『荒野の七人』

この週末は、ブルーレイで『荒野の七人』を見た。

1960年のアメリカ映画。
監督はジョン・スタージェス
黒澤明監督『七人の侍』のリメイクである。
舞台を西部開拓時代のメキシコに移しているが、大筋は『七人の侍』をなぞっている。
上映時間が約2時間と、3時間の『七人の侍』よりかなり短いので、展開は速い。
これは、もちろん『七人の侍』の脚本が極めて良く出来ていたからというのもあるだろうが、登場人物のキャラクターがはっきりと描き分けられている。
冷静沈着なリーダー、銃の達人、ナイフの達人、農民出身者、一攫千金を狙うヤツなど。
メキシコの村の乾いた雰囲気や、盛り場の雰囲気など、侍の物語を本当に見事に西部劇に仕立て上げている。
主演はユル・ブリンナー
僕の中では、彼は『ウエストワールド』のアンドロイドなのだが。
十戒』にも出ていたかな。
彼の演じるクリスは、志村喬の勘兵衛よりは若くて、人情はあまりなさそうだが。
冷静沈着なリーダーぶりは素晴らしい。
彼に次ぐポジション、ヴィン役は我らがスティーブ・マックイーン
我が家にはマックイーン出演作のブルーレイが何枚もある。
当たり前だが、まだ若い。
マックイーンは本作でスターになったというのだからスゴイ。
彼の馬に飛び乗るテクニックには圧倒される。
それから、オライリー役のチャールズ・ブロンソン
彼のイメージは、やっぱり「う〜ん、マンダム」だろう。
このCMが放映されていた時、僕は小学生だったが、誇張ではなくクラスみんながモノマネをするほどの認知度だった。
幸せな時代だ。
彼は、なぜか子供たちに慕われる(そのために命を落とすが…ネタバレ失礼)。
こういう恐ろしく男臭いメンツの中で、農民出身のチコだけは、ちょっとナヨナヨしていて頼りない。
道化っぷりを発揮しながらも、男らしさを失わなかった三船敏郎の菊千代とは大分印象が異なる。
やはり世界の三船は偉大だ。
チコと農民の娘とのロマンスもちゃんと用意されている。
七人の侍』では、先日亡くなられた津島恵子さんが演じていた。
ご冥福をお祈りします。
高堂国典演じる村の長老(彼は『ゴジラ』でも長老役だった)や、土屋嘉男演じる村の若者に相当する役もちゃんとあった。
野武士ならぬ盗賊に何度も村が襲われて、困り切っている農民たちの描写から始まる冒頭からして、もう『七人の侍』ワールド全開だ。
「これは、まんまリメイクだな」と思いながら見ていると、終盤でいきなり展開が変わって面食らう。
あと、盗賊側の人間(特に首領)のキャラクターがちゃんと描かれているところが原作と違うかな。
七人の侍』は農民の土着的な面をうまく出していたし、最後の雨の中の戦いの迫力はモノクロならでは。
まあ、『七人の侍』は日本映画史上の最高傑作だと思うが、それを西部劇としてリメイクした本作も非常に完成度は高い。
続編が3本も作られたのも頷ける(第3作はジョージ・ケネディが主演らしい)。
エルマー・バーンスタインの音楽も、本当に荒野という感じがする。
何だか、「マルボロ」のコマーシャルみたいだが。
それにしても、僕が子供の頃は、父が好んで見ている西部劇のどこが面白いのか、さっぱり分からなかったのだが。
僕も年を取ったのだろうか。
最近、「日本よ、これが映画だ」なんて超上から目線のキャッチを掲げた映画があるが。
そんなもの映画じゃない(見ていないし、見る気もないが、聞くところによると、これも『七人の侍』をパクっているとか)。
『荒野の七人』のようなのが、本当の映画だ。