『荒野のストレンジャー』

この週末は、ブルーレイで『荒野のストレンジャー』を見た。

1973年のアメリカ映画。
監督・主演はクリント・イーストウッド
僕の父は西部劇が大好きであった。
テレビで放映していると、嬉々として見ていたのを覚えている。
片や、僕は全く興味がなかった。
アカデミー賞を受賞した『許されざる者』も公開時に劇場で観たが、どこがいいのかさっぱり分からなかった。
しかし、最近では考えを変え、映画史上有名な作品は見ておきたいと思っている。
『荒野のストレンジャー』は、クリント・イーストウッドの監督2作目である。
『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』等のマカロニ・ウェスタンに出演し、『ダーティハリー』が大ヒットした後なので、自信満々で製作しているのが画面の端々から伺える。
荒野を駆ける一頭の馬に乗ったイーストウッドのロング・ショットから始まる。
陽炎の中、徐々に姿が浮かび上がって来る。
彼は湖のそばにあるラーゴという町へやって来た。
建物は如何にもセットである。
彼が酒場に入ると、見知らぬ訪問者が珍しいのか、周りの客達がみんな見ている。
そして、挑発する。
無視して床屋へ。
ヒゲを剃り始めたところへ、ならず者達が集まって来る。
彼は、目にも止まらぬ早業で、連中を撃つ。
アメリカ製の西部劇は、『夕陽のガンマン』のようにギラギラとした感じではない。
全体に乾いた印象である。
余計なセリフもなく、淡々と進む。
続いて、彼は女を犯す。
それから、宿へ。
夜になった。
ならず者達にムチで撃たれる老人のインサート。
老人は、この町の保安官であった。
だが、そのことは、現時点では観客に明かされない。
翌日、イーストウッドは再び床屋に行く。
店の風呂に入っていると、昨日の女がピストルを持って入って来る。
それでも、何とか撃たれずに済んだ。
彼は、旅の途中で立ち寄っただけなのに、住民から「町を出ないでくれ」と頼まれる。
一方、町では住民達の会議が行われていた。
実は、1年前に町で捕まえて刑務所に送っていた3人のならず者達が、もうすぐ釈放されることになっていたのである。
今の保安官は役に立たない。
町では、彼らの復讐に備えて、別のならず者達を雇っていたのであるが、それをイーストウッドが撃ち殺してしまったのである。
町にとって残された手段は、このよそ者(イーストウッド)を雇って3人に備えることしかなかった。
彼はことわったが、「何でも言うことを聞く」との申し出に、この町の護衛を引き受けることにする。
彼は、町の者みんなに銃を持たせた。
人形に向けて撃つ訓練をするが、全く当たらない。
そうこうしている内に、ならず者達が釈放されてしまった。
町では、表向け大人しく従っているものの、イーストウッドのやりたい放題に反感も芽生えていた。
ただし、どうやら町の住民には、裏の事情があるようだ。
それは、前の保安官を3人のならず者達がなぶり殺しにするのを、みんなで黙って見過ごしたということであった。
余談だが、この作品では血糊が赤くない。
当時は、赤い血糊だと検閲に引っ掛かったのかも知れない。
それはさておき、イーストウッドはホテルに泊まっている客全員に「出て行け」と無茶な要求をする。
とうとう、町の住民達は困惑し、怒り始めた。
イーストウッドは、そんなことおかまいなしに、自分だけになったホテルにお姉ちゃんを連れ込んで、よろしくやっている。
彼の寝ているところを、町の者達が襲い掛かる。
けれども、イーストウッドはまんまと逃れて、逆にホテルを爆破してしまった。
で、この間に明かされるのは、前の保安官は町でならず者達に殺させたということであった。
みんな、身に覚えがあるのだ。
さて、からくも逃げ出した町の者が、3人のならず者の元へ行き、とんでもない流れ者の存在を伝える。
この後、町の外でちょっとだけ対決がある。
イーストウッドは、ならず者の一人の耳だけを正確に狙い撃つ。
が、それは序の口。
ついに3人が町へやって来る。
イーストウッドは、何故か町中の建物を全て赤く塗って迎え撃つ。
いよいよ全面対決かと思われたが…。
作品のテーマには、「因果応報」のようなものが含まれているような気がする。
それにしても、イーストウッド演じる主人公は、何でこんなに荒っぽいのだろうか。
ダーティハリー』ばりのアンチ・ヒーローである。
確かに、自分のことが可愛い町の住民達の手前勝手さは浮かび上がっているのだが…。