イギリス文学史I(第9回)『ユートピア』(その2)

英文読解
それでは、『ユートピア』の第1巻の冒頭部分を読んでみましょう。
下に「英文」「日本語訳」を記しました。
「英文」には、語注も付けてあります。

THOMAS MORE

More, Sir Thomas(名)モア(1478-1535/英国の政治家・作家/カトリック教会における聖人)

Utopia

Utopia(名)ユートピア(Sir Thomas More作Utopia(1516)中に描かれた理想郷)
(1)

(英文)
(テキスト23ページ、1行目)
BOOK ONE

book(名)巻、編 ・Book I 第1巻(book oneと読む)
one(形)(基数の1)(名詞の後に置いて)(一連のものの中の)1番目の ・Lesson One(=The First Lesson)第1課

(日本語訳)
第一巻

(2)

The most invincible Henry, King of England and eighth of that name, a prince richly endowed with all the qualities of an outstanding ruler, recently had a dispute with Charles, the most serene Prince of Castile, over matters that were far from trifling, and sent me as ambassador to Flanders to discuss and resolve them. I was to accompany and assist that exceptional man Cuthbert Tunstall, whom the King, to general acclaim, has recently appointed Master of the Rolls.

most(副)(主に2音節以上の形容詞・副詞の最上級を作って)最も、いちばん
invincible(形)征服できない、無敵の(=unbeatable)
Henry(名)ヘンリー(イングランド王の名) ・Henry VIII(在位/1509-47)(国教会を設立/Elizabeth Iの父)
England(名)イングランド(Great Britain島のScotlandとWalesを除いた部分)
eighth(代)(序数の第8番)(通例the ~)第8番目の人(もの)
that(形)(指示形容詞)(対話者同士がすでに知っているもの・人をさして)あの(⇔this)
prince(名)(通例単数形で)(その道の)第一人者、大家
richly(副)豊富に、豊かに、十分に
endow(他)(人に)(才能・特権などを)賦与する、授ける(通例受身)(with)
with(前)(委託を表わして)(もの)を(ゆだねて)
all(形)(複数名詞の前に置いて)あらゆる、すべての、みな
quality(名)(通例複数形で)(もの・人などの)特質、特性、特色(of) ・the qualities of a king 王者の(備えるべき)特性
outstanding(形)傑出した、実にすぐれた、抜群の
ruler(名)支配者、統治者、主権者
recently(副)最近、近ごろ、このごろ(現在完了か過去形の動詞とともに用い、通例現在時制の動詞とは用いない)
have(他)(通例動作・行為などを表わす不定冠詞付きの名詞を目的語として)(~)する、(~を)行なう
dispute(名)紛争、争議、抗争(with)(over)
with(前)(接触・交際・結合などを表わして)~と ・discuss a problem with a person 人と問題を話し合う ・join A with B AをBに接合する
Charles(フランス王)シャルル
serene(形)(ヨーロッパ大陸で王侯(王妃)に対する敬称に用いて)高貴な
prince(名)(しばしばPrince)(大国に守られた公国・小国の)王、君主、公 ・the Prince of Monaco モナコ
Castile(名)カスティリヤ(スペイン中部の古王国)
over(前)~に関して ・talk over the matter with ~とその事について話し合う
that(代)(関係代名詞)(人・ものを表わす先行詞を受けて通例制限用法で)(~する(である))ところの/(主語として)/(他動詞・前置詞の目的語として)(前置詞は関係詞節内の動詞の後に置かれる)
far from ~ 少しも~でない
trifling(形)くだらない、取るに足らない
send(他)(通例副詞句を伴って)(人・軍隊などを)行かせる、やる、派遣する
as(前)~として(続く名詞が官職・役目・資格・性質など抽象的概念を意味している時には無冠詞)
ambassador(名)(公式または非公式の)使節
to(前)(方向を表わして)(到達の意を含めて)~まで、~へ、~に ・go to ~に行く
Flanders(名)フランドル、フランダース(ベルギー北西部の5州とフランス北部の小地域を含み北海に臨む地方)
resolve(他)(問題・困難などを)解決する(=solve)
be(助動)(be+to doで)(義務・命令を表わして)~する義務がある、~しなければならない
accompany(他)(人が)(別の人に)同行する、ついていく
assist(他)(人を)手伝う、援助(助力)する
that(形)(指示形容詞)(関係詞節による限定をあらかじめ指定して)あの(日本語では訳さないほうがよい)(⇔this)
exceptional(形)並はずれた、非凡な、すぐれた(=extraordinary)
man(名)(修飾語句を伴って)(特定の仕事・性格などの)男性(of)
Tunstall(名)タンスタル Cuthbert Tunstall(1474-1559)(イングランドの聖職者/教会や官界の顕職につき、国王の至上権に黙従したが、カトリックの教義を奉じたため、Edward6世下で官位を奪われ、Mary1世の即位で回復し、Elizabeth1世下で再び失った)
whom(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)そしてその人(たち)を(に)(whomの省略は不可)
to(前)(結果・効果を表わす句を導いて)
general(形)世間一般の、社会の大部分に共通する、普通の
acclaim(名)絶賛
appoint(他)(~を)指名する、任命する(=assign)(+目+補)/(+目+to do)
master(名)(各種団体の)会長、団長、院長
roll(名)(the Rolls)保管書類収蔵所(もとはthe Master of the Rollsの、今はPublic Record Officeの所管) ・the Master of the Rolls 記録長官(控訴院の専任の裁判官の中で最上位の裁判官)

