『ガンジー』

この週末は、ブルーレイで『ガンジー』を見た。

ガンジー [Blu-ray]

ガンジー [Blu-ray]

1982年のイギリス・インド合作映画。
監督は、『遠すぎた橋』のリチャード・アッテンボロー
彼は、役者として『ジュラシック・パーク』や『ハムレット』(1996)にも出ている。
主演はベン・キングズレー
彼はイギリス人だが、父親がインド人である。
ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの出身。
イギリスの偉い俳優は、みんなシェイクスピア役者だ。
彼が演じた『十二夜』(トレヴァー・ナン監督)のフェステは素晴らしかった。
スピーシーズ 種の起源』なんてインチキなお色気SFホラー映画にも出ていて、ビックリした。
と言いつつも、実は、この映画を結構好きなのだが。
ナターシャ・ヘンストリッジの肉食系ポルノ女優みたいなモンスターがたまらなかったね。
ベン・キングズレーは、『シンドラーのリスト』にも出ていたようだ。
映画館で観たけど、全然覚えていない。
共演は、『2010年』のキャンディス・バーゲン、『空軍大戦略』『遠すぎた橋』『ナバロンの嵐』のエドワード・フォックス、『オリエント急行殺人事件』『エレファント・マン』『ハムレット(1996)』『リチャードを探して』のジョン・ギールグッド、『第三の男』『空軍大戦略』『スーパーマン』のトレヴァー・ハワード、『ハムレット(1996)』のジョン・ミルズ、『カサンドラ・クロス』『地獄の黙示録』のマーティン・シーン等。
アカデミー賞を8部門受賞している。
これは当時、『ベン・ハー』に次ぐ記録だったとか。
如何にもアカデミー賞が好きそうな大作である。
僕が子供の頃から、レンタル屋(当時はビデオ)に行くと、大体『ベン・ハー』とか『アラビアのロレンス』の隣に、いかめしく2本組みで並んでいた。
僕が本作を見るのは、多分3回目だと思う。
もしかしたら、子供の頃にTVの放映で見たことがあるかも知れないが、覚えていない。
1948年1月30日のインド・ニューデリーから始まる。
群衆の中に紛れていたヒンズー極右派に突然射殺されるガンジーベン・キングズレー)。
死ぬところから始まるのは、『アラビアのロレンス』みたいだ。
ガンジーの葬式には、ものすごい数の人が集まった。
このシーンの撮影のために、40万人ものエキストラが集められたらしい。
これは、映画史上の記録だとか。
僕が学生の頃、映画館でバイトしていた時の先輩が、「『ガンジー』の葬式のシーンはスゴイ! 地平線の果てまでエキストラで埋まっている」と言っていた。
確かに、地平線の果てまで群衆で埋まっている。
映るのは、ほんの一瞬だが。
この一瞬のために、40万人が動員されたのだ。
何と贅沢な撮影だろう。
一瞬とは言っても、ガンジーが如何に国民から愛されていたかを示す重要なシーンである。
今なら、もちろんCGだろうな。
映画が詰まらなくなる訳だよ。
ここから、青年時代のガンジーへと時間が戻る。
1893年南アフリカ
インド人の弁護士であるガンジーが1等車に乗っていたため、3等車に移れと言われる。
ヒドイ人種差別だ。
北陸新幹線のグラン・クラスから普通車に移されるようなものだろう。
まあ、我が家はカネがないので、最初から普通車だったが。
当然、ガンジーが拒否すると、途中の駅で放り出されてしまった。
差別と闘おうという意識が彼の中に芽生える。
彼は、インド人移民に呼び掛け、身分証明書を燃やす。
警察は、ガンジーの仲間を逮捕し、彼自身にも殴る蹴るの暴行を加える。
彼は、牧師アンドリューズ(イアン・チャールソン)に「キリスト教の精神を、皆が共有するべきだ」と話す。
アンドリューズと、『ニューヨーク・タイムズ』の記者ウォーカー(マーティン・シーン)はガンジーの味方だった。
とは言え、インドにも階級(カースト)がある。
ガンジーは、インド人向け新法の反対集会を開く。
この頃から、既に彼は暴力を用いずに闘う「非暴力不服従」を信条としていた。
移民達はデモ行進を繰り広げる。
そこへ馬に乗った警官隊がやって来る。
「伏せろ! 馬は人間を踏み付けない!」
伏せる人々。
馬が人間を乗り越えられないので、警官隊は去った。
我々は勝利した!
今こそ、安倍政権粉砕のために立ち上がろう!
ガンジーは、騒動を引き起こしたとして投獄される。
しかし、釈放。
1915年、インドのボンベイに戻ったガンジーは、英雄として大歓迎される。
当時、インドの指導的立場にある人々は、イギリスからの独立を願っており、その中には、後に首相となるネール(ロシャン・セス)もいた。
ガンジーは、イギリス支配下にある祖国をつぶさに見て歩く。
ここから、本作ではインドの風景が都会から郊外、地方、山村と映し出される。
この景色が非常に美しい。
これは大画面で見たかった。
インドの家々が古く、ボロく、人々は本当に貧しい。
川遊びをする裸の子供達。
