『レッズ』

この連休は、ブルーレイで『レッズ』を見た。

レッズ [Blu-ray]

レッズ [Blu-ray]

「レッズ」と言っても、どうでもいいサッカーなんぞとは何の関係もない。
「Reds」とは、「共産主義者」のことである。
1981年のアメリカ映画。
製作・監督・脚本・主演は、『俺たちに明日はない』に出演したウォーレン・ベイテイ。
彼の渾身の力作である。
共演は、『ゴッドファーザー』『アニー・ホール』のダイアン・キートン、『イージー・ライダー』『チャイナタウン』『カッコーの巣の上で』『シャイニング』のジャック・ニコルソン、『大空港』のモーリン・ステイプルトン、『俺たちに明日はない』『フレンチ・コネクション』『ポセイドン・アドベンチャー』『スケアクロウ』『カンバセーション…盗聴…』『ヤング・フランケンシュタイン』『遠すぎた橋』『スーパーマン』のジーン・ハックマン、『卒業』のウィリアム・ダニエルズ、『新・猿の惑星』『セルピコ』のM・エメット・ウォルシュ。
撮影は、『ラストタンゴ・イン・パリ』『地獄の黙示録』のヴィットリオ・ストラーロ
コミカルなテーマ音楽。
多数の爺さん、婆さんのインタビューから始まる。
本作は、1917年に起きたロシア革命と、それを記録したアメリカ人ジャーナリスト、ジョン・リード(ウォーレン・ベイテイ)の半生を描いた作品である。
当時の状況や、彼のことを知る人達へのインタビューをはさむことによって、作品にドキュメンタリー的な味を持たせている。
前半では、女性解放運動の闘士であるルイーズ・ブライアント(ダイアン・キートン)との出会いを主軸にしている。
ジョン・リードは、ハーバード大学を卒業後、ジャーナリストの道に入った。
彼は、第一次大戦の最中、ヨーロッパで火の手が上がった国際労働者同盟の闘争に接して、初めて政治運動に目覚める。
彼は、第一次大戦へのアメリカの参戦には、断固反対の立場であった。
1915年のアメリカ、ポートランド
ルイーズ・フレッチャーは、取材でジョン・リードと知り合う。
ジョンは、彼女に対して、朝まで猛烈な早口でまくし立てる。
まるで、全共闘の演説のようだ。
ルイーズは、人妻であることを彼に隠していたが、同じ日に、偶然別の場所で再会する。
二人はすぐに恋に落ちる。
ルイーズは離婚し、二人はニューヨークへ。
彼らは、お互いの立場を尊重し合うという合意の下、一緒に暮らすことにした。
ジョンは「労働者の団結」を説いた。
彼には、アナーキストで女権主義者のエマ・ゴールドマン(モーリン・ステイプルトン)等の友人がいて、日夜、彼らと革命談義を繰り広げていた。
ジョンは、とにかく労働者を組織化すべきだと説く。
そこへ、警察が登場。
思想の自由はない。
スゴイ時代だ。
僕には耐えられない。
ジーン・ハックマン演じる編集者は、中立(反共)の立場を説く。
ジョンは、劇作家の劇作家のユージン・オニールジャック・ニコルソン)とも友人であった。
ジョンが多くの友人達に囲まれているのを見て、ルイーズは「あなたの引き立て役はイヤ!」と感情を爆発させ、大ゲンカになる。
ダイアン・キートンは、気の強い女が似合うねえ。
二人は、ニューヨークを出て、小さな漁村に引っ越す。
ジョンは社会党(当時のアメリカには、未だこんなものがあったのか)の党大会に出席するため、長期に渡って自宅を留守にする。
彼の留守中に、ユージン・オニールがやって来て、ルイーズを口説く。
で、二人は付き合うことに。
何じゃ、そりゃ。
ジョンとルイーズは、自由恋愛を標榜していた。
それにしてもねえ。
しかし、急転直下、1916年にジョンとルイーズは結婚する。
ユージン・オニールが再びルイーズを訪ねて来るが、結婚したと聞いて、諦める。
1917年、ロシア革命が勃発した。
更に、アメリカがドイツに参戦する。
ジョンは「戦争反対」を叫んで、逮捕される。
現在、日本でも安倍政権の下、「戦争反対」を唱えただけで逮捕・投獄されるような時代が、すぐそこまで来ている。
留置所で、ジョンは血尿が出る。
「ションベンまでアカかよ!」と周りの奴らに揶揄される(ヒドイ話しだ!)。
医者には「自宅で療養するように」と言われるが、その身体でジョンは社会党の党大会に出席する。
家に帰り、彼は、ユージン・オニールからルイーズへのラブレターが本の間に挟まれているのを発見。
それをきっかけに、大ゲンカになる。
ルイーズは家を出て、フランスのパリへ行ってしまう。
二人はケンカばかりだが、これが後半の重要な伏線となるのである。
ジョンは入院し、腎臓を片方摘出した。
パリのルイーズとは手紙のやり取りをしていた。
彼女は「元気にしている」と書いていたが、人づてに、実は仕事をクビになっていると聞かされる。
ジョンは、ルイーズを訪ねにフランスへ行く。
彼は、とうとう革命勃発直後のロシア・ペトログラードへ向かうことにした。
ロシア全土を揺り動かしている労働革命を、ジャーナリストとして、社会主義運動家として、何としても自分自身の目で確認しなければならなかったのだ。
スゴイ行動力である。
今のように、飛行機で誰でも簡単に行ける時代ではない。
相当の覚悟がなければ、出来ないことだ。
最初は渋っていたルイーズも、結局は付いて来る。
この作品の前半は、ジョンとルイーズの恋愛模様(それも、かなり変わった)ばかり描いているように見えるが、二人の固い絆が、実は後半になって生きて来る。
ジョンは、ロシアへ向かう列車の中でロシア語の勉強をする。
最初は3等車だったのだが、何故か、途中からコンパートメントに移っている。
列車はロシア国境の駅に停まった。
ホームには、負傷した多数のボリシェビキの群れ。
いきなり、この先の困難な道のりを予感させる。
革命真っ最中のペトログラードでは、パンと靴の配給に多数の労働者が列を作っていた。
ジョンは、「You speak English?」と尋ねて回る。
ようやく、英語を話せる人を見付けた。
彼によると、ロシア戦線の兵士がストを打って退却したという。
労働者の集会に参加したジョンは、アメリカの労働運動について熱弁を振るう。
反戦!」「革命万歳!!」
『インターナショナル』の大合唱。

