この週末は、ブルーレイで『いとこ同志』を見た。
- 出版社/メーカー: アイ・ヴィ・シー
- 発売日: 2018/08/31
- メディア: Blu-ray
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製作・監督・脚本は、『美しきセルジュ』の巨匠クロード・シャブロル。
撮影は、『美しきセルジュ』のアンリ・ドカエ。
主演は、『美しきセルジュ』のジェラール・ブランとジャン・クロード・ブリアリ。
ヌーヴェルヴァーグを代表する作品と言えば、ゴダールの『勝手にしやがれ』、トリュフォーの『大人は判ってくれない』、そして、この『いとこ同志』である。
怪獣で例えれば(普通は例えないが)、ゴジラ、モスラ、ラドンに当たるだろう。
僕は、本作を10年位前に一度、DVDで見たのだが、その時はワインを飲みながらだったので、途中で寝てしまった。
終わってから、細君が「スゴイ話しだったよ」と言ったのだが、レンタルだったので、そのまま返してしまったのだ。
残念なことをした。
という訳で、今回はシラフで見た。
本作では、主演のジェラール・ブランとジャン・クロード・ブリアリの演じる役柄が、『美しきセルジュ』とは全く逆になっている。
しかも、全く違和感がなく、見事にその役になり切っている。
これを見ると、本当に「役者やのう」と思う。
モノクロ、スタンダード。
画質は良い。
ヌーヴェルヴァーグの代表作が、こんな高画質で見られるとは、いい時代になったものだ。
駅を降り立つ青年シャルル(ジェラール・ブラン)。
田舎からパリへ上京して来たのだ。
タクシーに乗る。
穏やかなテーマ曲。
タクシー到着。
いとこのポール(ジャン・クロード・ブリアリ)の部屋へ。
ポールは怪しい口ひげを残して、如何にも遊び人風である。
純朴そうなシャルルとは対照的(これが本作の基軸なのだが)。
部屋にはポールの仲間のクロヴィス(こいつがまた、とんだ一杯食わせ物)がいる。
彼は無職だが、どうやって食っているかは「今に分かる」という。
クロヴィスが格好を付けて英語を話したりすると、ポールは「外国語ならドイツ語を使え!」と叫ぶ。
ポールの伯父は愛人とニューヨーク〜マイアミ間を飛行中。
ポールの上京の目的は大学入学。
大学の手続きは済ませた。
ポールにジュヌヴィエーヴから電話が来る。
ポールがもう捨てた女だ。
何故か分からないが、クロヴィスが荒れている。
ポールはドイツかぶれらしく、何かにつけてドイツ語(の詩か何か)を唱えている。
ややマザコンの気があるシャルルは、部屋で母親に近況報告の手紙を書く。
まあ、僕が上京したばかりの時も、さびしくて、よく実家に電話をしたりしていたから、この気持ちは分かる。
この時代のフランス映画は、登場人物全員がタバコをスパスパ吸っている。
今の日本では考えられない光景だ。
ジュヌヴィエーヴがポールを尋ねて来る。
どうやら彼女は妊娠しているらしい。
ポールはクロヴィスに堕胎費用を渡す。
もう、このただれた雰囲気が、根岸吉太郎監督の映画『狂った果実』(1981年)みたいだ。
僕は、この映画が大好きなのだが。
なお、中平康監督の『狂った果実』(1956年)は、実際にヌーヴェルヴァーグに影響を与えたらしい(ウィキペディアにも書いてある)。
確かに、遊び人の兄(石原裕次郎)と純真な弟(津川雅彦)というのが、本作の設定と似ている。
まあ、どちらも映画史上の重要な作品だが。
で、翌朝、ベッドで寝ていたシャルルは、ポールに起こされ、車でぱり見物に出掛ける。
凱旋門なんかの辺りをドライヴする二人。
二人はカルチェ・ラタンのクラブへ。
チャラ男のポールは、道行く女の子にも片っ端から声を掛ける。
クロヴィスはポールに「女の件は片付けた」と耳打ち。
反吐が出るね。
このクラブの地下を、ポールは「売春窟」と呼んでいた。
人前でイチャついている男女が何組も。
連中の中に、不器用なフィリップがいる。
ポールはマルティーヌに声を掛ける。
マルティーヌはこれから、「講義に出る」という。
シャルルはブリッジ(カード)に誘われる。
連中から「ポールと従兄弟なのに似ていない」と言われる。
