『西部開拓史』

この週末は、ブルーレイで『西部開拓史』を見た。

西部開拓史 [Blu-ray]

西部開拓史 [Blu-ray]

1962年のアメリカ映画。
監督は、ヘンリー・ハサウェイジョン・フォードジョージ・マーシャル
出演は、『パットン大戦車軍団』のカール・マルデン、『市民ケーン』『偉大なるアンバーソン家の人々』『ジェーン・エア』のアグネス・ムーアヘッド、『大いなる西部』のキャロル・ベイカー、『地上最大のショウ』『グレン・ミラー物語』『裏窓』『知りすぎていた男』『めまい』のジェームズ・ステュアート、『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン』のリー・ヴァン・クリーフ、『大いなる西部』『ナヴァロンの要塞』『アラバマ物語』『オーメン』のグレゴリー・ペック、『裏窓』のセルマ・リッター、『史上最大の作戦』のジョン・ウェイン、『グレン・ミラー物語』のハリー・モーガン、『ウエスト・サイド物語』のラス・タンブリン、『オリエント急行殺人事件』のリチャード・ウィドマーク、『間違えられた男』『史上最大の作戦』のヘンリー・フォンダ、『エクソシスト』のリー・J・コッブ、『荒野の七人』『続・夕陽のガンマン』『ザ・ディープ』のイーライ・ウォラック、『暴力脱獄』『戦略大作戦』『エイリアン』のハリー・ディーン・スタントン、更に、ナレーターに『老人と海』のスペンサー・トレイシーと、豪華スター多数。
音楽は、『大空港』のアルフレッド・ニューマン
本作は、シネラマで製作されている。
シネラマというのは、ワイド・スクリーンの究極の形で、巨大な湾曲したスクリーンに、3台の映写機を使って、3台のカメラで撮った横長の映像を同時に映し出す方式である。
専用の上映設備が必要なので、かつては、日本にもシネラマ常設館というのがあった。
僕は、その内の一つ、大阪のOS劇場で『ベン・ハー』のリバイバルを観たことがある。
とにかくデカイ画面で、予告編等は(普通の35ミリ・フィルムなので)スクリーンの真ん中の部分にしか映写されない。
そして、本編になると、大スクリーンいっぱいの迫力の映像が繰り広げられる。
初期のシネラマは、3台のカメラと映写機が必要なので、なかなか普及しなかった。
後に、70ミリ・フィルムを使って、1本のフィルムだけで上映出来るようになるが、それでも設備が複雑なのには変わりなく、カネも掛かるので、次第に製作されなくなった。
最後のシネラマ作品は『2001年宇宙の旅』だと言われている。
僕は、残念ながら『2001年』は、35ミリのシネマ・スコープ版でしか観たことがない。
あの光の洪水を巨大スクリーンで観たら、どんな気分になるだろうか。
初期のシネラマ作品は、3本のフィルムを使っているので、画面に2ヵ所のつなぎ目がある。
ブルーレイ版では、コンピュータ処理で、つなぎ目はうまく消されているが、3本のレンズで撮影した映像をテレビで見ると、目の焦点がうまく合わなくて、見辛いことこの上ない。
映画館で観れば、大き過ぎて一度に画面全体を見渡すことは出来ないので、問題はないのだろうが。
それにしても、昨今のシネコン等は、小さなスクリーンの小屋を幾つも並べて、ちまちまと上映しているが、家庭用のテレビがこれだけ大型化しているのだから、もっと大きなスクリーンにしないと意味がないだろう。
是非、シネラマを復活させて欲しいものである(まあ、それに見合うだけの作品があるかという問題もあるが)。
さて、2時間40分の映画だが、ちゃんと「序曲」から始まり、休憩もある。
最初に、西部を「原住民から勝ち取った」とナレーションで言っている時点で、どういう視点から作られた作品かが分かる。
今なら、絶対に認められないだろう。
本作では、シネラマの効果を出すために、超広角レンズを使って撮影されている。
全体は5部に分かれており、西部開拓時代の1839〜1889年の50年間を描いている。
一応、登場人物もつながっているが、大したストーリーはない。
全体に群像劇風である。
多数の有名スターを出演させているが、あまり活かされているとは思えない。
第1部は、東部から西部に移住した家族の苦労話し。
みんなで「草原の家」を合唱する。
この曲は、小学校の校内放送でよくかかっていたような気がする。
第1部のメインは、イカダでの川下り。
急流を下る様は、映画館で観ればスゴイ迫力だろう。
撮影は、本当に命懸けだったようである。
本作は、シネラマを劇映画に使った最初期の作品なので、あまり内容について完成度を求めてはいけないのかも知れない。
全体として、アトラクション風である。
まあ、スゴイ映像ではあるが。
間違いなく、カネは掛かっている。
東部から西部へ移住して来た人達が大変な困難を乗り越えたというのは、十分伝わる。
数々の裏切り、盗み、殺人等も描かれる。
第2部は、ゴールド・ラッシュ。
見せ場は、疾走する幌馬車隊の映像。
これに、インディアン軍団が襲い掛かる。
かなりのスピード感で、『ベン・ハー』を見ているようである。
この後、休憩をはさんで、第3部は南北戦争
リンカーンがチラッと出て来る。
「ジョニーは戦場へ行った」が流れる。
第4部は、鉄道の敷設。
見せ場は、原住民が放ったバッファローの大群。
ものすごい数と勢いである。
僕は今まで、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』のバッファローをスゴイと思っていたが、あんなのは問題外だということが分かった。
それから、第5部は金塊を積んだ列車を襲うギャング団。
これがまた、大変な迫力である。
実際に、撮影時にスタントマンが大怪我をしたらしい。
すごいんだけど、映画としては、見世物の域を出ていない。
最後は「アメリカ万歳!」で締めくくる。
で、終曲が流れる。
アメリカ人にとっては自明である歴史も、日本人には分かりにくいだろう。
その辺、もう少し配慮が欲しかった。
アカデミー賞脚本賞、音響賞、編集賞受賞。