軽少ならざるある問題について、王者の万徳に秀でた不敗のイギリス王ヘンリー八世は最近明澄なるカスティリア公シャルルと争いたまい、その討議、解決のために、私を交渉委員として、抜群の人物カスバート・タンスタルの同伴、同僚として、フランダースに派遣された。タンスタルはみなの大好評のうちに王の大法官官房書記長に任命されたばかりの人だった。

(3)

I'll say nothing in praise of him, not because I'm afraid that the testimony of a friend will carry little weight, but because his integrity and learning are too widely celebrated for it to be necessary, unless, as the proverb has it, I wished to show the sun with a lantern.

I'll I willの短縮形
will(助動)(意志未来を表わして)(1人称の主語に伴い、発話時の話者の意志を表わし、約束・諾否・主張・選択などを示して)~するつもりである、~しようと思う
in(前)(行為・活動・従事を表わして)~して、~に従事して
praise(名)称賛、ほめる(られる)こと ・in praise of ~をほめて、たたえて
of(前)(目的格関係を表わして)(しばしば動作名詞または動名詞に伴って)~を、~の
not(副)(述語動詞・文以外の語句を否定して)~でなく
because(接)(副詞節を導いて)(なぜなら)~だから(である)、~なので
I'm I amの短縮形
afraid(形)(~を)心配して、気づかって(よくない事の起こる可能性のある時に用いる)(+that)
that(接)(名詞節を導いて)(~)ということ/(形容詞・自動詞などに続く節を導いて)(文法的に副詞節とも考えられるが、意味上他動詞相当句と考えて名詞節に入れる)/(主語節を導いて)/(目的語節を導いて)
testimony(名)(法廷で行なう)証言、口供書(of)
of(前)(主格関係を表わして)(動作の行為者、作品の作者を表わして)~が、~の
will(助動)(話し手の推測を表わして)~だろう
carry weight(意見などが)影響力がある、重きをなす
little(形)(不可算の名詞を修飾して)(aをつけないで否定的用法で)少ししかない、ほとんどない(⇔much)
but(接)(等位接続詞)(前の否定語・句・文と照応して)(~ではなく)て(not A but Bで「AではなくBである」の意を表わす表現)
his(代)彼の
integrity(名)高潔、誠実、清廉
learning(名)(またa ~)学問、学識、知識
too(副)(形容詞・副詞の前に置いて)(~するには)~すぎる、非常に~で(~する)ことができない(for)(to do)
widely(副)広く、広範囲に
celebrated(形)名高い、有名な
for(前)(不定詞の主語関係を示して)~が(~する)
unless(接)(否定の条件を表わして)~でない限り、もし~でなければ(通常if ~ notと言い換えられるが、現実とかけ離れた仮想の出来事・状態とともに用いることはまれ)
as(接)(様態・状態を表わして)~のように
proverb(名)諺(ことわざ)、金言 ・as the proverb says 諺に言うとおり
have it(~と)表現する、言う、確言する、主張する ・As Kant has it ~ カントの言うように~
wish(他)(~)したい(と思う)(+to do)
show(他)(~を)見えるようにする
with(前)(道具・手段を表わして)~を用いて、~で
lantern(名)手さげランプ、角灯、カンテラ

この人の賞讃に私はよけいなことばを費やすまい。それは、友情からの証言というものは人に信用されまいという恐れからではなく、彼の徳と学識は私の筆舌に尽くせぬほど偉大であり、また私が賞めたてる必要もないほどよく知られているからである。「太陽を蝋燭の光で照らし出そうとする」、という俚諺どおりのことをやっていると思われたいなら別であるが。

(4)

Those appointed by the Prince to deal with us, all of them men of high standing, met us at Bruges as arranged.

