『お熱いのがお好き』

この週末は、ブルーレイで『お熱いのがお好き』を見た。

1959年のアメリカ映画。
監督は、『サンセット大通り』『麗しのサブリナ』『七年目の浮気』『アパートの鍵貸します』のビリー・ワイルダー
脚本は、『アパートの鍵貸します』のI・A・L・ダイアモンド
音楽は、『アパートの鍵貸します』のアドルフ・ドイチュ。
撮影は、『幽霊と未亡人』『麗しのサブリナ』『荒野の七人』『西部開拓史』『シャレード』のチャールズ・ラング。
主演は、『イヴの総て』『七年目の浮気』のマリリン・モンロー、『スパルタカス』のトニー・カーティス、『アパートの鍵貸します』『チャイナ・シンドローム』『ハムレット(1996)』のジャック・レモン
共演は、『007 カジノロワイヤル』のジョージ・ラフト
ユナイテッド・アーティスツ
モノクロ、ワイド。
陽気なテーマ曲。
画質は良い。
夜の街。
霊柩車が走る。
運転しているのはギャング。
警察が追って来る。
銃撃戦。
実は、棺の中に酒が隠されているのであった。
舞台は1929年のシカゴ。
要するに、禁酒法の時代だ。
葬儀場に棺が運び込まれる。
警察が静かに包囲する。
この葬儀場の奥は、非合法の酒場になっていた。
客はコーヒー・カップで酒を飲んでいる。
脚を露出した女性達が踊っている。
演奏するバンドの中に、サックス奏者のジョー(トニー・カーティス)とベース奏者のジェリー(ジャック・レモン)がいる。
二人ともカネがない。
ジョーは借金してドッグ・レースに賭けるなどと話している。
そこへ警察が突入。
「全員逮捕だ!」
警察は、木製のドアを斧で蹴破ってモグリ酒場へ入って来る。
『シャイニング』か。
ジョーとジェリーは2階の窓から逃げる。
ジェリーは「これで借金返済がパアだ」と嘆く。
二人はコートを質に入れる。
季節は12月だ。
途端に吹雪に見舞われる。
二人は必死で仕事を探すが、見付からない。
とある事務所に入ると、ジョーにデートの約束をすっぽかされた女性が怒っている。
そこへ、フロリダで3週間の仕事があるという一報が。
しかし、それは女性だけの楽団でベースとサックスを募集しているというものだった。
「女装すればいい」と二人は思い立ち、ジョーが先程の女性を言いくるめて、車を貸してもらうことに。
車庫に行ってみると、そこはギャングのアジト。
二人が元働いていた酒場の持ち主スパッツ・コロンボジョージ・ラフト)らが、もぐり営業を密告したチャーリーらに機関銃を浴びせているところであった。
必死に隠れるも、スパッツに見付かる二人。
逃げる。
二人は、コロンボ一味に命を狙われる身となってしまった。
飛び込んだタバコ屋で、ジョーは女のフリをして件の楽団に電話をする。
女装した二人は、シカゴの駅からマイアミ行きの列車に。
駅のホームには、モンロー・ウォークをする色っぽい女性が。
思わず目を奪われる二人。
ジョーはジョセフィン、ジェリーはダフネと名乗り、まんまと女性楽団の寝台車に乗り込む。
まあ、こんな家政夫のミタゾノみたいなのが二人で歩いていたら、どう見てもすぐに男だと分かるが。
そこはコメディーなので、ご愛嬌。
乗車の際、マネージャーが尻を触る。
今なら、セクハラだとツイッターで拡散されて、炎上騒ぎになるだろう。
二人は、音大出身だと自己紹介。
身だしなみを整えるために、女子のお手洗いに入ると、そこで先程のモンロー・ウォークの女性が酒を飲んでいた。
彼女はシュガー・ケーン・コワルチェック(マリリン・モンロー)といって、ポーランド系の移民の娘だった。
車内で演奏すると、ジョセフィンのサックスが浮いている。
