『遠すぎた橋』

この週末は、ブルーレイで『遠すぎた橋』を見た。

1977年のイギリス・フランス合作映画。
監督はリチャード・アッテンボロー
彼は、後に『ガンジー』でアカデミー賞を獲っている。
役者としても活躍していて、ケネス・ブラナーの『ハムレット』にもチョイ役で出ていた。
この作品は、キャストが驚くほど豪華だ。
ロバート・レッドフォードジーン・ハックマンショーン・コネリーアンソニー・ホプキンスローレンス・オリヴィエエリオット・グールドダーク・ボガードライアン・オニールジェームズ・カーンと、真の主演級がズラリである。
豪華スターとスケールの大きさで大ヒットし、日本でも1977年洋画興行収入2位を記録。
ちなみに、この年の1位は『キングコング』、3位は『カサンドラ・クロス』(橋つながり)、4位は『ロッキー』、5位は『サスペリア』。
邦画の1位は『八甲田山』、2位は『人間の証明』、3位は『八つ墓村』である。
スゴイ時代だ。
では、本題に入ろう。
第二次大戦中の記録フィルムで戦況を解説するところから始まる。
そして本編。
テーマ音楽は、悲劇的な結末を暗示させるタイトルに似合わず、明るく勇壮である。
ものすごい数のエキストラ。
さすが『ガンジー』の監督である。
カネは相当掛かっているだろう。
主要キャストのギャラだけでもスゴそうだ。
ヨーロッパが舞台になっているので、フランス語やドイツ語など、各国語が飛び交う。
この作品での描かれ方を見れば、当時のドイツの立場が分かる。
本作は、第二次大戦中、失敗に終わった大規模空挺作戦(マーケット・ガーデン作戦)を題材にしている。
この無謀な作戦が企てられたのは、「クリスマス前に戦争を終えたい」という連合国上層部の意向が働いたからであった。
作戦会議。
いきなり、ダーク・ボガードショーン・コネリーライアン・オニールジーン・ハックマンが揃っている。
本当に超豪華キャストである。
重い雰囲気の中、無謀な作戦を強行することになった。
この作戦は、空挺師団が敵中深く降下し、ベルギー・オランダ間の五つの橋を占領、橋頭堡を築くことで機甲軍団が駆け抜けて一気にライン河を渡り、オランダを解放、ドイツの喉元にクサビを打ち込んでベルリンに進攻し、クリスマスまでには戦争を終らせたいという思惑だった。
しかし、諸事情から、空挺団の降下地点が橋から遠過ぎる。
更に、「ドイツ軍は手薄だ」という見込みがそもそも甘過ぎた。
ドイツ軍の戦車が隠れているのが分かっているのに、作戦を中止しなかったのである。
余談だが、本ブルーレイは、音楽の音はやたらデカイのに、セリフは小さくて聴き取りにくい。
イギリス将校は、敵陣を超えての100キロの進撃を西部劇にたとえてこう表現する。
「敵は先住民だ」差別的である。
ものすごい数の兵士が空軍機に乗り込む。
ノルマンディー上陸作戦の2倍の規模だそうだ。
正に物量作戦である。
それを再現したこの映画もスゴイ。
グライダーを引っ張りながら浮上する航空機。
延々と続く戦車の列。
本作は、戦争の描写が中心で、ドラマ的な要素はほとんどない。
従って、豪華なスターたちも群像の中の一人でしかない。
パラシュートの落下が壮観である。
まるでクラゲのよう。
CGのない時代に、よくこれを撮ったものだ。
向こうの戦争映画は、本当にカネが掛かっている。
これだけの人数が橋から13キロの地点に降り立った。
ドイツ軍も「まさか橋が狙いではないだろう」と勘違いするほど遠い。
精神病院が爆撃されて患者が脱走。
訳の分からないことを叫びながらさまよう患者たち。
シュールな画である。
爆破シーンは、まるで記録フィルムのようなリアルさである。
おびただしい量の爆薬を使ったのだろう。
敵が隠れていて狙い撃ちして来る。
とにかく、スゴイ数の戦車である。
今なら全てCGであろう。
空軍が爆弾を落とす。
ドイツ兵が投降。
二日間で100キロを駆け抜けなければならない陸軍は、とっとと行きたいのに、敵が待ち構えて襲って来る。
更に悲劇的なことに、通信機器の部品が違っていて、他の部隊との連絡が取れない。
いや、喜劇か。
ドイツに占領されていたので、一般市民は連合国を猛烈に歓迎する。
アンソニー・ホプキンス登場。
通り道の橋を爆破する。
本作は、部隊が幾つにも分かれているが、それぞれの部隊がどういった作戦を遂行するのか、イマイチ説明不足で要領を得ない。
テンポもやや冗長である。
ただ、画面上で戦争が繰り広げられているに過ぎない。
それが、やたらリアルなのだが。
さて、落ちたグライダーから作戦要項が敵の手に渡る。
でも、この期に及んでも、ドイツ軍はこんな無謀な作戦を信じない。
アンソニー・ホプキンスは、橋の傍にある一般住宅を占拠した。
「これは戦争ですから」。
家の持ち主の婆さんは、やり場のない怒りでプリプリしている。
日本も、今は平和ボケで、「中国、韓国と戦争しろ!」なんて恐ろしいことを平気で口走る連中もいるが、いざ戦争になったら、自衛隊やら米軍やらが、自分たちの家に土足で乗り込んで来てメチャクチャにしても文句を言えないのだ。
敵が待ち伏せている橋に突っ込む。
橋の上で戦い勃発。
実は包囲されている。
敵は増える一方、橋へは行けない。
浮き橋を作り、一晩で橋を架ける。
クレジットでは一番上になっているのに、ロバート・レッドフォードがなかなか出て来ない。
友軍が支援物資を降下した。
だが、敵陣内に落ちる。
一人の兵士が走って行き、大きなバッグを引きずって来る。
撃たれる。
帽子が飛び散る。
命懸けで運ぼうとしたのは帽子だった。
戦争の悲惨でありながら滑稽な一面である。
家を占拠され、破壊された婆さんは、半狂乱になって家を出、タクシーを呼ぼうとする。
撃たれる。
ちょっと、ロベルト・ロッセリーニの『無防備都市』を思い出した。
医者の役でローレンス・オリヴィエ登場。
ずいぶん太って、ハゲている。
ハムレット』の頃とは、かなり印象が変わった。
眼力は相変わらず。
地元の名士には見えるが、医者には見えない。
一般市民がどんどん犠牲になって行く。
これが戦争なのだろう。
ロバート・レッドフォードがようやく登場するが、余りにもヒーロー然として、浮いている。
まるでキム・タクのようだ。
こんな調子で、戦争の描写が延々と続く。
疲れて来たので、この辺で止めるが。
ものすごい数の人や戦車や火薬を投入して、破壊活動を行い、結果は…。
戦争のむなしさは確かに表現されている。
ただ、戦争映画の完成度としては、どうだろうか。
微妙なところ。