those(代)(指示代名詞)(修飾語句を伴って)(~の)もの、人々(⇔these)
appoint(他)(~を)指名する、任命する(=assign)(+目+to do)
deal(自)(人が)(問題・人を)処理する、扱う(with)
all(代)(複数扱い)(同格にも用いて)だれも、みな(通例代名詞の場合に用いる/代名詞の前に来る時はall of ~の形式をとる)
man(名)(修飾語句を伴って)(特定の仕事・性格などの)男性(of)
of(前)(of+名詞で形容詞句をなして)~の
high(形)(身分・地位など)高い、高貴な
meet(他)(折衝などのため)(人と)面会(会見)する
Bruges(名)ブリュージュ(ベルギー北西部西フランドル(West Flanders)州の州都)
arrange(他)(事を)前もって整える、用意しておく、手配する、準備する

相手方の主君の命で交渉役をおおせつけられていた委員たちは〔予定されていたとおり〕ブルージュで私たちと会見した。みな優れた人たちだった。

(5)

Their principal and leader was the Burgomaster of Bruges, a very striking figure. But their spokesman and guiding spirit as Georges de Themsecke, the Provost of Cassel, whose eloquence derived as much from natural flair as from training; he was deeply learned in the law and, thanks to his wit as well as long experience, a consummate negotiator.

their(代)彼ら(彼女ら)の
principal(名)長官、社長
leader(名)首領、主将
burgomaster(名)(オランダ・オーストリア・ドイツ・ベルギーなどの)市長
striking(形)目立つ、著しい
figure(名)(通例修飾語を伴って)(重要な)人物
spokesman(名)スポークスマン、代弁者、代表者
guiding(形)目印(指針)となる
spirit(名)(修飾語を伴って)(~の性格(気質)を持った)人、人物 ・a leading spirit 指導する(先頭に立つ)人
Georges ジョージ、ジョルジュ(男子名)
de(前)~の(of)、~から(from)、~に属する(母音の前ではd'/フランス(系)人などの姓で用いられ、元来は出身地を示す)
provost(名)(通例Provost)(大聖堂の)主席司祭
Cassel カッセル(ドイツ中部Hesse州の市)
whose(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)そしてその人(たち)の
eloquence(名)雄弁、能弁
derive(自)(~に)起源を持つ、由来(派生)する、(~から)出ている(from)
as much ~ as ~ ~と同じ程度に~
from(前)(出所・起源・由来を表わして)~から(来た、取ったなど)
natural(形)生まれつきの、生得の
flair(名)(またa ~)才能
deeply(副)深く
learned(形)学問(学識)のある、博学な、博識な ・She's learned in the law. 彼女は法律に通じている。
in(前)(性質・能力・芸などの分野を限定して)~において、~が
thanks to ~(前置詞的に)~のおかげで、~のせいで、のため(=owing to)
wit(名)(また複数形で)理知、知力
as well as ~ ~はもちろん、~も~も
long(形)(時間・過程・行為など)長い、長期にわたる(⇔short)
consummate(形)熟練した
negotiator(名)交渉者、折衝者

ブルージュの市長で豪邁なる人物がむこうの委員団の団長、頭領だったが、交渉の指導役、スポークスマンとなったのはカッセルの司教座大聖堂司祭団長のゲオルグ・デ・テムゼッケである。この人は修練によってのみならずたしかに生まれつき弁論に秀で、さらに法律にくわしく、また日ごろの実務経験のみならず天与の才能によって外交交渉での第一級の達人であった。

(6)

When, after several meetings, there were still various points on which we failed to agree, they took leave of us for some days and went to Brussels to consult with the Prince.

when(接)~する時に、~時(時を表わす副詞節をつくる)
there(副)(thereは形式上主語のように扱われるが、動詞の後に通例不特定のものや人を表わす主語が続く/「そこに」の意味はなく、日本語ではthere isで「~がある」の意になる)/(beを述語動詞として)
still(副)それでも(やはり)、なお(=nonetheless)
various(形)いくつかの、種々さまざまの
point(名)(通例単数形で)問題(点)、論点
on(前)(関係を表わして)~について、~に関する
which(代)(関係代名詞)(制限的用法で)~する(した)(もの、事)(通例「もの」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)/(目的格の場合)
fail(自)(人・ものが)失敗する、しくじる(⇔succeed)(+to do)
take leave of ~ ~にいとまごいする、あいさつをして(~と)別れる
for(前)(時間・距離を表わして)~の間(ずっと) ・for two months 2か月間
to(前)(到達の意を含めて)~まで、~へ、~に ・go to ~に郁
Brussels(名)ブリュッセル(ベルギーの首都/ECの本部がある)
consult(自)(人と)(~のことで)協議(相談)する、打ち合わせる、話し合う(with)

数回会合したにもかかわらず、いくつかの点について双方十分に同意できず、彼らは数日の猶予をということでわれわれに別れを告げ、カスティリア公の裁可を仰ぐためにブリュッセルにおもむいた。

