『北京の55日』

連休中は、ブルーレイで『北京の55日』を見た。

北京の55日 [Blu-ray]

北京の55日 [Blu-ray]

1963年のアメリカ映画。
監督は、『理由なき反抗』のニコラス・レイ
製作は、『エル・シド』『ローマ帝国の滅亡』のサミュエル・ブロンストン
脚本は、『エル・シド』『ローマ帝国の滅亡』のフィリップ・ヨーダン
音楽は、『我が家の楽園』『スミス都へ行く』『赤い河』『見知らぬ乗客』『私は告白する』『ジャイアンツ』『ナバロンの要塞』『ローマ帝国の滅亡』の巨匠ディミトリ・ティオムキン
主演は、『十戒』『黒い罠』『大いなる西部』『ベン・ハー』『エル・シド』『猿の惑星』『続・猿の惑星』『大地震』『ハムレット(1996)』のチャールトン・ヘストン、『天地創造』『大地震』のエヴァ・ガードナー、『ナバロンの要塞』『ピンク・パンサー』『007 カジノ・ロワイヤル』『ナイル殺人事件』のデヴィッド・ニーヴン
共演は、『素晴らしきヒコーキ野郎』のフローラ・ロブソン、『赤い河』『スパルタカス』『ローマ帝国の滅亡』のジョン・アイアランド、『アレキサンダー大王』『空軍大戦略』のハリー・アンドリュース、『クォ・ヴァディス』『史上最大の作戦』のレオ・ゲン、『チキ・チキ・バン・バン』のロバート・ヘルプマン、『007は二度死ぬ』のマイケル・チャウ、『ナバロンの要塞』『007 ロシアより愛をこめて』のウォルター・ゴテル。
なお、日本からは伊丹十三が参加している。
僕は小学生の頃、祖母の家でこの映画をテレビで見た記憶がある。
14インチの白黒テレビだったが。
内容は全く覚えていないのだが、子供心に、本作の北京は「セット臭いな」と思った記憶がある。
当時(から)、僕は特撮映画が大好きだったので、ミニチュアやセットには敏感だったのだ。
で、改めて見直してみると、やはりセット然としている。
本作はスペインで撮影されたらしい。
これだけの巨大なオープンセットを作ったということは、大変なカネが掛かっているのは理解出来る。
しかし、『ローマ帝国の滅亡』や『エル・シド』みたいに大昔のヨーロッパが舞台なら、そんなにリアリティーは要求されないかも知れないが、1900年の中国となると、我々日本人にとっては、時代的にも地理的にも近いから、どうしても見る目が厳しくなる。
当時の中国では、映画製作への協力は全く見込めなかったのだろうが、我々は後に、実際の紫禁城でロケをした『ラストエンペラー』を見ているし。
また、西太后や皇太子といった中国側の主要キャストが西洋人で、セリフも英語で喋るというのも頂けない。
まあ、ハリウッド映画だから、仕方がないのかも知れないが。
ただ、古き良き時代の超大作映画であるのは間違いない。
カラー、ワイド(70ミリ)。
最初に「OVERTURE」。
この時代の歴史スペクタクル映画の定番だ。
それから、穏やかで、かつ力強いテーマ曲。
「北京。1900年の夏。雨が遅れ、不作だった。1億もの人々が飢えに苦しみ、不満の嵐が全土に渦巻いていた。居留地には1000人もの外国人が望郷の生活をしていた」という字幕。
僕は、大学受験の時、英語・国語・小論文で受けたので、世界史も日本史も早々に捨てた。
だから、この時代の背景知識もほとんどない。
このことを今では大いに後悔している。
ちなみに、僕の勤務先の社長も入試は小論文だったので、地理や歴史は得意でないという。
それで、国際政治や国際経済の本を出す時には、なかなか大変だ。
余談であった。
アメリカ、フランス、日本などの国旗がひるがえる。
紫禁城では、西太后(フローラ・ロブソン)が占いで政治を行なっていた。
皇太子(ロバート・ヘルプマン)は、中国国内で台頭して来た義和団を支持し、処刑を中止するよう命じる。
しかし、西太后は、義和団を放置すると諸外国が黙っていないと、処刑を命じる。
その頃、アメリ海兵隊のマット・ルイス少佐(チャールトン・ヘストン)が部下を引き連れて、北京へやって来る。
「北京は古代からの文明都市だ。英語を話せないからと市民をバカにするな!」
本当に、『ロビンソン・クルーソー』を読んでいても思うが、英米人は英語だけが唯一の文明人の言葉だと思っているから、タチが悪い。
中国が国家で歴史書を編纂していた頃、英語なんか未だ存在すらしていなかったというのに。
で、ルイスは義和団がイギリス神父を水車で拷問している場面に出くわす。
ルイスは20ドルで神父の身柄を引き取ろうとするが、神父は死んでしまう。
更に、ルイスを撃とうとしていた義和団を、海兵が射殺する。
その頃、ホテルでは、ロシア公使が義理の妹であるナターシャ・イワノフ男爵夫人に、彼女のビザが切れたので、本日中にホテルから退去するように命じていた。
そこへ、ルイスが到着する。
海兵隊は徒歩でここまでやって来た。
「鉄道はあってなきが如し」と、彼らが本音では中国を後進国と見下していることが露呈する。
ホテルは満室だったが、ナターシャが出て行くことでルイスの分の部屋は空くことになった。
ナターシャをちゃっかりナンパするルイスだが、彼女は「ホテルの部屋が欲しい」と言う。
