『地上より永遠に』

あけましておめでとうございます。
今年も拙ブログをよろしくお願いします。
さて、新年最初のブルーレイ鑑賞は『地上(ここ)より永遠(とわ)に』。

1953年のアメリカ映画。
監督はフレッド・ジンネマン
撮影は、『俺たちに明日はない』のバーネット・ガフィ。
主演は、『大空港』『カサンドラ・クロス』のバート・ランカスター
共演は、『クォ・ヴァディス』『カジノロワイヤル(1967)』のデボラ・カー、『ワイルドバンチ』『ポセイドン・アドベンチャー』『コンボイ』のアーネスト・ボーグナイン、『大統領の陰謀』『ナイル殺人事件』『チャンス』のジャック・ウォーデン等。
原作は『シン・レッド・ライン』のジェームズ・ジョーンズだって。
シン・レッド・ライン』は、有色人種蔑視のヒドイ映画だった。
本作はモノクロ、スタンダード・サイズ。
勇ましいテーマ音楽で始まる。
バックは軍隊の行進。
舞台は1941年のハワイ。
米軍のスコフィールド基地。
ここの中隊に、ラッパ隊からプルーイット(モンゴメリー・クリフト)という青年が転属して来る。
ウォーデン曹長バート・ランカスター)は、「プルーイットは元ボクサーなので、ボクシング狂のホームズ隊長(フィリップ・オーバー)が自分のチームの強化を図るために呼んだ」と明かす。
「隊長には逆らうな」とも。
実は、自分のチームがボクシングで勝てば、隊長が昇進出来るのだった。
腐っているね。
しかし、プルーイットは固辞する。
彼には、どうしてもボクシングをやりたくない理由があった。
本作には、軍隊の訓練シーンが多数登場する。
まるで、『フルメタル・ジャケット』のようである。
プルーイットは、ボクシングを断ったので、上官から徹底的にしごかれる。
陰湿なイジメである。
そんな中、同僚のマジオ(フランク・シナトラ)は彼の味方であった。
一方、ウォーデンは隊長の家を訪ねる。
隊長は不在だったが、美人な妻カレン(デボラ・カー)がいた。
ウォーデンは彼女とキスをする。
彼女は、男をコロコロ変えるらしいという噂だった。
そして、彼女と人目を忍んでデートをする。
プルーイットは、アロハ・シャツを着て、マジオと町のクラブへ行く。
ロリーン(ドナ・リード)という名のイイ女を見付けた。
本作は、軍隊の堕落を描いているらしい。
イマイチ感情移入出来ないのは、主役達が女と結構よろしくやっていて、何だかメロドラマを見せられているようだからである。
マジオは店に来ていた営倉係長ファツォー(アーネスト・ボーグナイン)とケンカになる。
プルーイットは、ロリーンが他の客と話しているのを見て、嫉妬したりする。
ホステスなんだから。
そんなことをしている間、ウォーデンはカレンと海で泳ぎ、砂浜で抱き合う。
ブルーレイのパッケージにもなっている、映画史上有名なシーンだ。
しかし、これだけ見ると、何の映画だか分からない。
まあ、軍人とは言っても、平時は普通の人間と変わらない生活をしているということだろうか。
フルメタル・ジャケット』の海兵隊訓練シーンは、もっと非人間的な環境で缶詰めにされていたけどな。
ウォーデンはカレンに、過去の男関係を詰問する。
彼女は死産して、子供を産めない身体になった。
旦那に裏切られたので、男漁りをしているのだ。
で、店のプルーイットはロリーンと特別室に入る。
彼がボクシングをどうしてもやりたくない理由は、かつて対決した相手を失明させたからだった。
翌日になり、プルーイットに対するしごきは続く。
彼は上官に侮辱されて逆上する。
謝れと言われたが、悪いのは上官の方なので、断固拒否する。
そのため、隊長から、完全武装で山まで往復することを命じられる。
隊長は、「あいつを人間扱いするな。軍法会議へ回せ」と言う。
軍隊では、上官の命令は絶対なのだろう。
白い物でも、上官が黒だと言えば、黒くなる。
でも、理不尽な軍法会議という意味では、キューブリックの『突撃』の方が、圧倒的に胸に刺さるなあ。
本作には、反戦映画という意図はないのだろうか。
ウォーデンはプルーイットのことを思いやる、懐の深い上官ということになっているが、不倫している人にそんなこと言われてもなあ。
プルーイットは、どんなイジメを受けても、決してへこたれようとしなかった。
「オレにボクシングをさせようとしてもムダだ。」
ウォーデンも、隊長の手先になるのは御免だった。
で、そんなことをしている内に、マジオとファツォーはいよいよ険悪になる。
二人のケンカを仲裁をするウォーデン。
彼はプルーイットに休暇を与える。
プルーイットはロリーンの店へ行く。
だが、店では落ち着いて話しが出来ないので、二人は外で会う。
そこへ、職場を無断で放棄したマジオがやって来る。
彼は酔っ払ってMPを殴ってしまう。
マジオには、6ヵ月間の重営倉行きが命じられた。
ここは悲惨な所だった。
ここの監視人は、何とファツォーであった。
ファツォーは、連日連夜、マジオに暴力を振るうのであった。
とは言っても、それがきちんと描写される訳ではない。
何よりも、彼は主役ではない。
で、1941年のハワイなので、こんなことをしている間に、真珠湾攻撃の日になってしまう。
が、真珠湾攻撃のことは誰も全く知らなかった。
突然、日本軍がやって来るのである。
爆撃シーンはミニチュア丸出しで、ちょっと残念。
まあ、それが主眼の映画ではないけれど。
ラストは壮絶ではある。
ただ、やはり軍隊の腐敗と言うには、ちょっと弱いかなあ。
アカデミー賞作品賞、監督賞、助演男優賞フランク・シナトラ)、助演女優賞ドナ・リード)、脚色賞、撮影賞(白黒部門)、録音賞、編集賞受賞。
1953年洋画興行収入7位(ちなみに、1位は『地上最大のショウ』)。