(7)

In the meantime, as my own affairs dictated, I made my way to Antwerp.

in the meantime(2つのことが起こる)その間に
as(接)(原因・理由を表わして)~だから、~ゆえに
my(代)私の
affair(名)(するべき)仕事、用事
dictate(自)(通例否定文で)(人に)指図する
make one's way 進む、行く
Antwerp(名)アントワープアントウェルペン(ベルギー北部の貿易・工業都市で同名州の州都)

この間私は〔用事があって〕アントワープに出かけた。

(8)

Among those who visited me during my stay there, none was more welcome than Peter Giles, a native of that city, where he was much respected and already occupied high office, being fitted for the very highest; indeed, it's hard to tell whether this young man stands out more for his learning or for his moral character.

those(代)(whoなどの関係代名詞を伴って)(~な)人々
who(代)(関係代名詞)(制限的用法で)~する(した)(人)(通例「人」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)/(主格の場合)
during(前)(特定期間の)~の間のいつか、の間に(の)
stay(名)(通例単数形で)滞在、逗留(とうりゅう)
none(代)だれも~ない
more(副)(主に2音節以上の形容詞・副詞の比較級をつくって)(~より)もっと(than)
welcome(形)(客など)歓迎される
Peter(名)ピーター(男性名/愛称Pete)
Giles ジャイルズ(男子名)
native(名)(~の)生まれの人(of)
where(副)(関係副詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)そしてそこに(で)
much(副)(過去分詞を修飾して)大変に、非常に、大いに
respected(形)尊敬されている、りっぱな
occupy(他)(地位・役を)占める、(職に)つく(=hold) ・occupy a high position 高い地位についている
office(名)職務、任務、役目
fitted(形)(~に)適して、ふさわしく(for)
for(前)(用途・指定・適否を表わして)~に適した
very(形)(the、this、thatまたは所有格人称代名詞に伴って強意を表わして)まさしくその、ちょうどその、~にほかならない
it's it isの短縮形
it(代)(形式主語としてあとにくる事実上の主語の不定詞句・動名詞句・that節などを代表して)
hard(形)難しい、骨の折れる(⇔easy)(+to do)
tell(他)(can、couldなどを伴って)(~を)知る、わかる(+wh.)
this(形)(指示形容詞)この/(対話者同士がすでに知っているもの(人)をさして)(⇔that)
stand out(他より)(人・ものが)際立つ、すぐれている
more(副)(muchの比較級)もっと、より多く(⇔less)
for(前)(感情・趣味・適性などの対象を表わして)~に対して(する)、~を理解する
moral(形)(善悪の基準になる)道徳(上)の、倫理的な ・moral character 徳性、品性
character(名)人格、品性

同地に滞在中やってきた訪問客のなかで、私がいつも他のだれよりもありがたく思って迎えたのはアントワープ生まれのピーター・ヒレスであった。彼はあそこの市民のあいだで信用厚く、名望ある地位にあり、かつ最高の名誉を受けるに値する人物である。この若い人物は学問、品行のいずれにおいてより秀でているか、そう聞かれると私は返答に困るほどである。

(9)

For he's truly upright, exceptionally well-read and considerate to all, while to his friends he is so open-hearted, so warm, trustworthy and sincere, that you would be hard put to it to find anyone anywhere whom you might rate his equal in the attributes of friendship.

for(接)(通例コンマ、セミコロンを前に置いて、前文の付加的説明・理由として)という訳は~だから(=as、since)
he's he isの短縮形
truly(副)(特に形容詞を修飾して強意的に)本当に、実に、まったく
upright(形)正しい、正直な、高潔な
exceptionally(副)並はずれて、非常に
well-read(形)博識の
considerate(形)思いやりのある(⇔inconsiderate)
to(前)(行為・作用の対象を表わして)~に対して、~に
all(代)(複数扱い)すべての人々
while(接)(主節の後方に置き、対照を表わして)同時に(=whereas)
so(副)(程度・結果を表わして)(so ~ that ~で)(順送りに訳して)非常に~なので~
open-hearted(形)腹蔵のない、率直な
warm(形)温情のある、思いやりのある
trustworthy(形)信頼(信用)できる、当てになる(=reliable)
sincere(形)(人が)うそ偽りのない、言行一致の、正直な、誠実な(⇔insincere)
that(接)(副詞節を導いて)(so ~ thatの形で程度・結果を表わして)(非常に)~なので、~(する)ほど
would(助動)(仮定法(叙想法)で用いて)(条件節の内容を言外に含め陳述を婉曲(えんきょく)にして)~であろう、~でしょう
be hard put to it ひどく困っている(+to do)
find(他)(探して)(人・ものを)見つけ出す
anyone(代)=anybody(代)(疑問文・条件節で用いて)だれか
anywhere(副)(疑問文・条件節に用いて)どこかに(へ)
whom(代)(関係代名詞)(制限的用法で)~する(ところの)(人)(「人」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)
might(助動)(条件節の内容を言外に含めた主節だけの文で)(現在の推量を表わして)~するかもしれない
rate(自)(~と)見積もられる、評価される(+補)
equal(名)(地位・能力・年齢など)同等(対等)の人(in)
in(前)(範囲を表わして)~において、~内で
attribute(名)属性、特性、特質

