『夢のチョコレート工場』

この週末は、ブルーレイで『夢のチョコレート工場』を見た。

夢のチョコレート工場 [Blu-ray]

夢のチョコレート工場 [Blu-ray]

1971年のアメリカ映画。
監督はメル・スチュアート
原作はロアルド・ダール
ロアルド・ダールの作品は読んだことがないが、某多読真理教の尊師が著書の中で薦めていたので、名前だけは知っている。
『チョコレート工場』は、10年くらい前に、ティム・バートン監督、ジョニー・デップ主演でリメイクされた。
大々的に宣伝していたのは覚えているが、当時は全く興味がなかった。
今でも、リメイクには全く興味がない。
本作を見ようと思ったのは、主演が『俺たちに明日はない』『ブレージングサドル』『ヤング・フランケンシュタイン』のジーン・ワイルダーだったからだ。
共演には、『ポセイドン・アドベンチャー』のジャック・アルバートソンがいる。
ディズニーのパレードのような音楽で始まる。
タイトル・バックはチョコレート工場の様子。
次々と製造されるチョコレート。
本編は、終業の鐘が鳴ると同時に学校から飛び出して来る子供達で始まる。
学校の前のお菓子屋に飛び込む子供達。
色とりどりのお菓子達。
懐かしい光景だ。
ワンカ・チョコレートの新作が発売された。
子供達はみんな大好きだ。
本作は、一応ミュージカル形式である(但し、歌は少ない)。
軽やかに歌いながら、子供達にお菓子をバラまく店主。
そんなお菓子屋の中の様子を、窓の外からじっと見つめる少年がいた。
チャーリーだ。
彼は、新聞少年である。
つまり、家が貧しいということだ。
配達途中にあるワンカのチョコレート工場の門の前にたたずんで、中を眺めるチャーリー。
切ないねえ。
すると、奇妙な刃物研ぎ屋が近付いて来て、「工場の中には、入る者も出る者もいない」と言う。
チャーリーの家には、祖父母が二組、つまり、4人のジジババがいる。
父親はいない。
チャーリーの家では、粗末な食事しか出ない。
チャーリーは、給料で大きなパンを買って来た。
そして、ジジババ達にもお小遣いをあげる。
ジジババの一人、ジョー爺さんがチャーリーにワンカのチョコレート工場の話しをする。
チョコレート工場の主であるウィリー・ワンカ氏は、ライバルの攻勢にウンザリして工場を閉鎖してしまったのだとか。
日にち変わって、学校の授業中。
ワンカ・チョコレートの新作発売のニュースが飛び込んで来た。
世界中で販売される山ほどのチョコレートの中に、たった5枚だけ「金の券」が入っている。
この券を手に入れると、ワンカの工場見学が出来、更に一生分のチョコがもらえるとか。
昔懐かしい森永チョコボールの「金のエンゼル」は、ここからアイディアを拝借したのだろうか。
そう言えば、過日、某深夜番組で、チョコボールの「金のエンゼル」を見付けようとかいう企画があって、全国各地から大量のチョコボールを取り寄せて、片っ端から箱を開けて行ったが、ついぞ発見出来なかったような。
銀のエンゼル」は結構見付かったのだが。
やはり、都市伝説なのか。
ちなみに、僕は生れてこの方、「銀のエンゼル」は一度だけ見たことがあるが、「金」はない。
話しを元に戻す。
「金の券」の企画が当たり、世界中でワンカ・チョコレートの売り切れが続出する。
(なお、世界各地の販売風景で、日本もチラッと映る)。
最初の「金の券」がドイツで見付かる。
見付けたのは、丸々と太った金持ちの少年。
ドイツなのに、何故か英語を話しているが。
チャーリーは貧乏なので、先日あげたお小遣いでジョー爺さんが1枚だけチョコを買ってくれたが、もちろん「金の券」は入っていない。
