『地獄への道』

この週末は、ブルーレイで『地獄への道』を見た。

1939年のアメリカ映画。
監督はヘンリー・キング
製作は、『イヴの総て』『史上最大の作戦』の大プロデューサー、ダリル・F・ザナック
撮影は、『レベッカ』『白い恐怖』『サムソンとデリラ』のジョージ・バーンズ
主演はタイロン・パワー
僕は恥ずかしながら、彼の出演作を初めて見た。
名前だけは知っていた。
ニュー・シネマ・パラダイス』のセリフに出て来るからだ。
共演は、『戦争と平和』『間違えられた男』『史上最大の作戦』『西部開拓史』『ウエスタン』のヘンリー・フォンダ
20世紀FOX
テクニカラー、スタンダード・サイズ。
この時代のカラー作品と言えば、『風と共に去りぬ』と『オズの魔法使』くらいしか知らなかったが。
画質も良いので、60年代位の映画に見える。
華やかなテーマ音楽。
南北戦争後、西部開拓、大陸横断鉄道の建設。
その時代の無法者、フランクとジェシーのジェイムズ兄弟の物語。
1876年、セント・ルイス中部鉄道会社はセント・ルイスとセダリア間の鉄道敷設のため、農民から耕地を、タダみたいな安値で買い上げていた。
字も読めない農民に契約書を突き付け、無理矢理サインさせる。
何か、今問題になっているAV出演強要みたいだな。
ジェシー・ジェイムズ(タイロン・パワー)が農作業をしていると、鉄道会社のパーシーがやって来た。
ジェイムズ農場は母の名義だと言うと、連中はジェシーの家へ。
しかし、母親であるミセス・サミュエル(ジェーン・ダーウェル)は土地を売ることを拒む。
それでもいつこい鉄道会社の連中に、長男のフランク・ジェイムズ(ヘンリー・フォンダ)は「断っているぞ」と殴り掛かる。
更に、弟のジェシーは銃で脅す。
フランクとパーシーは1対1でケンカをして勝利。
ジェームズが銃を使って連中を追い出すことに成功する。
鉄道会社の横暴と闘おうとしている地元紙の編集長コッブは、「ジェイムズ兄弟を助けるぞ!」と社説で論陣を張る。
その夜、ジェシーは村人達を集めて会合を開いた。
昼間の出来事を恨みに思ったパーシーは、逮捕状を取って、ジェイムズ兄弟の身柄を押さえに向かっていた。
それを察知したコッブは、兄弟に「逃げろ!」という。
だが、母親は具合が悪く、一緒に逃げることが出来なかった。
パーシーどもは、卑劣にもジェイムズ兄弟の家を爆破し、母親は死んでしまう。
兄弟は、山奥の岩場に隠れていた。
コッブの姪であり、ジェシーの恋人であるゼレルダ(ナンシー・ケリー)は、兄弟の母親の死を知らせに来る。
ジェシーは酒場へ乗り込み、パーシーを撃ち殺す。
彼はお尋ね者になってしまった。
ついに鉄道が開通する。
ジェイムズ兄弟は、鉄道会社への復讐のために、列車強盗団を結成した。
華やかに走る一番列車を馬で追う覆面姿のジェシー
ダブル・ルーフの車両に、乗客は皆、上流階級である。
まあ、日本の鉄道も、開通当時は運賃が高くて、庶民は乗れなかったらしいが。
疾走する列車に馬で追い付き、列車に飛び乗り、屋根の上によじ登るジェシー
すごいアクションだ。
もちろん、CGなどない。
実際に走っている列車で撮影している。
トーキー映画が出来て10年も経たない時代に、総天然色でこんな映像を見せられたら、観客は度肝を抜かれただろう。
ジェシーは屋根伝いに運転席まで行き、「列車を止めろ」と命じる。
止まった所には、フランク達が待ち伏せしている。
列車に乗り込んで来た彼らは、強盗を働く。
ただし、奪うのは現金だけ。
この事件で、ジェシーの懸賞金は一気に5000ドルに跳ね上がった。
コッブの元を秘かに訪ねるジェシー
ゼレルダは「あなたは間違っている」と彼をなじる。
けれども、コッブは「徹底的にやれ!」と鼓舞する。
いいね。
成田空港反対闘争みたいだ。
そこへ、保安官のウィル・ライトランドルフ・スコット)がやって来る。
ウィルに「そちらの方はどなた?」と尋ねられ、とっさにゼレルダは偽名を使う。
それでも、ここにいるのがジェシーだということは察知されていた。
「私の管轄には来るな」と促されたジェシーは逃げる。
ゼレルダは鉄道会社の社長マッコイから、「ジェシーが自首すれば減刑する」と聞かされ、彼にそのことを伝えに行く。
「自首して」とゼレルダから頼まれるも、「出来ない」と答えるジェシー
でも、とうとう決意して、二人は結婚の約束をする。
そのまま教会へ行き、式を挙げる二人。
男の名前が「ジェシー・ジェイムズ」と聞いて、牧師は驚くが、彼もまた鉄道会社を恨んでいるのであった。
当時の鉄道会社のやり口が、相当強引なものであったことが伺われる。
ジェシーはウィルに会い、自首をする。
ゼレルダは「待っているわ」と。
ジェシーは留置所へ連れて行かれるが、マッコイは「君が牢に入っていると嬉しいよ」と告げる。
「騙された!」と思うも、後の祇園祭
ジェシーの裁判まで、町には戒厳令が敷かれた。
殺人者は絞首刑である。
「自首すれば減刑」というのは、社長の罠であった。
社長は、ジェシーに同情的な判事を交代させた。
ウィルは、マッコイに猛抗議する。
そこへ、フランクから社長宛ての手紙が届く。
「午後12時までにジェシーを釈放しなければ、奪還に行く」と。
社長は、ウィルに「私を守れ」と命じる。
ウィルとマッコイは、酒場にボディガードをスカウトしに行った。
朝5時、フランクが森で捕まったと連絡が入った。
連行されて来たフランクに対し、ウィルは「すまない」と謝罪。
そのやり取りを見た社長は、ウィルをクビにする。
フランクは社長に「約束は守れ」と。
「お前だって、弟を奪還するという約束を守れなかったじゃねえか」という社長。
ところが、実はスカウトした助手は、フランクとグルなのであった。
兄弟は、まんまと脱出に成功する。
さあ、これからどうなる?
疾走する馬の撮影がスゴイ。
まるで、黒澤映画である。
クライマックスで、兄弟の乗った馬ごと、ガケから転落するシーンがある。
これは、今では動物虐待と言われて、撮影出来なそうだ。
ラスト・シーンは、ご都合的にまとめているが、これがなければ、アメリカン・ニュー・シネマの香りがする。
主人公が破滅へと突き進む様が。
実際のジェシー・ジェイムズは、そこまで義賊でもなかったらしいが、本作は、大衆のヒーローとして描いている。