『ビデオドローム』

今週は、『ビデオドローム』をブルーレイで見た。

ビデオドローム [Blu-ray]

ビデオドローム [Blu-ray]

1982年のカナダ映画
監督はデイヴィッド・クローネンバーグ
僕がこの映画を初めて見たのは、高校時代、テレビの深夜放映でだったと思う。
本作の存在は「SFX(SEXではない)の全て」のような本で知っており、いつか見たいと思っていたら、たまたまテレビで放映したのだ。
クローネンバーグは、既にカルト的な映画監督として伝説になっていた。
彼の『スキャナーズ』(頭が吹き飛ぶ悪趣味な映画)は、後にビデオで見た。
ビデオドローム』を初めて見た時は、大変な衝撃を受けた。
もちろん、まだCGなんてものはない時代に、ぐにゃぐにゃと脈打つように動くビデオテープやテレビ。
それから、裂けた腹にカセットを突っ込む描写。
こんな映像を、どうやって撮ったのだろうと思った。
今回、おそらく二十数年ぶりにこの映像を見たが、今見ても、このイマジネーションあふれる斬新な映像は古びていない。
むしろ、アナログで撮っている分だけ、昨今のCGのようなウソ臭さがない。
地に足が着いた映像なのだ。
ただ、内容についてはどうだろう。
本作の簡単な内容。
ポルノや暴力作品ばかりを流しているマイナーTV局の社長が、放送用のもっと過激な映像を探していると、たまたま「ビデオドローム」という出所不明の映像を手に入れる。
拷問や殺人などを延々と垂れ流している映像に魅かれて探し求める内、現実との区別が次第に付かなくなって来る、というようなストーリー。
彼が見る幻覚が、かなり鮮烈に映像化されていて面白いのだが。
ストーリーは、現実と幻覚を交錯させて行くので、かなり分かりにくい。
と言うより、意図的に分からなく作っているのだと思う。
テーマは「悪質なテレビ番組ばかり見ているとバカになりますよ」というような単純なものだと思うが。
それを表現するのに、こういう作品にするのが果たしてふさわしかったのか。
クローネンバーグは、単に奇っ怪な、おぞましい映像を見せたかっただけのような気もする。
ただ、現実の世の中は、あふれる低俗なテレビ番組で、実際にみんなバカになってしまったので、笑えないが。
過激な映像の氾濫は、30年前の比ではないだろう。
ビデオテープなんて、最早過去の遺物だし。
ちなみに、本作には、番組を売り込みに来る日本人が登場するが、あちらの映画の常で、どう見ても日本人に見えない。
売りに来る番組のタイトルも「サムライ何とか」って。
日本のイメージは、どうしてこうもステレオタイプなんだろう。