『黒いオルフェ』

この週末は、ブルーレイで『黒いオルフェ』を見た。

黒いオルフェBlu-ray

黒いオルフェBlu-ray

1959年のフランス・ブラジル・イタリア映画。
監督はマルセル・カミュ
主演は、ブレノ・メロとマルペッサ・ドーン。
僕は、本作のタイトルは以前から何度も耳にしていたが、恥ずかしながら、どんな映画か全く知らなかった。
元になっているのはギリシア神話だが、その内容もよく知らなかった。
本作の出演者は、『自転車泥棒』のように、全員素人らしい。
カラー、スタンダード・サイズ。
画質は、1950年代の映画とは思えないほど良い。
舞台はブラジルのリオ・デ・ジャネイロ
カーニバルのサンバから始まる。
趣のあるテーマ曲。
これも、映画音楽史上有名な作品らしい。
船が港に着く。
乗客が皆、踊っている。
本作は、「ブラジル人が全員、踊ってばかりいるように描かれている」として、本国では大変不評だったらしいが、確かにそういう面はある。
田舎から出て来た娘ユーリディス(マルペッサ・ドーン)は、カーニバルの見物のために田舎から出て来た。
リオの街を歩くユーリディス。
このリオの街が、近代的な高層ビルが立ち並んでいて、とても50年代とは思えない。
満員の市電(乗客が車外にまではみ出している)の運転手オルフェ(ブレノ・メロ)は、歩いているユーリディスに「よう、乗らないか」と声を掛ける。
終点についても、それに気付かず、未だ乗ったままのユーリディスにもオルフェは優しい。
オルフェはギターの名手で、大変なモテ男であった。
彼には、ミラという派手な婚約者がいる。
このミラ役の女優は、若い頃のマリー・ジランに似ているな。
ミラは、渋るオルフェを連れて、役所に婚姻届を出しに行く。
この役所の婚姻係のオッサンが冗談ばかり言うヤツで、「夫の名前がオルフェなら、妻はユーリディスだね」と言う(これが実は伏線)。
ミラは、オルフェに「また他の女が!」と怒るが、婚姻係は「ギリシア神話だよ」と告げる。
本作には、お役所仕事を皮肉っている場面が、随所に見られる。
ミラはオルフェに「指輪を買って」とねだる。
僕の細君がこういうタイプじゃなくて、本当に良かった。
オルフェは、「ギターを質から出さないといけないので、カネはない」と言う。
僕も、若い頃はしょっちゅう質屋通いをしていたものだ。
本作も、当時の貧しい人々の暮らしを描いているのだろう。
オルフェはギターを質から出すが、そのそばから、見知らぬオッサンに蓄音機を売り付けられ、カネがなくなる。
ミラは自分で指輪を買って、代金をオルフェに請求する(僕の細君がこういうタイプじゃなくて、本当に良かった)。
一方、ユーリディスは、従姉妹のセラフィナの家を訪ねる。
丘の上にある、バラックみたいな小屋だ。
街中には、あんなに高層ビルが建っていたのに、庶民はみんな貧しいんだな。
ユーリディスは、「男が村に来て、自分のことを追い掛け回す。殺すつもりだから逃げて来た」とセラフィナに告げる。
そして、少年からお守りをもらう。
オルフェの家はセラフィナの家の隣だ。
オルフェがギターの練習をする。
弾き語り。
名曲だ。
隣の家にいるユーリディスは、そのメロディーに乗せて踊る。
オルフェの家に、また別の女が押し掛けて来る。
オルフェは隣の家に避難する。
そこで、ユーリディスと再会する。
夜、カーニバルのリハーサル。
踊るオルフェ。
ミラもセラフィナも踊っている。
ユーリディスと踊るオルフェ。
オルフェはユーリディスに「本気だ」と告げる。
そこへ、死神の仮装の男がやって来て、ユーリディスがパニックになる。
ユーリディスはどこかへ逃げる。
探すオルフェ。
ようやく彼女を見付けると、謎の男はオルフェに、「女は預ける。俺は急がない」と言い残して、去る。
ユーリディスを連れて帰るオルフェ。
「オレは外で寝る」と言うオルフェ。
つまり、彼女には手を出さないということだな。
まあ、ブラジルだから外で寝られるのだろう。
しかし、お互い意識しているので、二人とも眠れない。
そして、一緒に朝を迎えるオルフェとユーリディス。
オルフェはまた弾き語り。
さあ、これからどうなる?
翌日はカーニバル。
まるで渋谷のハロウィンみたいだな。
警察は治安維持のために、片っ端からしょっぴくし。
警察権力を見ていると、学生運動の弾圧を思い出して、許し難い。
で、後半は驚きの展開。
衝撃の結末が待っている。
当たり前だが、全編に神話的要素が溢れている。
ギリシア神話を、うまく現代化したと言えるだろう。
恋愛がテーマだから、『ロミオとジュリエット』っぽい部分もあるな。
しかし、こういう話しだとは全く知らなかった。
日々是勉強だな。
カンヌ国際映画祭パルム・ドールアカデミー賞外国語映画賞受賞。

Black Orpheus Orfue Negro 1959 Trailer