この週末は、ブルーレイで『天使の詩』を見た。
- 出版社/メーカー: IVC,Ltd.(VC)(D)
- 発売日: 2014/10/24
- メディア: Blu-ray
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監督はルイジ・コメンチーニ。
脚本は、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』のピエロ・デ・ベルナルディとレオ・ベンヴェヌーティ。
撮影は、『さらばバルデス』のアルマンノ・ナンヌッツィ。
主演は、『ハムレット(1947)』『間違えられた男』『ナバロンの要塞』『アラビアのロレンス』『ローマ帝国の滅亡』のアンソニー・クェイル。
共演は、『バリー・リンドン』のジョン・シャープ、『軽蔑』のジョルジア・モル。
カラー、ワイド。
穏やかなテーマ曲。
舞台はフィレンツェ。
黒塗りの公用車が邸宅に着く。
中に乗っているのは英国大使のダンカン(アンソニー・クェイル)。
二人の子供はお隣りに預けている。
ダンカンは妻を亡くした。
そのことを小学生である長男のアンドレアには話すことにした。
しかし、未だ学校にも行っていない次男のミーロは「母親はどこかに出掛けた」と思っている。
喪服を着たダンカンが車から降りる。
隣りの家の庭では、アンドレアがミーロを肩車して遊んでいた。
その家のドーラがやって来る。
ミーロが「ママは?」と尋ねると、「まだお留守よ」と答えるドーラ。
一瞬、アンドレアの表情が曇る。
アンドレアとミーロが自分の家に戻って来る。
ダンカンが出迎える。
ミーロがママのことを父に尋ねる。
ダンカンはママの代わりに子供達の世話をさせるべく、家庭教師のルイザを雇っていた。
しかし、このおばさんを気に食わないミーロは、ルイザの膝を蹴っ飛ばす。
アンドレアを自室に呼ぶダンカン。
それにしても、広い家だ。
アンドレアに、涙を抑えながら「ママは病気が悪くなって亡くなった」と告げるダンカン。
聡明なアンドレアは既に察していた。
ダンカンは「ミーロには言うな」とアンドレアに釘を刺す。
その後、シャワーを浴びて出て来たアンドレアは、思わず、「ママ、タオルは?」と叫んで、我に返る。
ダンカンは毎日、公務で領事館に行っていた。
学校からアンドレアが帰って来る。
やんちゃなミーロは、ルイザの言うことを全く聞かず、家の中で暴れ回っていた。
アンドレアが、部屋からロケット花火を飛ばすところをミーロに見せる。
ミーロには熱があった。
ルイザは熱があるのに遊んでいる兄弟を厳しく責めた。
それにしても、ここは自然の風景が美しい。
アンドレアは、近くの湖に倒れている木の枝にぶら下がって遊んでいた。
夜、寝室のベッドでダンカンがミーロに絵本を読み聞かせていた。
アンドレアは、「ミーロには熱なんかなかったのに、ルイザが無理矢理寝かせた」と父に告げる。
兄弟は、ルイザのことを「魔女だ!」とまで言い放つ。
アンドレアは、「明日の柔道の試合を見に来て欲しい」とダンカンに頼むが、ダンカンは「仕事で行けない」と言う。
翌日、柔道の試合が行われていた。
アンドレアが出て来ると、どこからともなく、「英国人!」という声が。
本作は、結構人種差別の描写がある。
まあ、製作者側が差別をする意図ではなく、現実に差別があるということを描きたかったのだと思うが。
最近の日本でも、外国人に対する差別がヒドイ。
で、アンドレアが試合で優勢なところへ、ダンカンがやって来る。
父が来たことが気になって、アンドレアは試合に負けた。
その夜、アンドレアはダンカンを、「試合の時、勝ってたけど、パパが来て気が散ったから負けた」と悔しそうになじる。
まあ、その気持ちは分かる。
ダンカンは夜、子供達が寝静まった後、一人で自分の部屋にこもって、妻の肉声のテープを聞いている。
妻の顔は出て来ない(絵は出て来る)が、若くて美しい女性だったようだ。
まあ、僕も万が一、妻に先立たれたらと考えると、胸が潰れそうになるが。
その夜は雷が鳴り響いていた。
兄弟の寝室では、ミーロが雷を怖がっていた。
ミーロにママのことを訊かれても、答えられないアンドレア。
雷を怖がって眠れないミーロ。
そこへ、ダンカンがやって来る。
ダンカンが「お休み」と告げると、突然、ミーロが「ママは死んだ!」と叫ぶ。