どうやら音大出というのはウソのようだ。
シュガーはウクレレを弾きながら歌う。
正直なところ、マリリン・モンローの歌はそんなにうまくないと思う。
ダフネのベースには銃痕が開いている。
ウクレレを弾きながら、シュガーは酒の瓶を落としてしまう。
問い詰められるシュガー。
とっさにダフネが「私のよ」と庇う。
ジョセフィンとジェリーは、マネージャーから怪しまれる。
シュガーがダフネの寝台にお礼を言いに来る。
「しばらく隠れさせて。」
こんなカネのなさそうな楽団なのに、一等寝台車か。
アメリカの鉄道はどうか知らんが、これは日本ならA寝台だ。
ダフネの寝台は上段。
ダフネは下段のジョセフィンのカバンの中に手を伸ばし、隠してあった酒瓶を取り出す。
シュガーとダフネは秘かに乾杯するが、あっと言う間に他の団員達にもバレて、パーティー状態になる。
表では法律で酒を禁止しても、実態はこんなもんである。
嗜好品を禁止するなんて無理がある。
現在では、世界的にタバコが禁止の流れにあるが。
禁酒法と同じ轍を踏まないだろうか。
お手洗いで氷を割っているシュガーから、ジョセフィンは失恋話しを聞かされる。
シュガーは過去に6回もサックス奏者に恋をしては破れた。
彼女は、成金と結婚したいと言う。
一目見た時から彼女に魅かれていたジョセフィンだったが、女装している身では告白も出来ない。
一方、パーティー状態の寝台では、ダフネが間違って非常ブレーキを引いてしまう。
緊急停止する列車。
当時は、こんな手近に非常ブレーキが付いていたのか。
まあ、寝台車だから、火災なんかが頻繁にあったのかも知れない。
フロリダに着いた。
ホテルに着くや否や、一人のじいさんがダフネに言い寄って来た。
彼は、オズグッド3世(ジョー・E・ブラウン)という大富豪だった。
ジョセフィンの方は、ホテルのボーイから言い寄られる。
もちろん、二人とも相手にしない。
ダフネとマリリンは浜へ泳ぎに行った。
当時の女性は、ビキニじゃなくてつなぎの大きな水着だから、男でもバレないんだな。
その間に、マネージャーのカバンを盗んでおいたジョセフィンは、男性として登場。
彼はメガネを掛けて、経済新聞を読んでいる。
ビーチ・バレーをしていたシュガーが、ボールを追い掛けて、彼の前にやって来る。
ダフネとシュガーが部屋へ戻ると、先回りしたジョセフィンが風呂に入っている。
この辺は、コメディーならではの面白さで、文章で書いても伝わらないだろうが。
ジョセフィンはシュガーに、自分はシェル石油の御曹司で「ジュニア」と名乗る。
憧れの大金持ちと知り合えたと、シュガーはすっかりその気になっている。
彼女が帰った後、ジョセフィンとダフネは大ゲンカ。
「彼女の気持ちをもてあそぶな!」
そこへ、例のオズグッド3世が部屋に電話をして来た。
ダフネに「今夜、私のヨットで食事をしないか?」
それぞれの恋の行方や如何に。
まあ、荒唐無稽な話しだけど、それなりに面白く仕上がっている。
ラストは、ちゃんとオチが付いていて、映画史上の名セリフにも選ばれている。
単なるドタバタではなく、うまくまとめたのは、さすがビリー・ワイルダーと言えるか。
僕はマリリン・モンローのファンでも何でもないけど、なかなか楽しめた。
まあ、映画史上の大傑作とまでは思わないけどね。
トニー・カーティスは男前だけど、ジャック・レモンは三枚目役がとにかくうまいね。
マリリン・モンローは裸みたいな衣装で、スタイルがいいと言うより、ムチムチしている。
当時は、これがセックス・シンボルだったのだろう。
アカデミー賞衣装デザイン賞(白黒部門)受賞。