『スティング』

この週末は、ブルーレイで『スティング』を見た。

スティング [Blu-ray]

スティング [Blu-ray]

1973年のアメリカ映画。
本作を見るのは2回目。
監督はジョージ・ロイ・ヒル
主演はポール・ニューマンロバート・レッドフォード
明日に向かって撃て!』以来の、二大スター夢の競演である。
明日に向かって撃て!』の時は、ロバート・レッドフォードはまだ駆け出しの役者だったが、『スティング』の頃には、押しも押されもせぬ大スターになっていた。
本作は、しかし『明日に向かって撃て!』とは全く違う趣の作品に仕上がっている。
舞台となるのは1936年のアメリカ。
この時代は雰囲気がいい。
映画は、当時の情景を忠実に再現している(もちろん、当時を実際に見たことはないが)。
クラシックな車とか、古びたレンガ造りの建物とか、仕立てのいい素晴らしいスーツとか。
こういうものがきちんと描かれていると、作品の世界に入り込みやすい。
前回見た時は、酔っ払っていたので、イマイチ話の中身がつかめなかったが、素面で見るとストーリーは極めて単純明快。
ただ、主人公が詐欺師なので、観客も一緒に騙してしまい、種明かしまではハラハラさせられる。
全てが明らかになった時の緊張感のほどける感じがいい。
全体としては、深刻な話ではなく、エスプリの利いたコメディである。
最初の、若い詐欺師フッカー(ロバート・レッドフォード)が賭博の売上金をギャングの手下からまんまと頂戴するところからして引き込まれる。
被害者だと思った黒人男性が、何とフッカーとグルだった。
こういうのは文章で書いても、なかなか面白さが伝わらないと思うので、興味のある人は自分で見て下さい。
フッカーはこの黒人男性ルーサーと二人三脚で詐欺を働いて来たが、ルーサーは今日限りこの仕事から足を洗って堅気になるという。
ルーサーはフッカーに「これからはゴンドーフ(ポール・ニューマン)という一流の詐欺師と仕事をしろ」と言う。
ところが、先の賭博の売上金を奪われた大物ギャング、ロネガン(ロバート・ショウ)の一味が黙っていなかった。
ルーサーは襲撃されて殺され、フッカーも命を狙われる羽目になる。
フッカーは、親同然のルーサーを殺したロネガンが許せず、固く復讐を誓う。
しかし、そこは詐欺師。
命を奪うのではなく、詐欺でロネガンの全財産を奪おうとする。
フッカーはゴンドーフの元を訪ねる。
ゴンドーフの登場シーンが面白い。
大きな氷をアイスピックで砕いて、何をするのかと思いきや、顔をその中に突っ込む。
で、ここからフッカーとゴンドーフが組んで、観客も騙しながら数々の詐欺の手口を披露する。
これが見事だ。
本来、悪人であるはずの詐欺師たちに、どんどん感情移入してしまう。
まあ、上手いこと行き過ぎな気もするが、現実に騙される人はいるのだから。
ロネガンをハメるための二人の手練手管は正に見どころ。
手始めは、走る列車の中での秘密のポーカー。
ゴンドーフがフッカーの前でカードさばきを披露するも、失敗するところなどはわざとズッコケ。
酒瓶に水を入れて、酔っ払ったフリ。
ゴンドーフは、どんなイカサマなのか、ロネガン相手に面白いように勝ち進む。
さらに、今度は300人もの詐欺師仲間を集めて、建物を借り、偽の場外馬券場まで作ってしまう。
客も、店員も、競馬の実況中継をする人も、みんなグルなのだ。
詐欺師たちは、まるで劇団の役者のように見事な芝居をする。
おそらく、この時代は競馬の実況中継がリアルタイムでは行われず、電信で送られて来た結果を読み上げる方式だったから、若干のタイムラグがある。
だから、電話で結果を聞いてすぐに勝ち馬の馬券を買えば、まんまと配当金を手にすることが出来たようだ。
百戦錬磨の大物ギャングが、そう簡単に引っ掛かるかねえ、とは思うが。
コメディですから。
主役が悪人たちなので、当然、刑事やFBIも絡んで来る。
これがねえ…。
それに、殺し屋も。
とにかく、観客は最後まではぐらかされ続ける。
ラストのどんでん返しはスゴイよ。
でも、見終わった後は爽快で、後味の悪くない映画である。
そう言えば、ギャング役のロバート・ショウは『ジョーズ』でロイ・シャイダーの相手役だったな。
あと、刑事役のチャールズ・ダーニングは『狼たちの午後』にも出ていた。
『スティング』は、この年のアカデミー賞を7部門(作品賞、監督賞、オリジナル脚本賞、編曲賞、美術監督賞、編集賞、衣装デザイン賞)で受賞。
主題歌の『ジ・エンターテイナー』は、聴けば誰でも分かる有名な曲。
そして、映画自体も一流のエンターテインメントだ。