴァンダーホフは過去22年間、一度も所得税を払っていないのだ。
こんなことを今の日本でやったら、タダでは済むまいが。
僕は、以前勤めていた会社で、国税(いわゆるマルサ)のガサ入れに立ち会ったことがある。
証人として母印まで取られた。
日頃、「国家権力の横暴を許すな!」などと叫んでいる僕も、この時ばかりは小さくなった。
しかしながら、ヴァンダーホフは「国を信じていない」と役人にコンコンと解く。
強いな!
そこへ、トニー・カービーがやって来た。
ヴァンダーホフは、役人に「私は納得しなければ税金を納めん」と言っている。
そして、家族皆で彼を追い出すのであった。
そこへ、エシーのバレーの先生であるコレンコフ(ミッシャ・オウア)というヘンなロシア人が来る。
当時は、ロシア人に対して偏見が強かったのかも知れない。
社会主義国だからな。
今なら、別の意味でロシアは袋叩きだが。
本作のコレンコフは、明らかにおかしな人として描かれている。
で、アリスとトニーは出掛ける。
「面白い家族だね」とトニーはアリスに言う。
ヴァンダーホフも、かつて生活のためにやりたくない仕事を一生懸命にやっていたのだが、面白くないので、きっぱりと辞めた。
趣味は切手収集。
トニーとアリスは公園へ行く。
トニーは「あんな風に生きられたら最高だね」とヴァンダーホフのことを言う。
トニーは、学生時代に熱中した植物の研究を、仕事のために諦めたのであった。
そこへ子供達がやって来て、二人の目の前でダンスをする。
トニーとアリスも一緒に踊る。
国家権力の犬であるお巡りがやって来たので、急いで逃げる。
二人はレストランへ行く。
アリスの背中には「Nuts」という貼り紙が。
どうやら、先程の子供達が持っていたものらしい。
「nut」というのは、辞書を引くと、複数形で「testicle」の俗語らしいから、女の人が付けていると大変だ。
しかし、彼女は気付いていない。
レストランには、トニーの両親達がいた。
上流階級である彼らは、たかが秘書のアリスが気に食わない。
アリスは、公衆の面前で侮辱される。
で、この後、レストランでドタバタがある。
思わずアリスが叫んでしまったのをごまかすために、トニーが「ネズミがいた」と店員に告げる。
今なら、偽計業務妨害で逮捕されるところだな。
こんなことが色々あって、いよいよトニーの両親がアリスの家へ来ることになるのだが…。
実は、来る日を1日間違えて、このヘンな家族の真の姿を見てしまい、てんやわんやの大騒動。
その中で起きる大爆発がスゴイ。
当時は、共産主義者は逮捕されたんだな。
フランク・キャプラの映画は、かなり反権力志向が強い。
あと、金儲けは悪だと。
う~ん、気持ちは分かるが…。
ラストはご都合だが、これもお約束。
確かに、日頃資本家に抑圧されている労働者階級の溜飲は下がるが、世の中、そんなに単純ではないだろう。
などと思ってしまうのは、僕が俗世間にまみれてしまったからか。
アカデミー賞作品賞、監督賞受賞。

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