「喋ったのか?」とダンカン。
「喋ってない!」とアンドレア。
ダンカンは、アンドレアが約束を破ったと思い込み、ミーロを寝室から連れ出す。
一人残され、ショックのあまり呆然としたアンドレアは、ママの部屋へ行く。
「どうしてパパは信じてくれないの?」とママの肖像画に話し掛ける。
ママは微笑んだまま、何も応えない。
翌日、ミーロが庭の高い所に昇っている。
アンドレアが載せたのであった。
それを見たルイザが怒る。
アンドレアは、自転車で庭をグルグル回っている。
ルイザに遮られ、倒れて、自転車が壊れてしまう。
ルイザは激怒して、アンドレアをビンタ。
アンドレアは、「ママなら喜んでくれた。」
ミーロは、「あの人を追い出す。」
この、母親を亡くした喪失感が切ない。
アンドレアはミーロを肩車して湖へ。
ミーロを載せてボートを漕ぐアンドレア。
ミーロがアンドレアに、「死ぬって何?」と尋ねる。
アンドレアは、「うまく説明出来ない。」
アンドレアは、いつもぶら下がっている倒木のところへやって来た。
「度胸試ししよう」とミーロに持ち掛けるアンドレア。
アンドレアは、倒木の枝にぶら下がり、「ミシッ」という音を三つ聞くまで我慢する。
これを「度胸試し」と呼んでいた。
ミーロは怖がって出来ない。
実は、これがラストへの重要な伏線なのだが。
二人は、家に帰ってきて、貯金箱を割る。
お金を持って、街へ買い出しに。
アンドレアが自転車で一人で行こうとすると、ミーロは「僕も一緒に行く!」と泣き出す。
「遠いから連れて行けないよ。」
結局、二人乗りで街へ。
所持金は合わせて5008リラ(?)。
店のウィンドーに、フィリップス製のラジオが展示されており、「16,000」の札が付いている。
それを横目に通り過ぎる兄弟。
二人は、今日がパパの誕生日だったので、パパのためにプレゼントを買おうとしていたのだ。
結局、街の写真屋(路上で営業)に頼んで、記念撮影をしてもらうことにした。
昨今は、携帯にカメラが付いているから、すっかり写真屋の仕事もなくなっただろうが。
多分、現像してプリントするまでに時間が掛かったのだろう。
2時間も経った。
急いで帰らないと、パパが先に帰って来てしまう。
帰りは上り坂だった。
二人乗りの自転車ではツライ。
そこにバスが通り掛かる。
アンドレアは、バスの縁につかまって、こがずに走る方法を思い付く。
しかし、そこへダンカンを乗せた公用車が通り掛かる。
「あれはアンドレアとミーロじゃないか!」
アンドレアは、「バスから離れろ!」と叫ぶ。
危険な行為をしたアンドレアを、ダンカンは厳しく叱り付けた。
「何をしてもいいが、ミーロを巻き込むな!」
そこへ、ミーロがプレゼントを持って来る。
包みを開けてみると、アンドレアとミーロの写真がフレームにキレイに収められていた。
喜ぶダンカン。
だが、アンドレアには厳しく叱り付ける。
「いちばんのプレゼントは、お前がいい子でいることだ。」
この辺の、上の子は厳しくされ、末っ子は甘やかされるという構図は、普遍的なものなのだろう。
僕は一人っ子なので、実感としてはないが。
結局、前の家庭教師は出て行って、新しい家庭教師がやって来た。
今度は若い女性だったが、二人とも、彼女を敵視していた。
そんな時、アンドレアはパパの部屋でママの声が入ったテープレコーダーを発見する。
何回も聴いているうちに、操作の仕方が分からず、間違って消してしまった。
さあ、大変!
これからどうする?
まあ、僕も亡くなった母の声がしばらく留守電に残っていたが、壊れて買い替えたので、もう聴くことは出来ない。
しかし、これは切ないねえ。
で、この先の展開が何とも言えない。
無邪気な弟が色々な事件を巻き起こす。
そして、無邪気であるが故に、救いがない。
ラストはめちゃくちゃ重いよ。
まあ、全体として見ると、美しい風景と、幼い兄弟のやり取りで、とても叙情的な作品には仕上がっているが。
でも、見た後は何とも言えない気持ちになる。
本作には、今なら絶対に許されないレベルの人種差別描写がある。
それから、これはどうでもいいが、イタリアの展望室付き特急セッテベロが出て来る。
名鉄パノラマカーや小田急ロマンスカーの原型になった車両だ。
根が鉄道マニアなもので。
Incompreso - Trailer (1967)