『イレイザーヘッド』

この週末は、ブルーレイで『イレイザーヘッド』を見た。

イレイザーヘッド デイヴィッド・リンチ リストア版 [Blu-ray]

イレイザーヘッド デイヴィッド・リンチ リストア版 [Blu-ray]

1977年のアメリカ映画。
監督はデヴィッド・リンチ
さて、「カルト映画」という言葉は、作品の質を保証しない。
大抵は、単なる「変な映画」であり、「面白い映画」や「いい映画」であることは滅多にない。
まあ、『エル・トポ』くらいになればスゴイと思うが、ほとんどはマニアが珍重するだけだ。
イレイザーヘッド』は、そのカルト映画の代名詞のようになっている。
デヴィッド・リンチの長編デビュー作。
彼は、本作の後、『エレファント・マン』で一時、「感動の名作」を撮ったかのように持てはやされたが、結局、単なるグロ好きの悪趣味な監督であるということが判明する。
処女作には作家の全てが詰まっていると言われるが、本作も例外ではない。
僕が本作を見るのは、数年前にDVDで見て以来、2回目である。
ブルーレイで高画質になり、気持ち悪さも一層アップした。
昔から、頭の爆発した主人公が目を見開いてこちらを見ている有名なショットは何度も目にしていた。
高校時代の映画好きな友人も本作に言及していた。
だが、実際に見る機会はなかなか訪れなかったのだ。
本作はモノクロである。
ちょっと、ブニュエルの『アンダルシアの犬』っぽい部分もある。
浮かんでいる惑星のようなイメージに主人公(ジャック・ナンス)の顔がオーバーラップされる。
穴の開いた屋根。
窓を見る上半身裸で、出来物だらけの男。
胎児のようなものがヘドロのような汚い水たまりに落ちる。
まばゆい光の外へ。
出産を暗示しているのだろうか。
冒頭から、よく分からないイメージが繋ぎ合わされる。
これを「イマジネーション」と呼ぶのだろうか。
主人公のヘンリーは、だだっ広い工場を通って、自宅であるアパートに帰って来る。
彼は工場労働者である。
何故か、ずっと怪訝な表情をしている。
この映画は終始重苦しい雰囲気だ。
夜、付き合っている女性メアリーの家へ。
彼女の家族を含め、本作の登場人物は皆ヘンな人ばかりである。
彼女の家での夕食には、カエルみたいな奇怪な鶏肉が出て来る。
突然、首から血を流して、動き始める。
だからと言って、ホラーではない。
とにかく、気持ち悪い。
趣味の悪いスプラッターみたいだ。
ヘンリーは、メアリーの母親から「娘と寝たのか」と詰問される。
「実は、病院に赤ちゃんがいる」と。
これを聞いて、ヘンリーは「彼女と結婚する」と言う。
場面変わって、ヘンリーの部屋。
メアリーが不気味な生物にエサをやっている。
ヌメヌメとした爬虫類のような皮膚。
あるいは、羽根をむしった鳥のような外観。
どうやら、これが彼女の産んだ赤ん坊らしい。
不快な泣き声でキーキー鳴く。
これが嫌悪感を催す。
メアリーは、赤ん坊の泣き声がうるさくて眠れないと言って、実家に帰ってしまう。
今度は、赤ん坊が熱を出し、全身に発疹が出来る。
いちいち不気味で、おぞましい。
今度は、変な舞台のような所で、両頬にコブのある女の子が踊っている。
上から、ヘビのような、長いオタマジャクシのような、または未熟な胎児のような、得体の知れない生物みたいなものが幾つも落ちて来る。
彼女は、それを踏み潰す。
グチャッッと。
オエッ!
これはヘンリーの夢なのだろうか。
目が覚めると、続いては彼のベッドの中に、さっきの謎のオタマジャクシがいっぱい。
彼は、それを壁に投げ付ける。
グチャリ!
更に、へその緒みたいなナメクジが動き回る。
これはクレイ・アニメだろうか。
本作は、特殊効果もデヴィッド・リンチが自分で手掛けたらしいが、低予算の割にはよく出来ている。
モノクロにしたのは、特撮のアラが見えないようにというのもあるかも知れない。
これがカラーなら、もっとチャチに見えていただろう。
最初の『ゴジラ』みたいなものだな。
次に、ヘンリーの隣の部屋の美女が彼の部屋に入って来る。
ここからは、いよいよ不気味で理解不能なイメージの連続。
ストーリーなんかない。
デヴィッド・リンチは、性的なことや胎児に対して、特別な嫌悪があることは伺える。
確かに、これは映画でしか表現出来ない世界ではある。
しかし、これを評価するかどうかとなると、また別の問題だろう。