というのは、彼は道徳的に最高の人物であると同時に博学多識、そのうえすべての人にたいして率直、友人にたいしては非常に開放的で、愛情、忠実、誠意に満ちた心の持主なので友情のすべての点で彼と比較できる人をさがし出すことは困難なほどだからである。

(10)

He has a rare modesty; no one is less given to deceit or better combines prudence with simplicity. On top of all this, his talk is so entertaining and witty without a hint of malice that, although I had been away for more than four months, my longing to see my own country again, and with it my home, my wife and my children, was eased by his engaging company and delightful conversation.

have(他)(部分・属性として)(特徴・性質・能力などを)もっている
rare(形)まれな、珍しい、めったにない(⇔common)
modesty(名)謙遜(けんそん)、謙虚、慎み深さ
no one(代)だれも~ない
less(副)(動詞を修飾して)より少なく
given(形)(~に)ふけって(to)
deceit(名)虚偽(=deception)
better(副)(wellの比較級)いっそう大いに、もっと
combine(他)(別々の性質などを同時に)兼ねる、兼ね備える(with)
prudence(名)思慮分別、賢明さ
simplicity(名)純真、無邪気、気取りのないこと
on top of ~ ~に加えて、~の上に
this(代)(指示代名詞)(すぐ前に言われたことをさして)こう、こういう、このこと
talk(名)話、談話、会話
entertaining(形)愉快な、おもしろい
witty(形)機知に富んだ
hint(名)(a ~)わずか(=trace) ・a hint of ~ わずかの~
of(前)(分量・内容を表わして/数量・単位を表わす名詞を前に置いて)~の
malice(名)(相手を傷つけようとする意図的な)悪意、敵意、恨み
although(接)~であるが、~だけれども、とはいえ
away(副)(位置を表わして)別の所にいて、不在で
more than ~ ~より多い、~を越える
four(形)(基数の4)4の、4個の、4人の
longing(名)(~したいという)切望、熱望 ・one's longing to see one's native country 故国を見たいという願い
country(名)(通例one's ~)本国、祖国、故国
with(前)(同時・同程度・同方向などを表わして)~とともに、~と同時
home(名)(生活の場としての)家、わが家、自宅(通例家族の生活・だんらんのイメージを持つ)
ease(他)(苦痛・心痛・緊張などを)やわらげる、軽くする、緩和する
engaging(形)人を引きつける、魅力のある
company(名)つき合い
delightful(形)楽しい、愉快な
conversation(名)会話、談話、対話、座談、会談

彼は珍しいほど慎ましやかで、彼ほどみせかけと縁の遠いものはいないし、これ以上の賢明さを秘めた単純さの持主はおらず、また彼の話は非常に軽妙酒落であり、かつ、邪気のない機知に富んでいる。だから彼との楽しいつきあいと魅力ある会話のおかげで、故郷、わが家、妻子らへの私のホームシックはずいぶんやわらいだ。じつは私は〔すでに四ヵ月以上も家を留守にして〕彼らとの再会の念にかられて居ても立ってもいられないほどだったのである。

(11)

One day I attended Mass in Notre Dame, the most handsome and frequented church in Antwerp, and after the service had ended I was preparing to return to my lodgings when I saw Peter talking with a stranger, a man verging on old age, sunburnt, with a shaggy beard and a cloak slung carelessly over his shoulder. It struck me from his face and attire that he was a ship's captain.

