『妖婆 死棺の呪い』

お盆休みのブルーレイ鑑賞第二弾は、『妖婆 死棺の呪い』。

妖婆 死棺の呪い Blu-ray

妖婆 死棺の呪い Blu-ray

1967年のソ連映画
総監督はアレクサンドル・プトゥシコ
監督はコンスタンチン・エルショフとゲオルギー・クロパチョフ。
原作はニコライ・ゴーゴリ
主演はレオニード・クラヴレフ。
共演は、ナターリヤ・ワルレイ、アレクセイ・グラズィリン、ニコライ・クトゥーゾフ。
カラー、スタンダード。
不安げな音楽が流れる。
ヴィイとは人々の空想の産物である。民間に伝わる伝説だ。私は聞いたとおりに語る。脚色はしない。ゴーゴリ」という字幕。
舞台は中世ロシア。
神学校の庭にたくさんの学生達がいる。
鐘が鳴る。
校長が校舎から出て来る。
これから休暇が始まり、学生達は帰省するのだが、「帰省の途中、悪さをしないように」と釘を刺す。
学生達は、ニヤニヤしながら聞いている。
校長の話しが終わるや、学生達は一目散に散って行った。
案の定、途中でガチョウを盗んだり、若い娘を引っ掛けたり、好き放題の学生達。
こんなのが神学生とは。
哲学生のホマー・ブルート(レオニード・クラヴレフ)は、仲間と3人で故郷へ向かっていたが、道に迷ってしまう。
「野宿するしかないか」と思っていたところ、村を発見。
その家へたどり着き、中から出て来た老婆(ニコライ・クトゥーゾフ)に「家に泊めてくれ」「何か食べさせてくれ」と頼む。
しかし、老婆は「今日は何もない。暖炉も焚いていない」と答える。
とは言っても、ロシアなので、野宿なんかしたら死んでしまう。
無理矢理頼み込んで泊めてもらうが、3人は小屋や納屋にバラバラに泊められる。
ホマーは納屋に案内された。
ブタや牛やニワトリと同居である。
そこへ老婆が入って来て、ホマーに迫る。
そして、ホマーに馬乗りになる。
老婆はホウキを持っている。
やがて、魔女と共にホマーは浮かび上がる。
「こいつは魔女だ!」
空を飛びながら大暴れし、ようやく地面に着いた時、ホマーは老婆をボコボコにする。
すると、老婆の姿が美少女(ナターリヤ・ワルレイ)に変わった。
怖くなったホマーはその場から逃げ出す。
川を渡り、神学校へ戻ると、校長が呼んでいる。
「50キロ先の村の令嬢がメッタ打ちにされて瀕死の状態だ。お前に祈って欲しいと願っているから、行け」と命じられる。
そして、「途中で逃げ出すな」と念を押される。
何だか分からないが、ものすごい圧力を感じる。
ホマーは何人かの村人と一緒に馬車で送られる。
道中、何を聞いても答えない村人。
村人達が眠っているスキに逃げ出そうと試みるも、それは狸寝入りで、ギロリと睨まれて、止められる。
村人達は、ホマーのことを「哲学者先生」と呼ぶ。
如何に一般庶民にとって、神学生というのが将来の約束されたエリートだったかということだろう。
日本で言えば、旧制高校生みたいな感じだろうか。
伊豆の踊子』にそんな場面があったような。
馬車は酒場の前で停まる。
「さあ、着いたぞ。」
ホマーと村人達はウォッカで乾杯し、ベロンベロンに酔っ払う。
ウォッカは強いからな。
余談だが、缶チューハイは、タカラ缶チューハイ以外は皆、焼酎ではなくウォッカを使っている。
あれは何故なんだろう。
チューハイって、「焼酎ハイボール」の略ではないのか。
タカラ缶チューハイは気分良く酔えるのだが、他の(ウォッカが原料の)缶チューハイは必ず悪酔いする。
先日、安房鴨川に行った時、駅前のイオンにはタカラ缶チューハイが売っていなかったので、仕方なくストロング・ゼロのロング缶を買った。
3本飲んだら、次の日の朝、胃がムカムカして大変だった。
まあ、あんな安い酒だから、ウォッカと言っても、どんな程度のものか分かったもんじゃないし。
他にも、怪しい甘味料とか、何が入っているか分からん。
やっぱり、タカラ缶チューハイじゃなきゃダメだな。
ついでに、ビールはそういう心配はないが、発泡酒とか第三のビールは飲まないようにしている。
日本酒も、安いのは糖分や酸味料を混ぜているが、そういうのも飲まない。
ああ、話しが逸れた。
ロシア人はみんなウォッカだ。
で、酔っ払ったホマーは逃げようとするが、またも、村人がバルタン星人のように分身の術を使う幻覚を見たりして、逃げられない。
翌朝、村を目前にして、「お嬢様が亡くなった」という知らせが入る。
この村人達の不穏な様子を見ていると、何か知っているようではある。
が、それが何かは明かされない。
一人の村人が「ホマーを帰してやるか」と言う。
でも、逃げられない。
結局、ホマーは「この村を甘く見ないほうがいいぜ」と告げられてしまう。
亡くなった娘の父親は、遺体を前にして、「お前をこんな姿にしたのはどこのどいつだ」と嘆いている。
そこへホマーが連れられて来る。
父親とはもちろん、面識がない。
ホマーが娘の遺体を見ると、何と件の美少女ではないか。
「娘とはどういう関係だ?」
「会ったことすらありません!」
「なぜ娘はお前に祈祷を頼んだ?」
この娘は、死ぬ間際にホマーの名を挙げ、「彼は事情を知っている」と言ったらしい。
父親は、「今日から三日三晩祈ってくれ」と。
ホマーが「自分は学生なのでできない」と答えると、「いやとは言わせん」と高圧的な態度。
村人は皆が声を上げて泣いているが、どこか、金正恩が亡くなった時の北朝鮮国民のようにわざとらしい。
棺を出して、遺体安置所へ。
夕食はブタの丸焼き。
その席で、ホマーは、ミキータという若者が、この娘に誘惑されて骨抜きにされた話しを聞かされる。
実際、美少女ではある。
そして、再び遺体安置所へ。
村人達は口々にホマーに対して「気をつけて」とか「達者でな」とか言う。
でも、外からカギを掛けろという命令だと。
ホマーは一人で娘の遺体と向き合う。
一瞬、娘が血の涙を流す。
ろうそくの灯が消える。
不真面目なホマーは、祈りの途中で嗅ぎタバコを。
すると、死んだはずの娘が起き上がった。
さあ、これからどうなる?
西洋に共通しているのだろうが、この娘も、ハムレットの亡霊のように、雄鶏が鳴くと元の場所へ戻る。
本作は、コミカルな部分もあるが、クライマックスは妖怪が大量に出て来て、なかなかにコワイ。
ブルーレイのジャケットの裏には、松任谷由実のコメントが載っている。
「幼稚とも思える特殊撮影や、レトロなパントマイムが、
かえってロシアという国の持つ、
神秘的な闇の深さを運んで来る。
私にとってはどんなに最先端のホラーより
ずっとずっと怖い映画。
今観ても、本当に何かに取り憑かれそうになるのです。」
67年と言えば、『ローズマリーの赤ちゃん』の前年だが、作品の時代背景のせいもあって、かなりクラシックな趣。
昨今のホラーは、CGがウソ臭過ぎて、話しにならない。

Вий (1967) трейлер