『ブレージングサドル』

この週末は、ブルーレイで『ブレージングサドル』を見た。

ブレージング サドル [Blu-ray]

ブレージング サドル [Blu-ray]

1974年のアメリカ映画。
監督は、コメディー映画の巨匠(?)メル・ブルックス(『ヤング・フランケンシュタイン』)。
本作は、アメリカン・フィルム・インスティテュートの「アメリカ喜劇映画ベスト100」の6位に選ばれていて、メル・ブルックスの作品の中では、最も順位が高い。
ちなみに、1位は『お熱いのがお好き』、2位が『トッツィー』、3位が『博士の異常な愛情』、4位が『アニー・ホール』。
7位が『マッシュ』で、9位が『卒業』か。
『卒業』って、コメディーかな。
これが、一体どういう基準で選ばれたリストなのかは分からないが。
チャップリンなんかは案外、順位が低くて、最高が『黄金狂時代』の25位。
ブレージングサドル』に話しを戻すと、音楽は『ヤング・フランケンシュタイン』のジョン・モリス
主演はクリーボン・リトル。
共演は、『俺たちに明日はない』『ヤング・フランケンシュタイン』のジーン・ワイルダー、『博士の異常な愛情』『ゲッタウェイ』のスリム・ピケンズ、『ヤング・フランケンシュタイン』のマデリーン・カーン。
メル・ブルックス自身も出演している。
舞台は開拓時代の西部。
果てしなく続く荒野で鉄道の敷設工事中。
過酷な工事で、倒れた労働者は即刻クビになる。
黒人労働者達は、白人の工事監督にバカにされる。
黒人達は、見事なコーラスを付けて自分達の思いを歌い上げる。
この作品は、一部ミュージカル仕立てになっており、音楽も素晴らしい。
この時代、白人と黒人の激しい対立があったということが、まず最初に示される。
ロッコに乗って作業をしていた二人の黒人が、流砂に埋もれる。
何とか助かったものの、白人責任者は、黒人の命よりトロッコが無事だったことを喜ぶ。
怒りのあまり、黒人バート(クリ―ボン・リトル)は工事監督をシャベルで殴ってしまう。
文章で書くと、大変重い内容のようだが、これが全てコメディー・タッチで描かれている。
知事の腹心ヘドリー・ラマーは、鉄道が敷設されて地価が上がる前に、土地を奪って儲けることを思い付く。
鉄道の敷設予定地はロックリッジという町だった。
平和な町に、早速ヘドリーの送り込んだ簒奪者達が乗り込み、蹂躙して行った。
困った町の住民達は、教会に集まって相談する。
一同「戦え!」とボルテージが上がった。
ところが、保安官の成り手がいない。
誰も矢面には立ちたがらないのだ。
困った住民達は、知事に頼んで、ヨソ者を保安官として送り込んでもらおうとする。
州知事のレ・ペトメイン(メル・ブルックス)は、セクシーな秘書と勤務中にエッチなことをすることしか考えていない。
しかも、セックスのし過ぎで寄り目になったという、ふざけた野郎である。
ヘドリーは、何も考えていない知事に、「囚人を保安官として送り込もう」と吹き込む。
簒奪者自身が、そこへ保安官を送り込もうとは、タチの悪い冗談だ。
たまたま縛り首の順番を待っていたバートが、保安官としてロックリッジへ行かされることになる。
ヘドリーの狙いは、無力な黒人保安官がますます町を不穏な状態に陥れ、おびえた住民達が自ら土地を捨て、町を出て行くことにあった。
一刻も早く町を混乱状態に陥れるために、ヘドリーは秘かにタガート(スリム・ピケンズ)という用心棒を雇い、兇悪な一味を町に乱入させようと画策していた。
一方、そんなことは知らないバートは、命が助かった上に保安官に抜擢され、意気揚々。
グッチのバッグを持って町へ向かっていた。
彼は道中、黒人ジャズ・バンドの演奏で歓迎される。
ロックリッジでは、住民達が新保安官の到着を、大いに期待しながら待っていた。
ところが、到着した保安官は黒人である。
住民一同は唖然とする。
この時の町民達の表情がスゴイ。
この時代、如何に黒人が嫌悪されていたかが分かる。
歓迎のセレモニーのはずが、住民は皆、バートに銃を向ける。
唯一、止めようとした牧師が掲げた聖書も、銃弾に撃ち抜かれてしまう。
住民達は、知事に黒人保安官の解任を求める。
一方、バートは、留置場にいるジム(ジーン・ワイルダー)と仲良くなった。
彼は、かつて「ウェイコ・キッド」と呼ばれた早撃ちの名手であったが、今は単なる飲んだくれになっていた。
バートは子供の頃のことをジムに語る。
バートは家族と一緒に、白人の幌馬車隊に混ざって西部に向かった。
途中、スー族の大群に襲われたが、酋長に「黒人だから」という理由で逃がしてもらう。
白人は皆殺しになった。
この後、映画史上有名なシーンがある。
夜営をしている連中が、皆で豆を喰いながら、順番に屁をこくのだ。
まるで、ドリフのコントのようにリアルで生々しい屁の音が連打で炸裂する。
何でも、メジャー映画では史上初の放屁のシーンらしい。
ここは、不覚にも細君と大爆笑してしまった。
このシーンは、テレビ放映の際には音を消されたらしいが。
さて、白人だけの町民達は、黒人の保安官に不満が爆発している。
「皆で保安官を殺そう!」などと、物騒な決議が行なわれる。
それにしても、町民達の保安官への対応の冷たいことよ。
これが、アメリカの人種差別の実態なのだろう。
で、タガートはモンゴという頭の弱い巨漢をロックリッジへ送り込む。
ならず者モンゴは水牛に乗って登場。
だが、バートにあえなく退治される。
町民達は、これまでとは打って変わって、黒人保安官を信頼するようになる。
そこへ、またヘドリー一味が次なる刺客を送り込んで来る。
バートと町民の運命や如何に?
どうでもいいが、酒とショーは、いつの時代も庶民を慰めていたのだということが分かる。
本作は、明らかに人種差別を風刺しているが、全編のトーンはバカバカしいギャグのオン・パレード。
正直なところ、日本人とは笑いのツボが違うので、着いて行けない部分も多々ある。
そして、最後はドタバタで終わる。
まあ、面白いのは面白いんだけど、ちょっとね。
これが、アメリカでは高く評価されたコメディーなのである。
本作はパロディーなので、元ネタを知っていれば、もっと楽しめたかも知れない。
僕は西部劇に詳しくないので。