one(形)(基数の1)(時を表わす名詞の前に用いて)ある ・one day(過去か未来の)ある日
day(名)(副詞的に)~日 ・one day(過去の)ある日
attend(他)(儀式に)参列する
Mass(名)ミサ ・attend Mass ミサに参列する
Notre Dame(名)聖母マリア
handsome(形)(建物など)見事な、堂々とした
frequent(他)(場所に)しばしば行く、よく行く(集まる)
church(名)(キリスト教の)教会(堂)、聖堂
in(前)(全体との関係を表わして)~の中で、~のうちで
after(接)(~した)後に(で)、~してから
service(名)礼拝(の式)、お勤め
end(自)終わる、済む
prepare(他)(~を)準備する、用意する(+to do)
lodging(名)宿所、宿
when(接)(主節の後にwhenの導く従属節がくる時文脈上で)(~すると)その時(主節が進行形または過去完了形で表わされる場合に用いられる)
see(他)(~を)見る、(~が)見える(+目+doing)
talk(自)(人と)話をする、話し(語り)合う(with)
stranger(名)(見)知らぬ人、他人
verge(自)(~の状態に)近づく、今にも(~に)なろうとする(=border)(on)
on(前)(近接を表わして)~に接して、~に面して
sunburnt(形)小麦色に日焼けした
with(前)(所持・所有を表わして)~を持って(た)、~のある
shaggy(形)(髪・毛など)もじゃもじゃの、くしゃくしゃの
beard(名)あごひげ
cloak(名)(ゆったりとした)そでなしの外套(がいとう)、マント
slung(動)slingの過去形・過去分詞
sling(他)(通例副詞句を伴って)つり下げる、ぶら下げる、つり包帯でつる(しばしば受身) ・sling one's coat over one's shoulder 上着を肩にひっかける
carelessly(副)ぞんざいに
over(前)(位置を表わして)(接触した位置を表わして)~の上をおおって ・over one's shoulders 肩にかけて
strike(他)(考えが)(人の)心に浮かぶ ・It strikes me that ~. ~のような気がする。
from(前)(根拠・動機を表わして)~から(判断して)
face(名)顔色、顔つき
attire(名)装い、服装、衣装
that(接)(名詞節を導いて)(~)ということ/(主語節を導いて)
captain(名)船長、艦長、艇長

ある日、わたしはたいそう美しい建築で、おおぜいの人でいっぱいな聖母の教会でのミサに参列した。礼拝が終わって宿に帰りかけていたとき、私はピーターがひとりの見知らぬ男と話しているのをふと見かけた。この男は老年に近く、日焼け顔で長いあごひげをたくわえ、外套をさりげなく肩にひっかけて着ており、顔つきや服装からは船乗りと見えた。

(12)

When Peter caught sight of me he came over and greeted me. I was about to respond when he drew me aside and, pointing to the man with whom I had seen him talking, muttered, ‘Do you see this character? I was just about to bring him over to you.’

catch(他)(感覚を)感じとる、とらえる ・catch sight of ~を見つける
sight(名)(またa ~)見ること、見えること ・catch sight of ~を見つける
come over やってくる、渡来する
greet(他)(口頭・動作・書面などで)(人に)あいさつする、(人を)迎える
about(形)今にも(~)しかけていて(+to do)
respond(自)返答する、応答する
draw(他)(副詞句を伴って)(ものを)(ある方向に)引き寄せる ・He drew me aside.(こっそり話をするために)彼は私をかたわらに引き寄せた。
point(自)(~を)指さす、さす(to)
mutter(他)低い声でぶつぶつ言う(+引用)
do(助動)(be以外の動詞の疑問文に用いて)
character(名)(修飾語を伴って)(~な)人、人物
bring over(人・ものを)(遠くから)連れて(持って)くる

ピーターは私を見つけるやいなや、こちらにやって来て挨拶し、それに答えようとした私をちょっとかたわらにひきよせて〔私がさきほど見た彼の話し相手のほうを指さしながら〕言った。「あの人のことですがね。私は今ちょうどあの人をあなたにお引きあわせしようと思っていたのです」。

(13)

‘He would have been most welcome for your sake,’ said I.

most(副)(通例theを用いないで)はなはだ、非常に
your(代)あなた(たち)の、君(ら)の
sake(名)(for the sake of ~、for ~'s sakeで)~のための(に)(for the sake of ~、for ~'s sakeは目的・理由を表わす)
say(他)(人に)(~と)言う、話す、述べる、(言葉を)言う(+引用)

私は言った「私としてはほかならぬあなたがお引きあわせくださるのでしたら、もちろん大歓迎いたしたはずですよ」。

(14)

‘But for his own too, if only you knew the man,’ he answered, ‘for there's no man living today who can give you such an account of unknown peoples and lands, a topic that I know you are always keen to hear about.’

own(代)(one's ~/独立用法で)自分独特のもの(立場)
if only ~さえしていれば
answer(他)(人に)(~と)答える、答えて言う(+引用)
there's there isの短縮形
living(形)生きている(⇔dead)
today(副)現今(では)、今日(は)、このごろは(=nowadays)
give(他)(人に)(言葉・返事・命令・あいさつなどを)述べる、言う(+目+目)
account(名)(順を追ってする詳しい)話 ・give an account of ~の話をする、~の顛末(てんまつ)を話す
unknown(形)未知の、不明の、未詳の ・an unknown place 未知の場所
people(名)民族、種族、国民(文化的・社会的な共通性をもつ人々)
land(名)国、国土
topic(名)話題、話の種、テーマ、トピック
know(他)(~を)知る、知っている、(~が)わか(ってい)る(+that)
keen(形)熱心に(~)したがって(+to do)
hear(自)(~について)(消息を)聞く、聞いて知る(about)