イギリスでは、金持ちの我がまま娘が、パパに無理を言って大量のワンカ・チョコを買い占め、工場で何百人もの女性従業員を使って片っ端から「金の券」を探させています。
そして、ついに発見!
本作の隠れたテーマは、「階級闘争」なのである!
実に素晴らしい!
万国のプロレタリアよ、団結せよ!
いかん、また興奮してしまった。
狂ったフィーバーの陰で、世界中でチョコが捨てられている。
かつての「ビックリマン・チョコ」を思い出した。
またまた日本のお店が映るが、何故か「賣り切れ」と旧字体で書かれている。
これまでに「金の券」を見付けたのは、金持ちばかりだ。
そりゃそうだろう。
許し難い話しである。
チャーリーのママは、クリーニング屋で働いている。
未だ見付かっていない「金の券」は、とうとう最後の1枚になった。
チャーリーの家はボロ屋である。
イギリスでは、ワンカ・チョコレートの最後のひと箱を巡って競売まで行なわれた。
誘拐犯が身代金の代わりにワンカのチョコレートを要求するという事件まで起こった。
カネにまみれた世界と、チャーリーの住むプロレタリアの現実が交互に描かれる。
そして、ついに最後の1枚が南米で見付かった。
チャーリーは、家の白黒テレビのニュースでそのことを知った。
彼のはかない夢はついえた。
やはり、貧乏人には運命の女神は微笑まないのか。
切ない。
日にちが変わって、チャーリーは学校の前の下水溝でおカネを拾う。
彼は、お菓子屋に入り、そのおカネでワンカ・チョコを買った。
拾ったおカネを使うのはいけないことだよ。
僕は昔、『ドラえもん』に「拾ったおカネを勝手に自分のものにすると、拾得物横領罪という罪になるんだよ」と書いてあったのを覚えている。
プロレタリアの鑑たるべきチャーリー少年が、そんな悪事に手を染めていいのか。
ここが、本作の弱点である。
チャーリーは、ジョー爺さんのためにもチョコを買う。
お爺ちゃんと仲良しなのだ。
店を出ると、先に南米で見付かった5枚目の券はニセモノだったというニュースで人々が沸いていた。
チャーリーは、お爺ちゃんのために買ったチョコを恐る恐る開けてみる。
すると、あった!
金の券だ!
信じられん!
プロレタリアート万歳!
狂喜乱舞しているチャーリーの元へ、怪しい風貌をしたライバル社の社長と称する人物が近寄って来る。
「ワンカの工場に行って、『とけないキャンディ』を盗んで来たら、1万ドル上げるよ」と耳打ち。
さあ、チャーリー君よ、どうする?
さて、当選した5人の少年少女は、家族一人を同伴してワンカの工場に来るように、とのことだった。
チャーリーの家では、20年間寝たきりだったジョー爺さんが起き上がるという奇跡が起きる。
博士の異常な愛情』のラストみたいだ。
いよいよワンカの工場の門が開かれる日、世界中から取材陣が集まった。
扉が開き、タキシードを着たワンカ氏(ジーン・ワイルダー)が杖をついて現れる。
足が不自由なのか。
と思ったら、杖を外してでんぐり返り。
何か、胡散臭いオッサンだな。
さあ、5組の家族がワンカ氏に続いて工場に入った。
この後、どうなるのか。
ここまでが前半なのだが、後半はガラッと雰囲気が変わる。
工場見学の様子は、ちょっと『注文の多い料理店』を思わせる。
それに、『不思議の国のアリス』を混ぜた感じ。
要するに、夢の国かと思ったら、不穏な空気が濃厚に漂っているのだ。
まあ、でもラストはハッピー・エンドなんだけどね。
如何にも、昔の少年向けの映画という感じの作りである。
今ならCGで何でも描けるが、当時の技術でこういうファンタジーを作るのは大変だったことだろう。
そうそう、チョコレート工場で登場するウンパルンパの歌は、ダークダックスのようだった。