また、久し振りに友人のマーシャル大尉と再会して、彼に中国人女性との間に生まれた12歳になる娘テレサがいることを知る。
マーシャルは、娘をアメリカに連れて行きたいが、「混血だから難しい」と。
随分と差別的だな。
この辺、後半への重要な伏線。
一方、イギリス公使アーサー・ロバートソン卿(デヴィッド・ニーヴン)は、中国との戦争は避けたいため、義和団の制圧には及び腰であった。
ルイスが呼ばれてやって来るが、「中国人を殺すな。君は不要だ」と告げる。
だが、ルイスは「やがては大混乱になる」と、いずれ自分が必要になる時が来ると予言する。
夜、英国女王の誕生パーティーが開催された。
中国皇太子も招待されている。
ダンスの時間には、ルイスとナターシャが踊る。
中国皇太子は、ルイスに対し、「今朝、義和団にちょっかいを出したアメリカ人ですな」と侮蔑的な目で見る。
皇太子は、義和団は危ない連中ではないと、彼らの剣を使った芸を見せる。
まるで、中国雑技団だ。
団員は、ルイスに剣を持たせ、どこからでも自分を攻撃してみるように促すが、ルイスは別の団員を脅す。
彼にとっては、皇太子への挑発であった。
各国大使は、「義和団を連れ込むとは、列国への挑戦だ!」と激怒。
けれども、英国公使はあくまで控え目な態度であった。
そんなことはよそに、ルイスとナターシャは、誰もいない仏堂で踊るのであった。
翌朝、ルイスが天津へ退去しようとすると、ドイツ公使が義和団に殺されるのを目撃する。
そこには皇太子がいた。
英国公使は西太后に会う。
西太后は「中国人の列強への怒りは収まらない」と告げる。
ドイツ公使殺害の実行役の義和団が処刑された。
だが、英国公使は、西太后の面前に、証人としてルイスを連れて来る。
「ドイツ公使の殺害を命じたのは皇太子です。」
しかし、西太后は「虚偽です」と受け入れない。
のみならず、「外国人は全て24時間以内に退去」という命令を出す。
城を出た途端、多数の義和団に囲まれる英国公使とルイス。
イギリスの衛兵も出動し、城の前は騒然となる。
各国公使は、中国に残るべきかを相談する。
イギリス以外は、北京からの撤退を主張する。
なお、ここで日本公使役で出ているのが伊丹十三
けれども、英国公使は、7000人の兵が天津から北京に向かっていると告げる。
その到着を待とうということで、撤退は中止になった。
だが、日本公使は、「400人で阻止するのは無理だ」と主張。
そこで、バリケードを作ることになった。
まるで、大学紛争だな。
バリケードを作っていると、至る所から、義和団がナイフを投げ付けて来るなどの挑発を図る。
一方、ナターシャは、秘かに通じている中国人の所へ行き、「今日の5時に戦闘が始まる。混乱に乗じて脱出したい」と、手はずを整えるように頼む。
彼女が脱出しようとするところを、ルイスに見付かるが、ナターシャは無視して城の外へ。
しかし、外に出ると、義和団と列強軍との、正に銃撃戦の最中であった。
ナターシャを手引きすることになっていた中国人も流れ弾に当たって死に、彼女は途方に暮れる。
夜、義和団は城壁にはしごを組んで登って来た。
朝になって、義和団は一斉に城内へ攻め込んで来た。
大戦闘が始まる。
連合軍は、何とか城壁は奪回したものの、マーシャル大尉を失う。
一方、ナターシャは自分を守ろうとして足を撃たれ、切断することになってしまった兵士にずっと付き添っていた。
ルイスは、マーシャルが死んだことを彼の娘テレサに伝える決意をする。
テレサは協会の施設にいた。
こう言っちゃあ何だが、劣悪な環境だ。
欧米人が現地妻に産ませた子供は、こんな悲惨な境遇で生きて行かなければならない。
ルイスがテレサに会うと、彼女は「Is he dead?」と尋ねる。
「パパがアメリカへ行こうって」と聞かされたルイスは絶句する。
ここで「INTERMISSION」。
この作品は、アメリカ映画なので、当然ながら西洋列強側からの視点で描かれている。
その中に、日本も入ってしまっている訳だが。
しかし、当時の列強に抑圧されていた中国人の立場から見れば、支配に向かって立ち上がろうとするのは当然ではないか。
それなのに、結局、アメリカ目線なんだ。
現在の世界で起こっている様々な問題も、アメリカ目線だけでは解決出来ない。
そこが、この映画の限界。
ラストも、かなりご都合的。
まあ、しかし、娯楽映画としては、よく出来ているのではないか。
カネは掛かっているし、戦闘シーンも迫力あるしね。
でも、何かスッキリしない。
我々日本人は、同じアジア人として、やはりアメリカよりも中国に近い目線で見てしまうから。
1963年洋画興行収入5位。
ちなみに、1位は『史上最大の作戦』、2位は『アラビアのロレンス』、3位は『大脱走』、4位は『クレオパトラ』。
スゴイ年だ!
映画史に残る傑作に、こんなに客が入っていたとは!
ちなみに、邦画の興行収入1位は『にっぽん昆虫記』。
これも、今では信じられない。

55 Days At Peking 1963 Trailer Restored in HD