『ベイブ』

この週末は、ブルーレイで『ベイブ』を見た。

ベイブ [Blu-ray]

ベイブ [Blu-ray]

1995年のアメリカ映画。
監督はクリス・ヌ―ナン。
僕はこれまで1970年代の作品を中心にブルーレイ・ディスクを収集して来たが、本作は細君のたっての希望により購入したものである。
僕が本作を見たのは、おそらく3度目。
最初は、十数年前に細君に勧められて見た。
子供向けの映画だと思っていたので、全く気が進まなかったのだが、さにあらず。
可愛らしい子ブタのベイブの大活躍に、思わず涙ぐんでしまった。
これは非常によく出来た作品である。
実際、アカデミー賞でも7部門にノミネートされている。
1998年には、続編の『ベイブ/都会へ行く』が公開され、細君と一緒に映画館で観たが、こちらはちょっとトーンが重くて、子供向けの映画としては残念な出来映えであった。
その後、続編の話しは聞かない。
製作・脚本のジョージ・ミラーは、『マッドマックス』の監督である。
あの冷徹なアクション映画を撮った人のどこから、この心温まる物語が創造されたのか、想像もつかない。
本作の主役は、もちろん子ブタのベイブだが、人間の主役はジェームズ・クロムウェル演じるホゲットおじさんである。
これがまた、いい味を出しているのだ。
この人の醸し出す穏やかな雰囲気が、ベイブとの心の通い合いに説得力を与えている。
物語は養豚場から始まる。
母ブタのおっぱいを吸う赤ちゃんブタ達。
母ブタは引き離され、トラックに乗せられて「天国」へ。
残された赤ちゃんブタの中から1頭が選ばれ、とある農村で行われた「子豚の体重当てコンテスト」の景品になる。
農場主のホゲットさん(ジェームズ・クロムウェル)は、この赤ちゃんブタを抱き上げた。
いきなりおしっこをする子ブタ。
しかし、ホゲットさんは体重当てコンテストで優勝し、この子ブタは彼の農場にやって来ることになった。
子ブタは、農場の仲間の動物達からベイブと呼ばれることになった。
「ママに会いたい」と悲しむベイブを、動物達は温かく迎え入れる。
この動物達も、キャラクターが実に見事に描き分けられており、まるで人間のドラマを見るようである。
ベイブは、牧羊犬のフライを母親代わりに慕うようになった。
ホゲットさんの家の中には、フライとその夫である同じく牧羊犬のレックスと、意地悪な猫しか入れなかった。
そして、牧場の羊達は牧羊犬のことを「オオカミ」と呼んで嫌っていた。
この農場には、雄鶏の代わりに朝鳴くアヒルがいる。
この、アフラックのキャラクターみたいなイタズラ好きのアヒルは、ホゲットさん達が新たに購入した目覚まし時計のために、自分の仕事を奪われる危機に陥った。
彼はにっくき目覚まし時計を退治したいのだが、猫アレルギーのため家の中に入れない。
そこで、ベイブに頼むのだが、ドジなベイブのおかげでハチャメチャの大騒動になる。
こういうシーンが生き生きと描かれていて、素晴らしい。
この騒動は、農場の動物達の間で問題となり、動物会議の結果、「それぞれ分をわきまえよ」ということになる。
本作は、CGとアニマトロニクスという技術を駆使して、動物達を動かしている。
この時代のCGには、未だ必然性があった。
本当に生きて、人間の言葉をしゃべっているかのように見えるが、チャプターの合間にコーラスを入れる3匹のネズミだけは人形丸出しである。
さて、クリスマスになった。
ホゲットさんの娘夫婦が遊びに来た。
ホゲットさんの奥さんは元々、子ブタのベイブにせっせとエサを与え、丸々と太らせて美味しくいただくつもりであった。
けれども、ホゲットさんはどうも気が進まない。
「もっと太らせてハムにしよう」と、代わりにアヒルのオレンジ焼きが食卓に出される。
この後もベイブに何度かピンチが訪れるのだが、そのサスペンスの盛り上げ方も良い。
ある朝、ベイブはひょんなことから牧場を抜け出したのだが、偶然羊ドロボーを発見し、報告する。
このことがご主人にほめられ、ベイブは「牧羊犬になりたい」という思いを抱く。
牧場の羊達は、ベイブのブタ柄(?)を買っていたので、彼の言うことを聞く。
それを見ていたホゲットさんは驚いた。
ところが、ベイブに嫉妬した牧羊犬のレックスがご主人を噛んでしまう。
優秀な牧羊犬だったレックスには、実は命がけで羊を守ったために耳が遠くなってしまったという重い過去があったのだ。
で、ベイブが牧羊犬の代わりを務めることになる。
ホゲットさんは、ベイブを牧羊犬のコンテストに出そうとする。
奥さんは、夫の正気を疑うが。
さあ、これからどうなる?
ネタバレになるので書かないが、クライマックスのサイレントとスローモーションを使った演出がいい。
アカデミー視覚効果賞受賞。
1996年外国映画興行収入6位(1位は『ミッション・インポッシブル』。ちなみに、邦画の1位は『ゴジラVSデストロイア』)。