シャルルはフローランスという娘が気になり、ポールに紹介してもらう。
シャルルは、出て行った彼女を追って、カード・ゲームはそっちのけで外へ。
しかし、見失う。
傍にあった古本屋へ入るシャルル。
バルザックを探し、『ゴリオ爺さん』を見付ける。
店主との会話で、「僕は読書ばかりだ」と打ち明けるシャルル。
シャルルを気に入った店主は、彼にタダでバルザックを与える。
この店主が、『大人は判ってくれない』の担任の教師ではないかと思うのだが。
で、シャルルが店を出るとポールがいて、「カードを抜け出したので、連中が怒っている」と告げる。
シャルルが母親に手紙。
「驚いたことに、大学では皆、ノートを取らずに、講義録をコピーしています」と。
日本の大学生は勉強しないなどとよく言われるが、大学生が勉強しないのは古今東西共通ということだろう。
ポールが自宅で友人とパーティーを開く。
フィリップはシャルルに、「僕はみんなに嫌われている。君もそうなる」と告げる。
モーツァルトのレコードを掛けるポール。
遊び人だが、金持ちのボンなので、ドイツ語を話したり、クラシックを好んだりするのだろう。
フィリップの元恋人フランソワーズ(ステファーヌ・オードラン)は別の男とやって来る。
シャルルは田舎者なので、明らかに場の雰囲気に馴染めない。
そこへフローランスがやって来る。
緊張するシャルル。
彼女に声を掛け、「本気なんだ」と告げる。
フィレンツェからやって来たアルカンジェロ伯爵が、黒人の青年を追い出す。
貴族だか何だか知らないが、人種差別はイカンよ。
そこへ、ジュヌヴィエーヴもやって来る。
モーツァルトを止めて、今度はワーグナーを掛けるポール。
『地獄の黙示録』かと思った。
電気を消して、ロウソクを持ち、ドイツ語の詩を暗唱するポール。
シャルルはフローランスにキスをする。
電気が点くと、フィリップが女性を巡ってケンカを始める。
飛び出すフィリップ。
シャルルとフローランスも外へ。
キスをする二人。
彼女は「あなたが世界一好きよ」と言うが、純情なシャルルは「好きだ」と口に出して言えない。
ウジウジと心情を吐露する。
おまけにマザコン。
どう見ても、恋愛にはマイナス。
彼女は詰まらなそう。
「ドライヴしよう」とシャルル。
彼が車のカギを取りに部屋へ戻ると、乱痴気騒ぎが繰り広げられている。
伯爵が酔っ払って、「女を寄越せ」などと悪態を吐いている。
おまけに、空のピストルを振り回している(これが、ラストへの重要な伏線)。
クロヴィスは瓶を割りまくる。
シャルルが「カギを貸してくれ」と言うと、ポールは「みんなでドライヴへ行こう!」と。
全員ヘベレケである。
皆で外へ。
フローランスは一人、待ちぼうけ。
彼女は、ポールの車に乗せられる。
ポールは「180キロ出すぞ!」と叫ぶ。
究極の飲酒運転である。
当時は、車の量が少なかったから、大丈夫だったのか。
フローランスは怒った表情。
車はどんどん出発する。
朝、シャルルとポールは車で帰宅。
部屋に戻ると、兵どもが夢の跡。
眠っているユダヤ人の青年を、「ゲシュタポだ!」とドイツ語で脅すポール。
飛び起きる青年。
何て悪趣味なんだろう。
まだ戦後十数年しか経っていないから、当時の記憶も生々しいだろうに。
恋愛慣れしていないシャルルは、フローランスの電話番号を聞き忘れた。
しかし、彼女から電話が掛かって来る。
「一緒に授業に行こう」と約束する。
しかし、何故か彼女は時間を間違える。
ポールの部屋に来たフローランス。
シャルルはいない。
ポールは彼女に色々と吹き込む。
クロヴィスも参戦。
要するに、彼女は、実はこれまでも男関係が色々あり、純情なシャルルとは絶対にうまく行かないと。
で、あろうことか、とうとうポールとキスしてしまう。
もう、この後は悲劇でしかないのだが。
僕もシャルルみたいに不器用だったから、彼には感情移入してしまう。
まあ、もう少し大人になれば、必ずしも遊び人が成功する訳ではないと分かるのだが。
もう、スゴイ力でグイグイと最後まで見せる。
ロシアン・ルーレットを最初に効果的に使った映画は『ディア・ハンター』だと思っていたが、本作だね。
ラストは、絶望的に救いがない。
ベルリン国際映画祭金熊賞受賞。