「いや私がご紹介するのではなくて」と彼は言った。「もしあなたがあの人のことをご存じでしたら、あの人と知り合いになれるというだけで大歓迎なさったはずですよ。同時代人のなかで、未知の人々、未知の土地について彼ほどにたくさん話のできる人はいません。あなたはたしかそういう話を非常に聞きたがっていらっしゃいましたね」。

(15)

‘So, my guess wasn't such a bad one,’ I replied, ‘for at first glance I suspected that he was a ship's captain.’

so(副)(間投詞的に文頭に用いて)(前言を受けて)そうすると、つまり
guess(名)推測、推量、憶測
wasn't was notの短縮形
such(形)(程度を表わして)(形容詞+名詞の前で/副詞的に)あれほど(これほど)の、あんな(そんな)に、このように
bad(形)間違った
one(代)(基数の1)(既出の可算名詞の反復を避けて)(その)一つ、それ
reply(他)(~と)答える(+引用)
at first glance 一見したところでは
suspect(他)(~ではないかと)思う(思う内容は通例よくないこと、望ましくないことを表わす)(+that)
that(接)(名詞節を導いて)(~)ということ/(目的語節を導いて)

私は言った。「それなら私の見当はおおはずれではなかったわけですね。なぜかというとあの人を一目見るなり私はあれは船乗りに違いないと感じましたからね」

(16)

‘Then you are right off target,’ he said, ‘for he hasn't sailed like Palinurus, but rather like Ulysses, or, better still, Plato. For this man, Raphael as he's called, his family name being Hythloday, is far from incompetent in Latin and is especially well versed in Greek. He studied the latter more than Latin because he's devoted himself wholly to philosophy, and he realized that in that field there's nothing of any substance in Latin apart from certain pieces by Seneca and Cicero. Driven by a desire to see the world, he left to his brothers the patrimony that was his due at home (he happens to be Portuguese), attached himself to Amerigo Vespucci, and was his constant companion on the latter three of those four voyages which you now read about everywhere. Except that on the last one he didn't return with him: instead he nagged and pestered Vespucci, and so far prevailed that the latter let him be one of twenty-four men who were left behind in a fort at the furthest point of that final trip. So he was left there in order to gratify his own inclination, being more taken up with his travels than his last resting place. He had the habit of remarking, “He who has no grave is covered by the sky”, and “Whatever the place, it's the same distance from heaven.” Such an attribute might well have proved costly if God had not been gracious to him. Once Vespucci had departed, he travelled through many territories along with five companions from the fort, and at length, having arrived by a happy turn of fortune in Ceylon, he got from there to Calicut where he conveniently met up with some Portuguese ships and finally, against all expectation, regained his homeland.’