これは、今の日本では児童ポルノに当たるだろう。
列車の屋根の上にまで多数の人が乗っている。
まるで、終戦直後の買い出し列車みたいだ。
第一次大戦が終わった。
ガンジーのことは新聞にも取り上げられた。
彼には派手さはない。
演説も下手であった。
ヒトラーとは大分違う。
でも、貧しい村に自ら赴き、人々の話しを聞く。
チャンバランという寒村では、英国人の地主が地代を上げ、村民達は最早生きて行けないという状況に陥っていた。
ガンジー小作人の権利を守るために地主と闘い、逮捕される。
我々も、憲法違反の安保法案を破棄するため、断固闘おう!
ガンジーの逮捕を受け、民衆の間には暴動が起きた。
彼の裁判には、多くの人々が集まった。
ガンジーは逮捕されたが、今や「マハトマ(偉大なる魂)」と呼ばれ、全国民の精神的支柱となった彼を裁判にかけることは不可能であった。
結局、彼は保釈される。
人々の間に、ガンジー・コールが沸き起こった。
かつて民主党代表選挙の新宿での立会演説会で、聴衆の間に「オザワ・コール」が沸き起こったのを思い出した。
僕はその時、現場にいた。
一方、対立候補の菅には「帰れコール」が。
だが、マスコミはそれを一切報じなかった。
「オザワ・コール」は、意図的にカットして報道された。
あの時、小沢一郎先生が総理大臣になっていたら、間違いなく日本の歴史は変わっていただろう。
さて、イギリスは、インドの言論、思想、集会の自由を抑圧する法律を作った。
新たに作られた法律は、治安崩壊については令状ナシで逮捕出来るというものであった。
まるで、ナチスか安倍政権のような強権発動である。
断じて許せない!
ガンジーは法律発布の日を全国民の祈りと断食の日とし、全国でストライキを呼びかけた。
その結果、彼は、また逮捕されてしまう。
本当に逮捕ばかりだな。
国家権力の執拗な弾圧。
正に、現代日本の安倍政治と同じだ。
インドの各地で暴動が起きた。
日本では、何故暴動が起きないのか?
いよいよ軍隊が乗り出す。
日本でも、人民が立ち上がれば、軍隊が乗り出すだろう。
正に恐怖政治!
ガンジーは、それでも「非暴力」を説いた。
だが、彼の願いも虚しく、イギリスのダイヤー将軍(エドワード・フォックス)率いる軍隊が、アムリツァールの公園で集会中の群衆に発砲し、1516人の死傷者を出すという大虐殺事件が起こった。
丸腰で無抵抗な一般大衆を、老人や女・子供まで含めて無差別に、片っ端から銃を乱射し、殺害していく、このシーンは、無残で、正視に絶えない。
日本でも、安倍政治を放置しておくと、必ずこのような事態が起きる。
今こそ安倍政権を打倒しよう!
ここで「INTERMISSION」。
ガンジーは、いよいよ悟りを開いたかのようになる。
外国の支配は侮辱である。
たとえ未熟でも自分の国を持ちたい、というガンジーの訴えは、多くのインド人の心に響いた。
ただ、一つ突っ込むと、それでも彼らは英語を話しているのである。
これはハリウッド映画の限界だろうか。
いや、それだけではないだろう。
植民地支配というのは、自分達の言語を奪ってしまうのである。
今、日本でも、「英語を公用語にしよう」等と叫ぶ基地外がいるが、奴らは、日本を鬼畜米英の植民地にしたいのだろうか。
それはさておき、いよいよインド国内で、ヒンズー教徒とイスラム教徒の対立が激しくなる。
結果的に、これが悲劇を生むのだが。
植民地支配から脱しても、宗教対立は如何ともし難い。
今、世界中に宗教対立がある。
どうにかならないものか。
宗教なんて、所詮人間が作ったものなんだけどねえ。
ガンジーは、イギリス製の衣服を焼く。
イギリスの独占事業だった製塩を自分達で始める。
この無言の抵抗。
日本の某巨大宗教団体は「ガンジー・キング・○ケダ展」なんていう厚顔無恥な見世物をあちこちで開いている。
もう、呆れるしかない。
戦争法案の成立を強引に推し進めた教団のトップを、ガンジーと並べるなんて。
ふざけるな!
いい加減にしろ!
この教団の機関紙『S教新聞』には、「安保法案」のことを「平和安全法案」と書いてあったぞ。
国民の大多数が「憲法違反」だと思っている法案を、よくもまあ、モノは言いようというか。
軍部に反発して投獄された初代・二代会長が泣いているぞ。
多分、I田D作先生はもうご存命ではないんだろう。
でなきゃ、意識不明の重体か。
生きてりゃ、もう少し肛迷党に平和アピールをさせるだろう。
これじゃあ、痔民の単なる補完勢力じゃないか。
いかん、どんどん話しが逸れてしまう。
ガンジー』は、確かに映画史上に残る作品だ。
題材もスケールの大きさも、非の打ちどころがない。
ただ、ガンジーが立派過ぎて、映画の主人公としては面白みに欠ける部分もある。
まあ、それは言わない約束なのかも知れないが。
アカデミー賞作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞、撮影賞、美術監督・装置賞、衣装デザイン賞、編集賞受賞。