『エクソシスト』

この週末は、ブルーレイで『エクソシスト』を見た。

エクソシスト ディレクターズカット版 & オリジナル劇場版(2枚組) [Blu-ray]

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今までに何回見たかは分からない。
1973年のアメリカ映画。
監督はウィリアム・フリードキン(『フレンチ・コネクション』)。
言わずと知れたオカルト映画の古典である。
子供の頃、テレビの洋画劇場か何かで見た時には、単に「コワイ映画」くらいにしか思わなかったが、今改めて見ると、大変よく計算して作られた作品だということが分かる。
12歳の少女・リーガンに取り付いた悪魔と、その悪魔と対決する神父(エクソシスト=悪魔祓い師)の物語だ。
実話を元にしているらしいが、僕はこういった超常現象のようなものは一切信じない。
元来が荒唐無稽な話なので、よほどうまく作らないと、とても見られないような代物になってしまう。
本作は、登場人物の性格が非常にしっかりと描かれており、また、物語の伏線の張り方も巧みである。
持病を持っているメリン神父。
娘の態度が日に日に変わってゆくことで、次第にヒステリーに陥ってゆく母親。
酒癖の悪い映画監督のバーク。
母親を精神病院に入れ、死に目に会えなかったことがトラウマになっているカラス神父(彼は精神医学の専門家でもある)。
物語の展開に絶妙な間を持たせるキンダーマン警部など。
基本的には、本当に悪魔に取り付かれたということになってはいるが、これらリアルな登場人物たちのおかげで、超常現象を信じない観客にも、鑑賞に堪えるような作品にすることに成功した。
さらに、大スターを使わず、渋い性格俳優を揃えたことも、真実味を増すために役立ったと言える。
独特な音楽。
霧の中でメリル神父がリーガンの家を訪れる際の幻想的な光景。
特撮も、昨今のCGから見れば何ということもないのだろうが、むやみに多用せずとも、効果的に見せている。
変貌していくリーガンの容貌はメイクの力だろう。
彼女の首がグルリと回転したり、緑色の反吐を吐き出すショットなど、当時としては衝撃的だったはずだ。
細かな状況を説明しなくとも、映像を見ているだけで分からせるようにしているのは、『フレンチ・コネクション』でも見せた、ウィリアム・フリードキンの手腕が冴えるところだ。
こうして本作は、単なるオカルト映画ではなく、映画史上に残る格調高い傑作となった。
そして、その後、本作を真似たオカルト映画が粗製乱造されるようになる。
が、本作を超えるような作品はついぞ生まれなかった。
余談だが、原作者はシェイクスピアがお好きなようだ。
悪魔に取り付かれる娘の名前(リーガン)は、おそらく『リア王』から拝借しているのだろうし、キンダーマンがカラスに観に行こうと誘う映画は『オセロ』だった。
アカデミー賞脚色賞、音響賞受賞。