『天使の詩』

この週末は、ブルーレイで『天使の詩』を見た。

天使の詩  Blu-ray

天使の詩 Blu-ray

1966年のイタリア映画。
監督はルイジ・コメンチーニ
脚本は、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』のピエロ・デ・ベルナルディとレオ・ベンヴェヌーティ。
撮影は、『さらばバルデス』のアルマンノ・ナンヌッツィ。
主演は、『ハムレット(1947)』『間違えられた男』『ナバロンの要塞』『アラビアのロレンス』『ローマ帝国の滅亡』のアンソニー・クェイル
共演は、『バリー・リンドン』のジョン・シャープ、『軽蔑』のジョルジア・モル。
カラー、ワイド。
穏やかなテーマ曲。
舞台はフィレンツェ
黒塗りの公用車が邸宅に着く。
中に乗っているのは英国大使のダンカン(アンソニー・クェイル)。
二人の子供はお隣りに預けている。
ダンカンは妻を亡くした。
そのことを小学生である長男のアンドレアには話すことにした。
しかし、未だ学校にも行っていない次男のミーロは「母親はどこかに出掛けた」と思っている。
喪服を着たダンカンが車から降りる。
隣りの家の庭では、アンドレアがミーロを肩車して遊んでいた。
その家のドーラがやって来る。
ミーロが「ママは?」と尋ねると、「まだお留守よ」と答えるドーラ。
一瞬、アンドレアの表情が曇る。
アンドレアとミーロが自分の家に戻って来る。
ダンカンが出迎える。
ミーロがママのことを父に尋ねる。
ダンカンはママの代わりに子供達の世話をさせるべく、家庭教師のルイザを雇っていた。
しかし、このおばさんを気に食わないミーロは、ルイザの膝を蹴っ飛ばす。
アンドレアを自室に呼ぶダンカン。
それにしても、広い家だ。
アンドレアに、涙を抑えながら「ママは病気が悪くなって亡くなった」と告げるダンカン。
聡明なアンドレアは既に察していた。
ダンカンは「ミーロには言うな」とアンドレアに釘を刺す。
その後、シャワーを浴びて出て来たアンドレアは、思わず、「ママ、タオルは?」と叫んで、我に返る。
ダンカンは毎日、公務で領事館に行っていた。
学校からアンドレアが帰って来る。
やんちゃなミーロは、ルイザの言うことを全く聞かず、家の中で暴れ回っていた。
アンドレアが、部屋からロケット花火を飛ばすところをミーロに見せる。
ミーロには熱があった。
ルイザは熱があるのに遊んでいる兄弟を厳しく責めた。
それにしても、ここは自然の風景が美しい。
アンドレアは、近くの湖に倒れている木の枝にぶら下がって遊んでいた。
夜、寝室のベッドでダンカンがミーロに絵本を読み聞かせていた。
アンドレアは、「ミーロには熱なんかなかったのに、ルイザが無理矢理寝かせた」と父に告げる。
兄弟は、ルイザのことを「魔女だ!」とまで言い放つ。
アンドレアは、「明日の柔道の試合を見に来て欲しい」とダンカンに頼むが、ダンカンは「仕事で行けない」と言う。
翌日、柔道の試合が行われていた。
アンドレアが出て来ると、どこからともなく、「英国人!」という声が。
本作は、結構人種差別の描写がある。
まあ、製作者側が差別をする意図ではなく、現実に差別があるということを描きたかったのだと思うが。
最近の日本でも、外国人に対する差別がヒドイ。
で、アンドレアが試合で優勢なところへ、ダンカンがやって来る。
父が来たことが気になって、アンドレアは試合に負けた。
その夜、アンドレアはダンカンを、「試合の時、勝ってたけど、パパが来て気が散ったから負けた」と悔しそうになじる。
まあ、その気持ちは分かる。
ダンカンは夜、子供達が寝静まった後、一人で自分の部屋にこもって、妻の肉声のテープを聞いている。
妻の顔は出て来ない(絵は出て来る)が、若くて美しい女性だったようだ。
まあ、僕も万が一、妻に先立たれたらと考えると、胸が潰れそうになるが。
その夜は雷が鳴り響いていた。
兄弟の寝室では、ミーロが雷を怖がっていた。
ミーロにママのことを訊かれても、答えられないアンドレア。
雷を怖がって眠れないミーロ。
そこへ、ダンカンがやって来る。
ダンカンが「お休み」と告げると、突然、ミーロが「ママは死んだ!」と叫ぶ。
「喋ったのか?」とダンカン。
