『続・激突!/カージャック』

この週末は、ブルーレイで『続・激突!/カージャック』を見た。

1974年のアメリカ映画。
『続・激突』とうたっているが、『激突!』とは何の関係もない。
監督は、『激突!』『ジョーズ』『未知との遭遇』のスティーヴン・スピルバーグ
スピルバーグ初の劇場映画である。
アメリカン・ニュー・シネマの匂いがする。
製作は、『ジョーズ』のデイヴィッド・ブラウンとリチャード・D・ザナック
主演は、ゴールディ・ホーンウィリアム・アザートン、マイケル・サックス。
共演は、『ワイルドバンチ』『ゲッタウェイ』『大列車強盗』のベン・ジョンソン
音楽は、『屋根の上のバイオリン弾き』『ポセイドン・アドベンチャー』『タワーリング・インフェルノ』『大地震』『ジョーズ』『未知との遭遇』『スーパーマン』の巨匠ジョン・ウィリアムズ
撮影は、『脱出』『スケアクロウ』『未知との遭遇』『ディア・ハンター』『天国の門』のヴィルモス・スィグモンド
ダダッ広い野原の真ん中の一本道を走るバスのロング・ショットから始まる。
停まって、降りて来る若い女性ルー・ジーン(ゴールディ・ホーン)。
カントリー風のテーマ曲が流れる。
彼女はテキサス州囚人更生所へ。
ここに入れられている夫クロヴィス(ウィリアム・アザートン)との面会のためである。
クロヴィスと会うと、いきなり彼女は「別れる!」と言い出す。
まあ、旦那がこんな所にいる位だから、この若い夫婦には色々と背景があるのだが、福祉局が「あなた達の息子は里親が育てる」と言って、子供を連れて行ったのだとか。
時代と国が違っても、国家権力の横暴は変わらない。
安倍政権粉砕!
ルー・ジーンは、「子供を取り戻したい!」と泣きながらクロヴィスに訴える。
「手を貸して!」と。
とは言っても、彼はあと4ヵ月、ここに入っていなければならない。
彼女は、なかなかヒステリックな女性で、感情的になると手が付けられない。
里親は、シュガーランドという所にいるらしい。
地理が全く分からないが、この作品の後の展開を見ていると、遠い所のようだ。
突然、男子トイレでラヴ・シーン。
「もう待てない!」と激しくキスをするルー・ジーン。
彼女が服を脱ぐと、下にもう1枚、男物の服がある。
スピルバーグにラヴ・シーンはないわな。
「今日ここを出る!」と、旦那に囚人服から着替えさせる。
そして、まんまと脱走。
二人は、更生所の前に停まっていた老夫婦の車に乗せてもらう。
ところが、これが高速なのに、とんでもないノロノロ運転をする。
なかなかコミカルな展開だ。
後ろからお廻りの車が近付いて来た。
高速でノロノロ運転をするのは違反なのだとか。
国家権力は、こんなどうでもいいことで一般市民を弾圧する。
安倍政権粉砕!
まあ、でも脱走して来たばかりのクロヴィスは、ドキドキもんだわなあ。
ポリ公が近付いて来たので、コイツの車をルー・ジーンが奪い、夫婦で逃走。
あ〜あ、やっちまった。
パトカーが追って来る。
カー・チェイスの始まり。
と思ったら、二人の乗った車は林に突っ込む。
ルー・ジーンは、若い巡査マックスウェル(マイケル・サックス)に助けられるが、その時に彼のピストルを奪う。
お廻りを脅迫して、二人はパトに乗り、彼に運転させる。
コメディー・タッチだが、「息子に会いたい」から始まって、今や大ごとになってしまった。
パトカーのカー・ジャックだよ。
応援のパトカーが集結する。
マスコミも来る。
成り行きでこうなってしまったが、後悔しても、もう後の祇園祭
今度は、坂道でガソリンが切れた。
何故か冷酷なタナー警部(ベン・ジョンソン)の車が後押しする。
そのままガソリン・スタンドへ。
タナー警部は、すぐに逮捕せず、泳がせておく作戦のようだ。
走りながら、盛大な夫婦ゲンカ。
まあ、こういう事件を起こすような夫婦だから、冷静に物事を考えるのは無理なんだろうな。
どうでもいいが、アメリカでは州によって警官の制服が違うんだな。
この映画は、言ってみれば、単に犯人が車で逃げるだけの話しだから、小ネタをいっぱい挟まないと、間が持たない。
ドライブ・スルーに寄ってフライド・チキンを大量に買い込んだ時、ルー・ジーンはトイレに行かなかった。
案の定、尿意を我慢出来なくなる。
すると、タイミング良く、目の前に移動トイレを積んだトレーラーが通り掛かる。
仕方がないので、クロヴィスが「トイレを下ろせ」と脅す。
多数のパトカーが一斉に周囲を取り囲んで見守る。
クロヴィスは、何故かこの時は冴えていて、中に警官が隠れているのではないかと疑う。
予想通り、サツのワナだった。
で、警官を追い出して、妻は用を足した。
一方、里親の家にも、たくさんのマスコミが押し寄せていた。
現代の日本のマスコミを見ていても思うが、こういう時、何の落ち度もない被害者の所に、大量のマスコミが押し掛ける。
大迷惑だな。
ちょっと話しがズレるが、先日も、調布で震度5弱地震があった時、早朝なのにずっとNHKのヘリが上空を飛び回って、うるさくて仕方がなかった。
何とか被害のある場所を見付けたかったのだろう。
テレビでは「被害が見当たりません!」を連呼している。
いいじゃないか、被害がなかったんだから。
それはさておき、全く幼稚な夫婦の逃避行である。
パトカーの台数だけがどんどん増える。
今や200台以上。
解決の糸口も見付からないまま、暗くなって来た。
タナー警部だけは冷静だが、警察の下っ端の奴らも結構ふざけていた。
国家権力も末端はこんなもんだろう。
下らん!
ついに、大量のパトカーの玉突き衝突が起きた。
しかし、ルー・ジーン達はまんまと逃げる。
車がもったいないね。
ちょっと『西部警察』を思い出した。
さあ、これからどうなるだろうか。
中間は、やや間延びしている部分がある。
でも、後半は、前半のコメディー・タッチから一転し、次第に緊迫感を盛り上げて行く。
結末は何とも胸が苦しくなる。
とにかく、この向こう見ずな若夫婦と、里親の老夫婦との階層差がスゴイ。
子供にとっては、どちらで育つのが幸せなのか。
スピルバーグは、その答えは示していないが。
本作の隠れたテーマは「階級闘争」なのである。
プロレタリア万歳!
本作は、実話を基にして作られたらしい。
だから、実際にどうなったかは、最後に明かされる。
まあ、うまくまとめたよね。
主人公が破滅に向かって突き進んで行くというのが、実にアメリカン・ニュー・シネマ的。
若い時のスピルバーグは、やはり才気走っている。