『ウエストワールド』

この週末は、ブルーレイで『ウエストワールド』を見た。

ウエストワールド [Blu-ray]

ウエストワールド [Blu-ray]

1973年のアメリカ映画。
原作・監督はマイケル・クライトン
マイケル・クライトンは、言うまでもなく『ジュラシック・パーク』の原作者。
『ウエスト・ワールド』のロボットを恐竜に置き換えれば『ジュラシック・パーク』になる。
他に、SFファンには有名な『アンドロメダ病原体』という作品があり、これの映画化『アンドロメダ…』は昔、テレビで放映されていたのを見た。
僕が『ウエスト・ワールド』という映画のことを初めて知ったのは小学生の頃、ケイブンシャの大百科か何かで、人間そっくりのロボットが顔面をパカッと外している写真を見た時であった。
これはなかなか衝撃的であった。
今なら、CGで幾らでもこういう映像は作れるのだろうが、当時はアナログだから大変だったと思う。
その後、テレビだかレンタル屋でビデオを借りて来てだかは忘れたが、作品そのものも見た。
作品のテイストとしては『ウルトラセブン』のような感じで、完全なB級SFである。
セットも安っぽくて、これを見ると、『2001年宇宙の旅』(本作より5年も前)が如何に画期的な作品かが分かる。
主演はユル・ブリンナー
アメリカ西部開拓時代のガンマン(のロボット)を演じる。
明らかに『荒野の七人』を意識しているのだろう。
これがハマリ役で、彼なくしては本作は成立しなかった。
ユル・ブリンナーの他の有名な出演作と比べるとマイナーだが、これはこれで立派な代表作だと思う。
狂言回し役のリチャード・ベンジャミンは映画監督でもあり、彼の監督作『恋する人魚たち』を、僕は以前、映画館で観た。
最初は本作の舞台「デロス」のCMから始まる。
この手法は、後に『スターシップ・トゥルーパーズ』なんかでも踏襲されている。
デロスは、古代ローマ、中世ヨーロッパ、開拓時代のアメリカ西部の三つを本物そっくりに再現し、観客はそれを体感出来るという夢の巨大テーマパークであった。
レポーターが「デロス」について説明し、実際に体験して来た客にインタビューする。
客は口々に「素晴らしかった」と言う。
滞在費は1日1000ドル。
1ドル=308円の時代だろうから、かなり高い。
今で言えば、「ななつ星」に乗るような感覚だろうか。
シカゴに住んでいる弁護士マーティン(リチャード・ベンジャミン)は、友人のブレイン(ジェームズ・ブローリン)とデロス行きのジェット機に乗っていた。
マーティンはデロスに行くのは初めてだが、ブレインは既に何度も体験している。
ブレインは「デロスが如何に素晴らしい世界であるか」を熱心に説く。
現地に着くと、観客は三つのゾーンに分かれる。
マーティンとブレインは西部劇の衣装に着替えた。
カントリー風の音楽。
浮き浮きの客達。
マーティンの身の上が多少は語られるが、ストーリーとはほとんど関係がない。
このテーマパークにいるのは、客以外は皆人間そっくりのロボットである。
銃は本物で、撃ってもロボットだから平気である。
銃には熱感知装置が着いており、人間には発砲出来ないようになっているので、こっちは傷付かない。
如何にも『ジュラシック・パーク』の作者が考えそうな設定だ。
荒くれ者のユル・ブリンナーが登場する。
マーティンはなかなかこの設定に馴染めないが、連れの勧めるままに恐る恐る銃を撃ってみる。
血しぶきを飛ばしながら倒れるユル・ブリンナー
リアルだ。
最初は抵抗があったマーティンも、すぐに病み付きにある。
昨今のリアルなテレビ・ゲームも、多分こんな感じなんだろう(僕はゲームを全くやらないので、詳しくは知らんが)。
この間、暴力的なゲームを半年間子供に無理矢理やらせていたヤツが逮捕されていたな。
「ゲームをやらせただけで逮捕かよ!」と思ったが、子供は精神に異常を来たしていたらしい。
これはリアル過ぎるゲームの弊害だな。
暴力とセックスは人間を夢中にさせるが、この世界には売春婦もいる。
「ロボットには体温がないはずだから、冷たくないのだろうか?」と思ったのだが、そこは突っ込んではいけないようだ。
撃ち合いの行われた残骸をクルマが片付けに来る。
映画のセットのような舞台裏である。
撃たれたロボットは修理工場へ送られる。
最近、ロボットの故障が増えて来たという。
デロスの全体は、中央のコントロール・センターで管理されている。
翌日。
ユル・ブリンナーが再び登場し、マーティンと対決。
マーティンが撃つと、ブリンナーは窓ガラスを突き破って倒れる。
サム・ペキンパーばりのスローモーション。
マーティンは、殺人の罪で牢に入れられる。
しかし、爆破して脱出。
こういう世界は麻薬と同じなのだろうか。
次第に主人公は、この世界での出来事を現実だと思い始める。
ついに、休んでいたブレイン達にガラガラヘビのロボットが噛み付く。
客にケガをさせるテーマパークなんてイカンわな。
どうやら、プログラムに異常が発生しているようだ。
ヘビは回収されるが、こうした故障が、実はあちこちで頻発していた。
原因を究明するために、技術者達は施設の一時閉園を提案するが、上層部に却下される。
いつの世も、欲にまみれた資本主義の犬どもはこうだわな。
こうして、被害は更に拡大して行くのだ。
ジョーズ』なんかでもそうだったが、パニック映画の王道パターンである。
エストワールドでは、酒場で大乱闘が繰り広げられていた。
バルサ材で作られた椅子やテーブルが飛び交い、ドリフのコントで使われるような柔らかいビンで殴り合う。
マーティン達は楽しんでいる。
ただ、このシーンはアクションとしてはちょっと軽いな。
工場では、ユル・ブリンナーが顔面をパカッと外されている。
先に書いたが、このシーンは、当時としては衝撃的だっただろう。
今なら、CGで簡単に作れるが。
さて、売春婦ロボットが客を拒むようになった。
中世の騎士もコントロールが効かず、とうとう客を刺してしまう。
客は暴力を楽しんでいたんだから、因果応報と言うべきかどうか。
ユル・ブリンナーが三度、ブレイン達の前に現れる。
「またお前か、もう飽きたよ」と悪態を吐くも、何とブレインは撃たれてしまう。
あり得ないことが起こった。
流れる血を「え?」と見ながら、ブレインは死んでしまう。
マーティンは逃げ出した。
しかし、ユル・ブリンナーは執拗に追い掛けて来る。
彼の運命や如何に。
既に、全ロボットのコントロールが効かなくなっていた。
電源を切っても、予備パワーで動く。
あちこちでロボットの反乱が起きていた。
『2001年』を筆頭に、コンピュータやロボットが人間に反乱を起こすというのは、近未来SFの一つの典型である。
本作は、ストーリー自体が単純で、ただロボットが人間を追い掛けるだけの映画だ。
演出も平板で、もう少し捻りが欲しい。
ロボットが、やられてもやられても追って来るというのは、後の『ターミネーター』の原型になったとか。