『最後の猿の惑星』

この週末は、ブルーレイで『最後の猿の惑星』を見た。

1973年のアメリカ映画。
監督は、『ナバロンの要塞』『猿の惑星・征服』のJ・リー・トンプソン
主演は、本シリーズの常連であるロディ・マクドウォール
共演は、『オーメン2/ダミアン』のリュー・エアーズ。
天地創造』『カジノロワイヤル』『チャイナタウン』等にも出演した、あの監督のジョン・ヒューストンもサルのメイクを施して出ている。
音楽は、『続・猿の惑星』『バリー・リンドン』のレナード・ローゼンマン
撮影は、『アンドロメダ…』『ソイレント・グリーン』『キングコング(1976)』『スタートレック』のリチャード・H・クライン。
猿の惑星」シリーズ第5作(最終作)。
僕が本作を見るのは、多分3回目だと思う。
前回は、大人になってからDVDで見たが、内容はかなり忘れていた。
前の4作は覚えているんだが…。
本作は、どうも全体的に、TVシリーズのように安っぽい。
2670年の北アメリカから始まる。
ジョン・ヒューストン演じるオランウータンの立法者が、「In the beginning」で始まるサルの聖書を読んでいる。
これまでのシリーズのダイジェスト。
これが長い。
シリーズの5作目なんて、わざわざ見るヤツは、前のものも見ているだろうから、こんなに長いダイジェストは必要ないと思う。
ただでさえ短い上映時間(86分)が、これでかなり削られる。
サルの救世主はシーザー(ロディ・マクドウォール)。
第1作では、一番偉いサルはオランウータンで、石像も立っていたのだが、いつの間にか、これがチンパンジーに変わってしまっている。
ジョン・ヒューストンの朗読は良い。
20世紀末に勃発したサルと人間の抗争は、ついに核戦争にまで発展した(らしい)。
どうして、サルと人間の抗争が、核戦争にまで発展するのかは説明されない。
前作(『猿の惑星・征服』)では、未だ言葉を話すことも出来ず、原始的な武器(しかも人間から奪った)しか持たないサル達を倒すのに、どうして核兵器が必要なのか。
まあ、いいや。
大激戦の後、緑の町でサルと人間は共存している。
「町」と言っても、山奥のキャンプ場レベルだが。
人間は、既に一部奴隷化していて、肉体労働を担っている。
この世界では、軍人であるゴリラが威張っている(これは、1作目からそうだった)。
前作では、シーザーしか言葉を話せるサルはいなかったが、本作では、どのサルもしゃべっている。
前作から12年しか経っていない設定なのだが、いつの間に話せるようになったのだろう。
こんな短期間で言葉を覚えるのなら、動物園のチンパンジーだって、既に話せそうなものなのに。
英会話学校の宣伝文句じゃないが、日本人は12年も英語を習っているのに話せないんだよ。
(もちろん、英会話学校の肩を持っているのではない。)
まあ、最後のは余談。
この世界では、人間も未だ言葉を話せる。
第1作目に出て来た人間は、言葉を話せなかった。
第2作目では、ノバ(例の英会話スクールの名前の由来)が、ヘレン・ケラーのように、初めて言葉を発する。
人間は、一体いつ言葉を失ってしまうのか。
本作は、シリーズ完結編なのに、矛盾だらけなのである。
だから、内容を覚えられないのだろう。
サルの学校がある。
ここで教えているのは人間だ。
「shall」を使った例文を教えている。
この世界では、人間はサルに「ノー」と言ってはいけない
日本がアメリカに「ノー」と言ってはいけないようなものだな。
本作には、前作に出て来たキャラクターの多くが引き続き出て来る。
チンパンジーのリサは、シーザーと結婚して、子供がいる。
やはり前作では話せなかったリサが、既に流暢に英語を話している。
前作でシーザーに協力的だった黒人マクドナルドも登場する。
都市は核爆弾で消滅していた。
だが、両親の言葉を記録したビデオ・テープが残っているかも知れないと聞かされたシーザーは、マクドナルド、オランウータンの哲学者ヴァージルと共に、それを探しに廃墟となった都市へ向かう。
ようやく言葉を話せるようになったばかりのサルに、もう哲学者がいるというのも不思議だが。
で、この哲学者が「パラレル・ワールド」について説明する。
ネタバレだが、ラストへの伏線(と言うより、言い訳)だ。
かつての都市の光景はマット・アート。
都市の地下には、核攻撃でミュータント化した人間が住んでいる。
放射能人間」だって。
「異常者」とまで呼んでいる。
何て差別的な!
広島や長崎で被爆した方々は、「ミュータント」だと言うのか。
僕は父が広島出身で、直接被曝はしていないものの、トイレの窓からキノコ雲を見たらしいので、白人によるこういった偏見は断じて許せない。
日本では、映画『ノストラダムスの大予言』のソフト化が封印されたり、『ウルトラセブン』の12話が永久欠番になっていたりするんだ。
安保反対!
それはさておき、この地下都市は電気が使える。
核戦争でメチャクチャになった都市に、12年間もどうやって電気が供給されたんだろう。
原発でも動いていたのか。
僕は原発にも断固反対である。
川内原発再稼働を許すな!
安倍政権粉砕!
いかん、また興奮してしまった。
で、シーザーの両親が写ったビデオ・テープが発見され、核兵器で荒廃した都市なのに、何故か再生可能であった。
そこに、前述の哲学者が、無理矢理「未来は変えられる」という話しをする。
まあ、シリーズ全体の辻褄を合わせようとするあまり、かなり無茶をしているが。
この地下都市は、第2作につなげるためだろう。
シーザー達は、地下都市の人間に発見され、命からがら逃れる。
地下都市の人間は、放射能の影響で好戦的になっており(!)、一旦終わった話しを蒸し返す。
「サルどもを全滅させろ!」
12年間もお互いの存在すら知らずに平和に暮らしていたんだから、放っておけばいいじゃないか。
しかし、それでは話しが進まないので。
この後、ミュータントとサル(主に好戦的なゴリラ軍団)の最終戦争になる。
これが、予算の関係だろうが、しょぼい最終戦争なんだ。
局地的な紛争にしか見えない。
このレベルなら、韓国と北朝鮮に間には、板門店で毎日起こっているだろう。
同じ家が燃えるのを、角度を変えて何度も映す。
メイキングでは、「こうすれば何軒もの家が燃えているように見える」と解説していたが、いや、1軒にしか見えない。
そして、シーザーのピンチ。
「シーザーにはブルータスがいるんだ」と迫られる。
さあ、これからどうなる?
ラストはご都合。
第1作目は映画史上に残る傑作で、2作目で地球が消滅したのに、無理矢理現代に話しを戻し、大風呂敷を広げてシリーズ化した完結編がこれか…。
やはり、続編に名作はないのであった。