『カリートの道』

この週末は、ブルーレイで『カリートの道』を見た。

カリートの道 [Blu-ray]

カリートの道 [Blu-ray]

1993年のアメリカ映画。
監督は、『悪魔のシスター』『キャリー』『スカーフェイス』『アンタッチャブル』の巨匠ブライアン・デ・パルマ
音楽は、『ハムレット(1996)』のパトリック・ドイル
撮影は、『アンタッチャブル』のスティーヴン・H・ブラム
主演は、『ゴッドファーザー』『セルピコ』『ゴッドファーザーPART II』『狼たちの午後』『スカーフェイス』『ゴッドファーザーPART III』の我らが大スター、アル・パチーノ
本作の日本公開は1994年。
僕が大学2年生の時である。
当時、僕はかなりの本数の新作映画を映画館で観ていた。
監督がブライアン・デ・パルマで、主演がアル・パチーノなら、絶対に僕のアンテナに引っ掛かって、観に行こうと思ったはずだが、何故か、今に至るまで未見であった。
ただ、有名な作品なので、いつかは見なければとは思っていた。
本作でアル・パチーノと共演しているショーン・ペンは、今や名優扱いだが、僕の第一印象は、『初体験/リッジモント・ハイ』に出ていたチャラくて頭の悪そうな兄ちゃんだ。
僕は昔、フィービー・ケイツが好きだったので、『リッジモント・ハイ』は何度も見た(同じ世代の人なら分かるだろう)。
ユニヴァーサル・ピクチャーズ。
カラー、シネスコ
銃で撃たれるカリート・ブリガンテ(アル・パチーノ)のスローモーション(モノクロ)から始まる。
荘厳な音楽。
カリートは救急隊に運ばれる。
「病院はイヤだ」というモノローグ。
「真夜中に働いているのは手先の怪しい中国人インターンだ」という人種差別的な内容もあるが、まあ、置いておこう。
そこから回想。
つまり、結末を最初に示すパターンだな。
カリートは元麻薬王で、5年間服役していたが、シャバに戻ることが出来た。
彼は判事の前で演説をぶった。
彼を弁護したのは、親友の弁護士デヴィッド・クラインフェルド(ショーン・ペン)。
「検察のデッチ上げ。不当な5年の服役だ!」
検察のデッチ上げは現在の日本でもあるな。
小沢一郎先生の陸山会事件なんかヒドかった。
まあ、カリートの場合は、本当にデッチ上げだったかは知らんが。
そして、カリートは法廷で「私は足を洗う」と誓う。
釈放され、「オレは自由だ!」と裁判所の前で叫ぶカリート
まあ、悪事を働けば、直ちに刑務所に逆戻りだが。
「今夜は祝宴だ」とクラインフェルド。
ダンスをする二人。
クラインフェルドは、組織のお抱えで、要するに、裏社会の弁護士であった。
彼は、借金で首が回らないサッソという男のナイトクラブを2万5千ドルで買い取ってカリートに経営を任せたいという提案をする。
酒が進んでへべれけになりながら、カリートはクラインフェルドに「お前は命の恩人だ」と言う。
しかし、カリートの夢は、7万5千ドルを貯めて、バハマ諸島のパラダイス島でレンタカー屋を経営することであった。
カリートは街へ戻った。
5年の月日が流れて、街で見るのは、見覚えのない若い顔ばかり。
昔の仲間がカリートに挨拶し、「本当に感謝している」と告げるが、カリートは「オレは引退する」と宣言する。
若い従弟の麻薬のピックアップに渋々付き合うカリート
床屋の奥がビリヤード場になっており、そこで3万ドルの麻薬の取引が行われるのであった。
カリートは、この界隈では伝説の英雄である。
彼がビリヤードで「トリック・ショットを見せよう」などと言っている間に、従弟は取引相手に裏切られ、ナイフで首を切られてしまう。
とっさにピストルを奪って撃ちまくるカリート
死んだ従弟を見て、「この世界に友達はいない」とつぶやくカリート
従弟の3万ドルを持って「アディオス」。
「汚い世界だ。オレの行く所はみんなこれだ。」
裏社会から足を洗うと宣言したのに、のっけから大量殺人。
カリートはクラインフェルドに2万5千ドルを貸す。
更に、パチャンガという用心棒を紹介する。
「パラダイス・クラブ」というナイトクラブに赴くカリート
店内を見て、時代の変化を痛感する。
ここのオーナーであるサッソに「明日、2万5千ドル用意する。稼ぎの半分を寄越せ」と告げる。
「このオレが『カサブランカ』の真似か」とひとりごつカリート
店の常連で払いを渋っているベニー・ブランコというチンピラに「代がかわった。勘定を払ってもらう」と言うと、カリートの顔を見て相手が驚き、一発で回収出来た。