「喋ってない!」とアンドレア。
ダンカンは、アンドレアが約束を破ったと思い込み、ミーロを寝室から連れ出す。
一人残され、ショックのあまり呆然としたアンドレアは、ママの部屋へ行く。
「どうしてパパは信じてくれないの?」とママの肖像画に話し掛ける。
ママは微笑んだまま、何も応えない。
翌日、ミーロが庭の高い所に昇っている。
アンドレアが載せたのであった。
それを見たルイザが怒る。
アンドレアは、自転車で庭をグルグル回っている。
ルイザに遮られ、倒れて、自転車が壊れてしまう。
ルイザは激怒して、アンドレアをビンタ。
アンドレアは、「ママなら喜んでくれた。」
ミーロは、「あの人を追い出す。」
この、母親を亡くした喪失感が切ない。
アンドレアはミーロを肩車して湖へ。
ミーロを載せてボートを漕ぐアンドレア。
ミーロがアンドレアに、「死ぬって何?」と尋ねる。
アンドレアは、「うまく説明出来ない。」
アンドレアは、いつもぶら下がっている倒木のところへやって来た。
「度胸試ししよう」とミーロに持ち掛けるアンドレア。
アンドレアは、倒木の枝にぶら下がり、「ミシッ」という音を三つ聞くまで我慢する。
これを「度胸試し」と呼んでいた。
ミーロは怖がって出来ない。
実は、これがラストへの重要な伏線なのだが。
二人は、家に帰ってきて、貯金箱を割る。
お金を持って、街へ買い出しに。
アンドレアが自転車で一人で行こうとすると、ミーロは「僕も一緒に行く!」と泣き出す。
「遠いから連れて行けないよ。」
結局、二人乗りで街へ。
所持金は合わせて5008リラ(?)。
店のウィンドーに、フィリップス製のラジオが展示されており、「16,000」の札が付いている。
それを横目に通り過ぎる兄弟。
二人は、今日がパパの誕生日だったので、パパのためにプレゼントを買おうとしていたのだ。
結局、街の写真屋(路上で営業)に頼んで、記念撮影をしてもらうことにした。
昨今は、携帯にカメラが付いているから、すっかり写真屋の仕事もなくなっただろうが。
多分、現像してプリントするまでに時間が掛かったのだろう。
2時間も経った。
急いで帰らないと、パパが先に帰って来てしまう。
帰りは上り坂だった。
二人乗りの自転車ではツライ。
そこにバスが通り掛かる。
アンドレアは、バスの縁につかまって、こがずに走る方法を思い付く。
しかし、そこへダンカンを乗せた公用車が通り掛かる。
「あれはアンドレアとミーロじゃないか!」
アンドレアは、「バスから離れろ!」と叫ぶ。
危険な行為をしたアンドレアを、ダンカンは厳しく叱り付けた。
「何をしてもいいが、ミーロを巻き込むな!」
そこへ、ミーロがプレゼントを持って来る。
包みを開けてみると、アンドレアとミーロの写真がフレームにキレイに収められていた。
喜ぶダンカン。
だが、アンドレアには厳しく叱り付ける。
「いちばんのプレゼントは、お前がいい子でいることだ。」
この辺の、上の子は厳しくされ、末っ子は甘やかされるという構図は、普遍的なものなのだろう。
僕は一人っ子なので、実感としてはないが。
結局、前の家庭教師は出て行って、新しい家庭教師がやって来た。
今度は若い女性だったが、二人とも、彼女を敵視していた。
そんな時、アンドレアはパパの部屋でママの声が入ったテープレコーダーを発見する。
何回も聴いているうちに、操作の仕方が分からず、間違って消してしまった。
さあ、大変!
これからどうする?
まあ、僕も亡くなった母の声がしばらく留守電に残っていたが、壊れて買い替えたので、もう聴くことは出来ない。
しかし、これは切ないねえ。
で、この先の展開が何とも言えない。
無邪気な弟が色々な事件を巻き起こす。
そして、無邪気であるが故に、救いがない。
ラストはめちゃくちゃ重いよ。
まあ、全体として見ると、美しい風景と、幼い兄弟のやり取りで、とても叙情的な作品には仕上がっているが。
でも、見た後は何とも言えない気持ちになる。
本作には、今なら絶対に許されないレベルの人種差別描写がある。
それから、これはどうでもいいが、イタリアの展望室付き特急セッテベロが出て来る。
名鉄パノラマカー小田急ロマンスカーの原型になった車両だ。
根が鉄道マニアなもので。

Incompreso - Trailer (1967)