『脱走特急』

この週末は、ブルーレイで『脱走特急』を見た。

1965年のアメリカ映画。
監督は、『大地震』のマーク・ロブソン
音楽は、『猿の惑星』『パットン大戦車軍団』『トラ・トラ・トラ!』『パピヨン』『チャイナタウン』『オーメン』『エイリアン』『スタートレック』の巨匠ジェリー・ゴールドスミス
主演は、『錨を上げて』『踊る大紐育』『地上より永遠に』の大スター、フランク・シナトラ
共演は、『第三の男』『空軍大戦略』『スーパーマン』『ガンジー』のトレヴァー・ハワード、『史上最大の作戦』『遠すぎた橋』のヴォルフガング・プライス、『荒野の七人』のブラッド・デクスター、『ウエストワールド』のジェームズ・ブローリン。
脱走モノの好きな僕も、恥ずかしながら、本作のことは知らなかった。
20世紀フォックス
カラー、シネマスコープ
「1943年8月、イタリア。連合軍が迫り、戦争に疲弊したイタリアは、ドイツ陸軍の占領下で戦いを続けていた」というクレジット。
街にイタリア軍がいる。
なお、本作に登場するイタリア人やドイツ人は、ハリウッド映画なのに、きちんとイタリア語やドイツ語を話す。
大戦末期だというのに、日本の戦争映画に見られるような悲壮感は、あまり感じられない。
突如、アメリカ軍の飛行機が墜落して来て、爆発炎上する。
上官から状況を尋ねられたイタリア兵士は、「操縦士は死んだ」と報告した。
が、実はパイロットのライアン大佐(フランク・シナトラ)は生きていた。
彼はかくまわれて、イタリア軍の捕虜収容所へ。
ここには英米軍の捕虜達がいた。
ライアンが到着すると、それまでの英米のリーダーが亡くなって、遺体が埋葬されているところであった。
ライアンは、イタリア人で英語が出来る通訳を通して面会した収容所長に、「そんなんだから負けるんだ!」と挑発的な態度を取る。
アメリカ軍がイタリア本土に上陸した」と聞いて、大喜びする捕虜達。
彼らは、汚らしい格好をしていた。
彼らが何度も企てた脱走計画に対する制裁で、服や薬を支給されないのであった。
捕虜達の間では、マラリア壊血病が流行っていた。
でも、それでも脱走計画は続けるという。
ここでは、多数派のイギリス兵と、少数派のアメリカ兵が対立していた。
イギリス兵のリーダー、フィンチャム少佐(トレヴァー・ハワード)は強行に脱走計画の遂行を主張するが、ライアンは「もうすぐ終戦だ。脱走よりも薬の方が大事」と言う。
しかし、ライアンは捕虜達の統率については、階級的には格下のフィンチャムに任せる。
ライアンは、夜中にイギリス兵に呼び出される。
フィンチャムは、アメリカ兵が脱走用の物資(薬)を盗んだので、処罰して欲しいとライアンに頼む。
だが、ライアンは「処罰は許さん! 薬は病人に配れ」と告げる。
ライアンはフィンチャムに、「今後は私が指揮を執る」と言う。
収容所長はライアンに、「捕虜が反抗を続ければ、指揮官の責任だ」と言うが、ライアンは「今後は今までのようなことはさせない」と。
ライアンは、オレがいる限り脱走は許さんと言うが、真の目的は捕虜達の待遇改善であった。
イタリア人の通訳は、ちょっとクセ者で、収容所長にライアンの意図をきちんとは伝えなかったが。
ライアンは、捕虜達に「服を燃やせ! 下着もだ」と命じる。
下半身までスッポンポンになった捕虜達を見て、さすがの収容所長も、新しい服を提供しない訳には行かなかった。
その代わり、ライアンが懲罰房行きを命じられた。
懲罰房は、狭いコンテナであった。
ところが、イタリアがついに降伏し、ライアンは外へ出られた。
捕虜達は、収容所長に復讐するべく、自分達で裁判を始めていたが、ライアンが止めさせる。
「絞首刑はダメだ。懲罰房にブチ込め!」
リンチはイカンということだな。
まあ、収容所長も、所詮は仕事でやっていたのだから。
軍人なんて、なるもんじゃないね。
そこへ、ドイツ空軍機が来襲する。
捕虜達は、イタリア人通訳に導かれるままに、「海岸まで32キロ。皆で移動だ!」と、集団で歩き出す。
その夜、収容所にドイツ軍がやって来た。
中はもぬけの殻。
だが、懲罰房の中から所長の助けを求める声が。
所長は、ようやく狭いコンテナの中から助け出される。
「捕虜が逃げた。」
その頃、捕虜達は、「船の用意をする」と言っていなくなった通訳が戻って来るのを待っていた。
そこへドイツ軍がやって来て、捕虜達を捕まえた。
逃げようとすると、容赦なく銃殺される。
捕虜達は最初、通訳が裏切ったと思うが、裏切ったのは所長であった。
捕虜達は貨物列車に乗せられる。
捕虜達の中のケガ人は、一箇所に集めて銃殺された。
列車はローマへ向かう。
ローマ帝国時代の遺跡がたくさん出て来て、なかなか趣き深い。
捕虜達は列車から降ろされる。
通訳が「私はイタリア人だ」と申し出るが、冷酷なドイツ兵は釈放しない。
短時間で物資の補給を終え、再び列車は走り出した。
各車両の上には、銃を持った兵が見張っている。
ライアン、フィンチャムら将校5人は前の車両に乗っていた。
ライアンは、床に穴を開けて脱走するという。
床板は、木がモロくて、すぐに崩れた。
夜、走る列車の床穴から抜け出したライアンとフィンチャムは、屋根に登り、護衛の首を絞め、銃と軍服を奪う。
列車が停車した時に、捕虜達は闇に紛れて外に出、集団で屋根の上から護衛に飛び掛かり、銃を奪う。
何という鮮やかな展開。
こうして、彼らはこの列車を奪うことに成功した。
ここまでが前半。
さあ、これからどうなる?
後半も見せ場の連続。
スケールが大きく、アクションや爆破シーンも多数。
登場人物のキャラクターもきちんと描き分けられている。
特に、ライアンの軍人としての正義感と葛藤。
今では、こういう映画はもう撮れないだろう。
しかも、ラストが驚きである。
そして、プッツリと幕を閉じる。
これは傑作だ。
1965年の洋画興行収入8位。
ちなみに、この年の洋画1位は『007/ゴールドフィンガー』、2位は『マイ・フェア・レディ』、3位は『サウンド・オブ・ミュージック』。
邦画の1位は『赤ひげ』。
映画史上の名作、傑作が目白押しである。
スゴイ時代だ。