やはり、カリートの顔は裏社会で売れているのであった。
彼は、踊っているダンサーの姿を見て、昔の恋人ゲイル(ペネロープ・アン・ミラー)のことを思い出した。
雨の夜、「彼女の顔が変わっていませんように」と願いながら、ゲイルの通っていたダンス・スクールを覗くカリート
中から出て来た彼女に声を掛ける。
驚く彼女。
二人は喫茶店で話した。
ダンサーとしての彼女の夢は叶いつつあるという。
カリートは、服役する前に彼女を捨てたのだった。
こんな人生はイヤだねえ。
平凡が一番だよ。
抱き合う二人。
「じゃあね」と言って別れる。
イカー島のはしけ式刑務所に向かうクラインフェルド。
彼は服役中のマフィアのボスと面会している。
相手は、「オレが(賄賂のために)渡した100万ドルを貴様がネコババした」と怒り心頭。
「オレを脱獄させろ」と息巻いている。
看守を買収して海上まで出るから、クラインフェルドがボートを出してこのボスを拾い上げろというのである。
一方、クラインフェルドは事務所でコカインを吸入している。
完全なヤク中だ。
こんな弁護士がいるのだろうか。
カリートはクラブでゼニ勘定の毎日。
あと3~4万ドル貯めたら、ここともおさらばだ。
それまでは、とにかく静かに生きる。
背中を撃たれて車椅子生活になった昔のコカイン仲間が、服役していたものの、釈放されてカリートを訪ねて来る。
「昔のようにオレと組もう」と言われるが、カリートは断る。
この男は、あろうことか盗聴マイクを仕込んでいた。
怒り心頭のカリート
「殺してくれ!」と叫ぶ男を、カリートは殺さない。
理性が働いているのだ。
夜、たまたま街でチラシを受け取って、店に入ったカリート
その店のストリップ・ショーで、何とゲイルが踊っていた。
カリートが「こういう仕事だと思っていなかった」と告げると、彼女は怒る。
場面変わって、パラダイス・クラブでは、クラインフェルドがステファニーというホステスとトイレでヤッている。
ステファニーは、件のチンピラ、ベニー・ブランコの女だった。
折悪しく、ブランコが店にやって来る。
ステファニーを指名するブランコに、サッソが慌てている。
ところが、カリートはブランコが嫌いで、「ファック・ベニー!」と言い放つ。
ブランコが抗議に来ると、クラインフェルドは「頭をブチ抜くぞ!」と、ベニーにピストルを突き付ける。
何という弁護士だ!
カリートはブランコを出禁にする。
「覚えてろ!」と叫ぶブランコを階段から突き落とす。
(まずいぞ、つい昔のクセが出る。こういう時はベニーを消すことだ。)
しかし、消すべきだが、今のカリートには出来なかった。
「殺しはイヤだ。」
命令を待つパチャンガに、「放せ」と言うカリート
これが、後の災厄の原因になるのだが。
そして、クラインフェルドがピストルを持っているのにも抗議する。
「オレに寄越せ。いつからヤクザになったんだ。」
さて、これからどうなるか。
出所を期に、真っ当な生き方をしようと誓ったカリートであったが。
「朱に交われば赤くなる」とでも言うのだろうか。
回りが悪い連中ばかりだから、どんどん悪に染まって行く。
いや、そもそも真っ赤だったのだが。
人間の本質なんて、所詮は変わらないということか。
後半は、すごい展開になる。
彼女を取るか、親友を取るか。
結局、回りの奴らは誰一人、ロクでもないヤツしかいなかったのだが。
彼女が可愛そうだな。
結末は最初に示されているので、そこへどう持って行くか。
色々な伏線が見事に張り巡らされていて、最後に回収される。
ラストへ向けてのスリリングな展開は手に汗握る。
地下鉄のシーンは、ちょっと『フレンチ・コネクション』を思い出した。
で、ラスト近く、マフィアのボスの次男が撃たれても起き上がって追い掛けて来るのは、まるでターミネーターだ。
思い起こせば、『スカーフェイス』にも、そんなシーンがあった。
やはり、ブライアン・デ・パルマだな。
ちと演出過剰ではないか。
せっかくのサスペンスフルなシーンも、ここでギャグになってしまうのが残念。
まあ、でも、よく出来た映画だと思う。
こんな人生はイヤだ。
余談だが、パーティーのシーンでショーン・ペンが着ているダブルの紺ブレは、ラルフ・ローレンではないか。
あの金ボタンがそうだと思うが。

Carlito's Way - Official Trailer (1993)