この週末は、ブルーレイで『間違えられた男』を見た。
- 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
- 発売日: 2016/03/02
- メディア: Blu-ray
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監督は、『私は告白する』『裏窓』『泥棒成金』『ハリーの災難』『めまい』『北北西に進路を取れ』『サイコ』『鳥』『フレンジー』『ファミリー・プロット』の巨匠アルフレッド・ヒッチコック。
脚本は、『西部戦線異状なし』のマクスウェル・アンダーソン。
音楽は、『地球の静止する日』『ハリーの災難』『めまい』『北北西に進路を取れ』『サイコ』『鳥』『タクシードライバー』のバーナード・ハーマン。
主演は、『戦争と平和』『史上最大の作戦』『西部開拓史』のヘンリー・フォンダ。
共演は、『サイコ』のヴェラ・マイルズ、『ナバロンの要塞』『アラビアのロレンス』『ローマ帝国の滅亡』のアンソニー・クエイル。
ワーナーブラザーズ、モノクロ、ワイド。
ヒッチコックのナレーションから始まる。
「これは実際にあった物語である。」
「事実は小説より奇なり」ということが言いたいようだ。
舞台は1953年のニューヨーク。
紳士淑女が集まるストーク・クラブ。
華やかな音楽が流れる。
ベースを弾くのはマニイ・バレストレロ(ヘンリー・フォンダ)。
演奏が終わって、店を出る。
地下鉄に乗る。
車内で競馬新聞を読む。
カフェに寄る。
家へ。
配達された牛乳瓶を持って家の中へ入る。
時間は早朝である。
子供達は寝ている。
妻のローズ(ヴェラ・マイルズ)は歯が痛くて、眠れずに起きていた。
親知らずが4本あるという。
歯の治療に300ドル掛かるが、貧乏なミュージシャンが生計を立てるこの家にはカネがない。
300ドルとは、どれくらいだろうか。
後に、マニイの週給が85ドルと出て来るので、1ドル1000円として、30万円位か。
アメリカには保険がないので、異様に高い医療費だ。
で、カネがないので、ローズの保険証書を抵当に、保険会社からカネを借りることにした。
子供は男の子が二人。
さすがミュージシャンの息子だけあって、ピアノを練習している。
マニイが保険事務所へ行くと、女性事務員が奥でヒソヒソ話しを始めた。
以前、この事務所に押し入って、事務員に銃を押し付けた男と、マニイがソックリなのだという。
もちろん、マニイはそんなことはつゆ知らない。
父親の具合が悪いので、実家に寄り、それから帰宅。
家の前で警察が待ち伏せしている。
「これから警察署へ行って、事情を聞きたい」と。
マニイは妻に連絡したいと言うが、聞き入れてもらえない。
警察に着くと、彼は刑事から「連続強盗犯に人相が似ている」と聞かされる。
もちろん、マニイは無実だ。
「私じゃない。」
無実を証明するためにと、彼は警察の捜査に協力することになる。
警察の車に乗って、強盗に入られた店を何軒か回る。
マニイは、店に入って出るを繰り返すように指示される。
既に、完全に疑われているようだ。
彼は貧乏暮らしなので、幾らかの借金を繰り返している。
趣味で時々、競馬をする。
カネに困って強盗をする動機は十分だと警察は見ているようだ。
そんなことで疑われるのか。
僕は学生の頃、クレジット・カードで高級スーツを買いまくって、自己破産寸前まで行ったが、強盗なんかしなかったぞ。
庶民なら、誰だって生活は楽じゃないから、皆強盗をすることになってしまう。
マニイは警察で、犯人の渡したメモの通りに文を書かされる。
そして、「筆跡が似ている」と言われる。
ちゃんとした専門家の筆跡鑑定はないのか。
しかも、運の悪いことに、犯人と同じ所で綴りを間違えてしまった。
かなり不利だ。
面通しが行われる。
例の保険事務所の女事務員が来ている。
彼は「クロ」だと。
そりゃ、犯人に人相が似ているのだから。
マニイは留置されることになってしまった。
指紋を取られるシーンが重々しい。
ここまで、家に連絡も入れさせてもらえない。
連絡がないので、奥さんのローズは心配している。
彼は几帳面な性格で、少しでも時間に遅れる時は、必ず連絡するのだ。
夕方5時半に戻ると言って出て行ったのに、もう深夜である。
僕も、たまに連絡を忘れて細君から怒られることがあるが。
話しはマニイの目線でサクサクと進む。
かなり引き込まれる。
さすがはヒッチコックである。
ローズは心配してあちこちに連絡している。
夫は38歳だと。
老けた38歳だなあ(この時点で、ヘンリー・フォンダは既に50歳過ぎ)。
警察の人権無視は甚だしい。
疑わしい段階で、もう犯人扱いである。
奥さんに電話もさせない。
何か、周防正行監督の『それでもボクはやってない』を思い出した。
ついに、彼は格子の中に入れられてしまう。
逮捕だ。
もちろん、家族は無実を信じている。
翌朝、裁判所へ。
検事が尋問する。
保釈金が7500ドルと告げられる。
拳銃強盗だから、金額がデカイらしい。
300ドルの歯医者代に苦労している彼の家に、そんな大金がある訳がない。
奥さんが迎えに来ているが、話すことも許されない。
ついに手錠を掛けられて、独房へ入れられてしまう。
実に、ドキュメンタリー・タッチな作品である。
ロベール・ブレッソンの映画みたいだ。
それにしても、客観的な証拠は何もないのに、ただ顔が似ているというだけで犯人扱いである。
国家権力の横暴には、泣けて来る。
アリバイも調べずに逮捕だ。
で、マニイは、親戚が保釈金を用意して、何とか保釈される。
ここまでが前半だ。
後半は、夫婦でオコーナー弁護士(アンソニー・クエイル)の所へ相談に行き、弁護を引き受けてもらうことになるが。
奥さんもだんだん精神的におかしくなって来る。
緊迫感のある映画だ。
最後まで重い。
本作は宗教色が強いので、一応最後の最後に救いはあるが。
それにしても、実に見応えのある映画だった。