『オルカ』

この週末は、ブルーレイで『オルカ』を見た。

オルカ [Blu-ray]

オルカ [Blu-ray]

  • 発売日: 2017/07/28
  • メディア: Blu-ray
1977年のアメリカ・イタリア合作映画。
監督は、『2300年未来への旅』のマイケル・アンダーソン
製作総指揮は、『天地創造』『バーバレラ』『バラキ』『セルピコ』『キングコング(1976)』の大プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティス
脚本は、『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン』『夕陽のギャングたち』のルチアーノ・ヴィンツェンツォーニ。
音楽は、『夕陽のガンマン』『アルジェの戦い』『続・夕陽のガンマン』『ウエスタン』『シシリアン』『夕陽のギャングたち』『エクソシスト2』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』『アンタッチャブル』『ハムレット(1990)』の巨匠エンニオ・モリコーネ
撮影は、『007 ドクター・ノオ』『007 ロシアより愛をこめて』『007 ゴールドフィンガー』『007 サンダーボール作戦』『007 ダイヤモンドは永遠に』『タイタンの戦い』のテッド・ムーア。
編集は、『クォ・ヴァディス』『ベン・ハー(1959)』『ピンクの豹』のラルフ・E・ウィンタース、『ガンジー』のジョン・ブルーム。
主演は、『ナバロンの要塞』『天地創造』『カサンドラ・クロス』のリチャード・ハリスと、『評決』のシャーロット・ランプリング
共演は、『カッコーの巣の上で』のウィル・サンプソン、『ミーン・ストリート』のロバート・キャラダイン、『博士の異常な愛情』『殺しの分け前/ポイント・ブランク』のキーナン・ウィン。
70年代は『ジョーズ』の大ヒットで、動物パニック映画が量産された。
タイトルは知っていたのだが、見たのは初めて。
ディノ・デ・ラウレンティスが本家に負けじと威信を賭けて作ったことが想像される。
音楽はエンニオ・モリコーネだし、セリフは英語だが、イタリア色が強い。
そして、スターも揃えた。
シャチの復讐の話しなので、能天気な『ジョーズ』よりも、かなり重い。
原始的なサメと違って、シャチは哺乳類で芸を仕込めるほど賢いので、本作ではハリボテではなく、本物のシャチが演技をしている。
これが、『ジョーズ』にはないリアリティを与えてくれている。
撮影は大変だっただろう。
僕も昨年、鴨川シーワールドでシャチのショーを見たが、あれが暴れるんだから恐ろしいわな。
カラー、シネスコ・サイズ。
シャチの鳴き声。
海で跳ねる2頭のシャチ。
哀愁の漂う音楽。
舞台はカナダのニューファンドランド
シャチの鳴き声のテープを流しながら、海に潜るダイバー。
そこへ、ホオジロザメが現れる。
まんま『ジョーズ』だな。
その頃、漁船の船長ノーラン(リチャード・ハリス)は、「ヒラメ一匹見えない」と嘆いていたが、先のサメを発見する。
おびき寄せるために海に生肉を投げ入れ、麻酔銃で狙うが、人が潜っているのを見て断念。
漁船は、漂っていたゴムボートと衝突。
ボートには海洋学者のレイチェル(シャーロット・ランプリング)が乗っていた。
ダイバーのケン(ロバート・キャラダイン)は彼女の助手である。
ノーランは、サメを捕まえて、水族館に大金で売るのが狙いであった。
そこへ、巨大なシャチが現れ、サメを倒す。
要するに、『ジョーズ』よりも強いと言いたいんだな。
何と明解な。
場所は変わって、レイチェルが集まった人々にシャチの映画を見せながら生態を解説する。
「地球上で最も強力な生物である」と。
人間が優しく育てれば芸も覚えるが、うまく慣れないと暴れる。
親子愛が強い。
歯が48本もある。
脳が優れている。
声とエコーで意思を伝達する。
ここでシャチの生態をしっかり解説しておくことが、観客に対して、本編の伏線を示している。
ノーランは、シャチを捕まえて水族館に売ることしか考えていない。
この男は学もなく、粗野な男だ。
