この週末は、ブルーレイで『激突』を見た。
1971年のアメリカ映画。元々はテレビ映画だったものを、日本では劇場公開した(日本公開は1973年)。
原題の「Duel」は「決闘」という意味。
まあ、見れば分かる。
僕が本作を見るのは、多分3度目。
最初に本作を知ったのは、小学生の頃、「ケイブンシャの大百科」シリーズの中に、確かパニック映画を集めたものがあり、それで『バニシング・ポイント』辺りと一緒に紹介されていたからだと思う。
まあ、本作はパニック映画ではないけどね。
監督は、『ジョーズ』『未知との遭遇』のスティーヴン・スピルバーグ(こんな言い方も、余りにも今更過ぎる様な気がするが)。
彼は、本作で才能を認められた。
如何にも、後に『ジョーズ』や『ジュラシック・パーク』を撮りそうな匂いがプンプンと漂って来る映画だ。
主演はデニス・ウィーバー。
元はテレビ映画だが、本ディスクに収録されているのはヴィスタ・サイズ。
車庫を出る車。
車に積んだカメラの目線で。
高速へ。
街から田舎道へ。
何もないハイウェイをひた走る。
車を運転するのは、平凡なセールスマンであるデイヴィッド・マン(デニス・ウィーバー)。
仕事でカリフォルニアへ向かうのであった。
前を走るデカくてノロいタンクローリー。
コイツの車体の汚れ加減がリアルでいい。
排気が煙くてたまらないので、追い抜く。
タンクの運転手の顔は見えない。
スゴイ勢いで抜き返される。
しかし、前をノロノロ走るので、また追い越す。
プーとクラクションを鳴らされる。
まあ、この辺まではよくある日常ののどかな光景。
スタンドでガソリンを入れようとしたら、例のタンクローリーもやって来る。
顔はやはり見えない。
デイヴィットは、自宅に電話をする。
何だか、奥さんとケンカ。
気分の悪いまま、車を発進させる。
また、タンクローリーが追って来る。
ピッタリと後ろにくっ付いて。
先へ行かせてもピッタリと張り付き、黒い煙を吹く。
よく言われることだが、運転手の顔が見えないので、タンクローリー自体が生き物のよう。
ディヴィットは、追い越し車線で抜こうとしたら、妨害される。
彼には時間がない。
イライラするが、前のタンクローリーは追い抜けない。
回り道して抜き去る。
やった!
と思ったら、猛スピードで追い付いて来た。
対向車も来る。
大して広くない道であわや衝突の危機。
危険だ。
幾らスピードを出しても、ピッタリくっ付いて来て、ついにオカマを掘る。
次第に、ディヴィットには恐怖が込み上げて来た。
100キロ出しても、そのまま張り付いて来る。
目の前に小さなカフェがあったので、ディヴィットはそこの駐車場に車を滑り込ませる。
タンクローリー、走り去る。
間一髪。
ディヴィットは、首を打って、軽いムチ打ちに。
彼の恐怖心とはそぐわない、のんびりした爺さん二人が心配そうに覗き込む。
僕は、(世評に逆らって)スピルバーグがヒューマンな作品を撮る才能があるとは余り認めたくないけれども、こういう場面での登場人物の配置は抜群にうまいと思う。
彼は、やっぱりジェットコースター・ムービーの天才だろう。
ディヴィットはカフェに入り、トイレへ。
ようやく、恐怖から逃れられたと思った。
ところが、窓の外には、またもやあのタンクローリーが!
この店の客の中に運転手がいるのか?
どいつだ?
顔は見ていない。
さっき、一瞬足元が見えた。
ジーンズに茶色のブーツ。
何だ、みんな同じ様な足元じゃないか。
デイヴィットは、多分コイツだと思ったヤツに声を掛ける。
「何の話しだ?」
ディヴィットは細身で冴えないサラリーマン。
一方、トラックの運ちゃんなんて、屈強そうな野郎ばかり。
運転中なのに、平気でビールを飲んでいるヤツまでいる。
勝てる訳がない。
店員に「出て行ってくれ」と言われる。
と思っている間に、タンクローリーが出て行ってしまう。
人違いか!
ディヴィットは必死で走って追い掛けるが、『フレンチ・コネクション』のジーン・ハックマンじゃないから、到底追い付けない。
走り去るタンクローリー。
自分も車に乗って、後を追う。
この得体の知れない恐怖感。
さあ、これからどうなる?
本作は、スピード感もテンポもカメラ・アングルも素晴らしい。
たかだか車に追い抜かれただけの話しを、90分に引き伸ばして、しかも観客を飽きさせずに見せるのは至難の業だ。
ただ、リアル過ぎて、少し酔ってしまったけれども。