『恋の手ほどき』

この週末は、ブルーレイで『恋の手ほどき』を見た。

恋の手ほどき [Blu-ray]

恋の手ほどき [Blu-ray]

1958年のアメリカ映画。
監督は、『巴里のアメリカ人』『バンド・ワゴン』のヴィンセント・ミネリ
製作は、『イースター・パレード』『踊る大紐育』『巴里のアメリカ人』『雨に唄えば』『バンド・ワゴン』のアーサー・フリード
音楽は、『ジーザス・クライスト・スーパースター』のアンドレ・プレヴィン
主演は、『巴里のアメリカ人』のレスリー・キャロン
MGM。
メトロカラー、シネマスコープ
軽やかなテーマ音楽。
走る馬車。
舞台はパリ・ブローニュの森
時は1900年。
語るのは、金持ちで粋な老人ラシュイユ氏(モーリス・シュヴァリエ)。
最初の挨拶だけ「ボン・ジュール」だが、セリフは英語である。
ここパリにも結婚出来ない女は大勢いると、現在ならフェミニスト達が黙っていないようなことを言うラシュイユ。
しかし、少女には未来がある。
未来というのは、要するに、将来いい男と結婚するということだろう。
ここから、ジジ(レスリー・キャロン)という少女の話しへ。
少女と言っても、レスリー・キャロンはこの時点で、既に20歳代後半だが。
ジジは学校から家に帰って来る。
彼女は、祖母のマミタに育てられている。
彼女の部屋は真っ赤。
家にはニャンコがいる。
このニャンコが、実に大人しく、飼い主の言うことをよく聞く。
ジジの母親は、しがない舞台女優。
歌声は聴こえて来るが、姿は見えない。
で、冒頭のラシュイユ氏は、甥のガストン(ルイ・ジュールダン)と馬車の上で話している。
ラシュイユ氏は「若い女と付き合え」と言う。
まあ、如何にもフランス人らしい。
で、ガストンはジジの家へ来て、お茶を飲む。
ジジは、学校が終わると、祖母の妹アリシタ(イザベル・ジーンズ)の家へ行って、行儀作法のお稽古。
ジジは今日、学校では英語の勉強をしていたという。
この時代のフランスで、学校で英語を習うとは。
アリシタはジジに「英国人はフランス語を話せないからね」と言う。
明らかに、英語を見下している。
まあ、フランス人は、今でもフランス語が世界一の言語だと思っているだろうから。
フレンチ・コネクション2』で、フランスへ行ったジーン・ハックマンは、英語が全く通じなくて困っていた。
英語が世界共通語だなんて、真っ赤なウソである。
現に、我が日本でも、英語なんか通じないじゃないか。
話しが逸れた。
ジジは、アリシタのこの退屈なマナー講座にうんざりしている。
ホオジロという小鳥の料理が出て来たのだが、これは骨ごと食べるんだな。
「パリの人は恋の話しばかり」とジジは思っている。
そんなジジに、ガストンが声を掛ける。
「いつも恋をしているのはウソ付きだよ」と。
ガストンは大金持ちだが、ジジのことは子供の頃からよく知っている。
ジジは天真爛漫だが、ガストンは人生に退屈し切っている。
ガストンはスケート場へ行った。
彼は社交界の有名人なので、すぐに人々の噂の種になる。
それにしても、パリの上流階級は噂話しばかりしている。
面白いか?
ガストンは恋人リアネ(エヴァガボール)と一緒にいるのだが、彼女は心ここにあらずで、他の男のことを考えている。
余りにも上の空なリアネに、怒り心頭なガストン。
ガストンは、ついに彼女がスケートの先生と浮気をしている現場を押さえる。
男に「1000フランでリアネと手を切れ!」と迫るガストン。
そして、「さよならマダム」と、リアネにも別れを告げる。
彼女が自殺未遂をはかったという噂が駆け巡った。
まあ、深刻なものではない。
彼女は、今で言うところの「かまってちゃん」なのであった。
しかし、パリの社交界では、どうでもいい男女の恋愛話しまでが、すぐに新聞のニュースに載るんだな。
芸能人でもないのに。
信じられん。
で、ガストンは失恋の報告にラシュイユの家へ行った。
傷心の甥のために、連日連夜、盛大なパーティを開くラシュイユ。
でも、ガストンは憂鬱だった。
ガストンはジジの家へ行った。
ジジの家で夕食を食べて行く。
ジジが帰って来て、ガストンとトランプをする。
トランプでガストンが負けたら、ジジを海へ連れて行くと、軽い約束をする。
ガストンは、「このおてんば娘と一緒にいると、本当に楽しいんだ!」
ジジも大はしゃぎ。
で、まさかガストンはジジにトランプで負け、マミタも連れて、3人で海へ行くのだった。
ここまでで約半分。
なかなか話しが展開しない。
正直な所、余り面白くない。
衣装とか美術にはカネは掛かっているだろう。
原色が多用されていて、きらびやかで色鮮やかだが。
内容は実に空疎。
そもそも、僕は下層階級の出身なので、上流階級を中心に描かれても、全く感情移入出来ない。
金持ちの退屈な日常がダラダラと描かれる。
ミュージカルのはずだが、歌も踊りもパッとしない。
これでアカデミー賞を摂ったのか(しかも、9部門も)。
まあ、賞なんてアテにならないものだということは知っているつもりだが、それにしても。
もちろん、最後はご都合で終わる。
アーサー・フリードの最後のミュージカル映画らしいが。
こんなんじゃあ、黄金期の他の作品が泣く。
そりゃ、ミュージカル映画も下火になるだろう。
アカデミー賞作品賞、監督賞、脚色賞、撮影(カラー)賞、ミュージカル映画音楽賞、歌曲賞、美術監督・装置賞、衣装デザイン賞、編集賞受賞。