カサンドラ・クロス』ではインテリを演じていたのだから、役者はスゴイ。
レイチェルは、「シャチは知的な生き物だから、捕まえるのは考え直して」と訴えるが、ノーランには聞く耳がない。
「美人な学者を見返したい」などと言っている。
シャチは一夫一婦制らしい。
これも伏線。
本作の脚本は、非常によく練られていると思う。
海に出たノーラン。
シャチを発見する。
オスを捕まえるつもりが、間違ってメスに麻酔銃を撃ってしまった。
出血。
シャチは船のスクリューに巻き込まれて、更に傷だらけになる。
自殺を図っているのだという。
ノーランが引き上げると、シャチの子供が腹から落ちる。
死産だ。
ノーランは哀れに思いながら、死骸を海に捨てる。
クーンと悲しげな声で鳴くオス。
復讐の目でノーランを睨み付ける。
その夜、ノーランの船に先のシャチが体当たりして来た。
嘆くノーラン。
船に引き上げられたメスが未だ生きていて、オスを呼んでいたのだ。
ノーランは、絡まったロープを切って、メスを海に捨てる。
老船員のノバック(キーナン・ウィン)が見張りをしていた時に、シャチに襲われて死ぬ。
ノーランを睨むシャチ。
ロープが巻き付き、血を流しているメスのシャチを押して運ぶオス。
メスは結局、死んで浜辺に打ち上げられた。
ノーランは、それを見てショックを受ける。
レイチェルは、シャチの亡骸の傍で聖書を読んでいる。
ノーランのことを叱り付ける。
そこへ現れた先住民のウミラク(ウィル・サンプソン)が、「昔、シャチを殺そうとした父親を、逆にシャチに殺された」と語る。
「シャチは人間のことを覚えている。ヤツの縄張りから去るべきだ」と。
余談だが、ウィル・サンプソンは『カッコーの巣の上で』のジャック・ニコルソンの相棒役が非常に印象的だったな。
教会で身寄りのないノヴァクの葬式が行われた。
ノーランの訛りから、神父は彼がアイルランド人だということが分かった。
カナダに来て16年、海のことはノヴァクが教えてくれた。
ノーランは神父に、「動物への罪も罪ですか?」と尋ねる。
神父は、「草葉に対する罪も罪。罪は自分自身に対して犯すもの」と答える。
港に行ったノーランの前に、船員組合の責任者が現われ、「シャチを捕まえるつもりか?」と問い質す。
「オルカがいると魚が逃げる」という迷信があるのだ。
そこへ、例のシャチがやって来て、2隻のボートに体当たりし、底に穴を開けて沈めた。
その夜、船員組合の責任者はノーランに「港から出て行け」と告げる。
「お前のシャチのせいだ。ヤツは北の岬でじっと待っている。」
レイチェルは「行っちゃダメよ」と警告する。
「行かないさ」とうそぶきながら、海を見つめるノーラン。
オルカがいる。
海洋団体などに頼んでも、シャチには手を出せないという。
ノーランは最早、村八分状態であった。
ウミラクは「みんなあんたの話しをしている。シャチを撃てないあんたに失望した」と。
要するに、シャチを退治しろというのだな。
シャチは次の夜も港に来た。
自分そっくりの人形を作ったノーランに、レイチェルは「案山子じゃ逃げないわ」と言う。
「シャチはあなたと海で闘いたいんだわ。」
「断る。」
ノーランには、シャチの気持ちが痛いほど分かるのであった。
何故なら、彼も昔、妊娠中の妻を、飲酒運転の車が突っ込んだ事故で亡くしているからである。
しかし、その晩、シャチは大暴れした。
小屋に体当たりしてランプの灯をガソリンに引火させ、村中を吹き飛ばした(ここはミニチュア)。
さすがのノーランも、ついにシャチとの対決を決意する。
さあ、これからどうなる?
ここからは、『ジョーズ』と同じような展開に向かうのだが。
何にも考えていないサメに対して、シャチは頭脳戦を仕掛けて来るので、かなり手強い。
しかも、目的が復讐なので、執拗だ。
結末も重いよ。
余談だが、リチャード・ハリスシャーロット・ランプリングがベッドの上でタバコを吸うシーンがある。
今では考えられないな。
1978年洋画興行収入9位(1位は『スターウォーズ』。邦画の1位は『野性の証明』)。

Orca (1977) - Official Trailer (HD)