日本でも、『君が代』を止めて、『インターナショナル』を国家にすれば良いのに。
労働者が街を行進する。
その勢いに、走っていた市電も停まる。
革命の熱気と興奮に、ケンカ状態が続いていたジョンとルイーズも、いつの間にか仲直りしていた。
ロシア革命の指導者はレーニンである。
役者のハゲ具合が本物そっくり。
最高潮に盛り上がったところで、「INTERMISSION」。
後半は、実にドラマチックである。
素晴らしい!
過酷な運命に翻弄されながらも、革命への熱意を貫き通すジョン。
現実の荒波。
硬直したロシアの執行部。
ルイーズとも離れ離れに。
これ以上は書かないけれども。
ウォーレン・ベイテイが、巨費を投じて、ジョン・リードの半生を描きたかった理由が画面を越えて、ひしひしとこちらに伝わって来る。
今こそ日本でも、天皇制を廃止して、プロレタリア独裁政権を樹立すべきだ!
本作は、『アラビアのロレンス』や『ドクトル・ジバゴ』を越える映画史上の名作である。
もっと語られるべき作品だ。
共産主義を描いた作品だから、歴史から抹消されてしまったのだろうか。
アカデミー賞も、12部門でノミネートされたにもかかわらず、3部門しか獲れなかった。
ハリウッドの自主規制か。
それとも、この作品がノミネートされただけでも、ハリウッドの良識と見なせるだろうか。
アカデミー賞監督賞助演女優賞、撮影賞受賞。