then(副)(通例文頭または文尾に用いて)それなら、(それ)では
right(副)まったく、すっかり
off(前)(離れた位置・状態を表わして)(場所)から(離れて、隔たって)、~を離れて、それて
target(名)(射撃などの)的(まと)、標的
hasn't has notの短縮形
sail(自)(通例副詞句を伴って)(船・人が)帆走する、航海する
like(前)~のような、~に似た
Palinurus(名)パリヌールス(Aeneasの船の舵手/舵をとっているうちに眠りの神に襲われて海に落ち、漂着したところのLucaniaの住民に殺された/イタリア南西部のPalinuro岬は彼の名にちなむという)
rather(副)どちらかと言えば、いやむしろ
Ulysses(名)ユリシーズ(Odysseusのラテン語名)
or(接)(訂正語句・コメントなどを導いて)いや~、あるいは(むしろ)
better still おまけに、その上
Plato(名)プラトン(427?-?347 B.C./ギリシアの哲学者)
Raphael(名)ラファエル、レイフィアル
as(接)(譲歩を表わして)~だけれども、~ながらも(=though)
call(他)(人を)(~と)呼ぶ、称する(+目+補)
family(形)家族の、家庭の
incompetent(形)無能な、役に立たない
Latin(名)ラテン語古代ローマ帝国の言語/中世に地方によって分化し、今日のイタリア語、フランス語、スペイン語ポルトガル語ルーマニア語などとなった)
especially(副)特に、とりわけ
versed(形)(通例well ~で)熟達して、精通して、通じて(in)
Greek(名)ギリシア
study(他)(~を)勉強する、学ぶ
latter(名)(代名詞的に用いて)後者(単数名詞を受ける場合は単数扱い、複数名詞を受ける場合には複数扱い)
devote(他)(devote oneselfで)(人が)(~に)身をささげる、専念する、熱中する(to)
himself(代)(再帰的に用いて)(再帰動詞の目的語に用いて)
wholly(副)まったく、完全に
philosophy(名)哲学、哲学体系
realize(他)(事実などを)はっきり理解する、悟る、了解する(+that)
field(名)(活動・研究の)分野、範囲(=discipline)
there's→there was
any(形)(否定文で名詞の前に用いて)(可算の名詞の複数形または不可算の名詞につけて)少しも(~ない)、何も(~ない)、だれも(~ない)
substance(名)資産、財産
apart from ~ ~は別として、~を除いて(=except for)
certain(形)(多くはないが)いくらかの、ある程度の
piece(名)1編の作品(詩、散文、作曲、劇)、1枚の絵、1個の彫刻(など)
Seneca, Lucius Annaeus(名)セネカ(4 B.C.?-A.D.65/ローマのストア派の哲学者・政治家・劇作家/Neroの教師・執政官)
Cicero, Marcus Tullius(名)キケロ(106-43 B.C./ローマの政治家・哲学者・雄弁家)
driven(形)(人が)駆り立てられた
desire(名)(~を求める)欲望、欲求(+to do)
leave(他)(人に)(財産を)残す(to)
to(前)(行為・作用の対象を表わして)(間接目的語に相当する句を導いて)~に
patrimony(名)(またa ~)世襲財産、家督
due(名)(通例単数形で)当然払われる(与えられる)べきもの
at home 自国で(に)、本国で(に)(⇔abroad)
happen(自)偶然(たまたま)(~)する(+to do)
Portuguese(形)ポルトガル(人、語)の
attach(他)(attach oneselfで)(時に望まれないのに)なつく、慕う(to)
Vespucci, Amerigo(名)ベスプッチ(1454?-1512/イタリアの航海者・探検家/地名のAmericaは彼のラテン名Americus Vespuciusに由来する)
constant(形)忠実な、節操の固い ・a constant friend 忠実な友
companion(名)仲間、友 ・one's constant companion いつも一緒にいる人(動物)、いつも持ち歩いているもの
on(前)(日・時・機会を表わして)~に
latter(形)(the ~、this ~、these ~)(時間的に)後のほうの、終わりの、末の、後半の
three(代)(基数の3)(複数扱い)3つ、3個(人)
of(前)(部分を表わして)~の中の
those(形)(thatの複数形/指示形容詞)(関係詞節による限定をあらかじめ指定して)あの(日本語では訳さないほうがよい)(⇔these)
voyage(名)(船・飛行機・宇宙船による)船、船旅、航海、航行、飛行
read(自)(~のことを)読んで知る(about)
except(接)(しばしばexcept thatで)~であること以外(に)は~、ということ(事実)を別にすれば
didn't did notの短縮形
instead(副)その代わりとして
nag(他)(人に)しつこくせがむ
pester(他)(人などを)(せがんだりして)悩ます、困らす、苦しめる
far(副)(程度に関して)はるかに、大いに、ずっと
prevail(自)功を奏する、首尾よくいく、うまくいく、効く
let(他)(使役を表わして)(人に)(働きかけて)(~)させる(+目+原形)
one(代)(基数の1)(単数形で)(特定の人(もの)の中の)一つ、1個、一人(of)
twenty(形)20の、20個の、20人の
leave behind(~を)置き忘れる、置き去りにする
fort(名)とりで、城砦(じょうさい)、堡塁(ほうるい)
furthest(形)=farthest(形)(farの比較級)(距離的に)最も遠い
final(形)最終の、最後の
so(接)(等位接続詞として)そこで、それで、~ので
leave(他)(副詞句を伴って)置き去りにする
in order to do ~する目的で、するために(は)
gratify(他)(欲望・気まぐれなどを)満たす
inclination(名)(~したい)気持ち、意向、思い
more(副)(~より)むしろ(than)
take up with ~ ~と仲よくなる
travel(名)旅行(すること)
last(形)(通例the ~、one's ~)生涯の終わりの、臨終の
resting place(名)(one's last ~)墓場
habit(名)~する傾向(たち)(of doing)
remark(他)(~だと)言う(+引用)
grave(名)墓、死体を埋める穴
cover(他)かばう、保護される
sky(名)(the ~、the skies)天(国)
whatever(形)(譲歩節を導いて)どんな~でも(=no matter what)
it(代)(非人称動詞(impersonal verb)の主語として)(特にさすものはなく、従って訳さないで文の形式的主語となる)(距離を漠然とさして)
from(前)(空間・時間などの起点を表わして)
heaven(名)天国、天界、極楽(=paradise/⇔hell)(古代の天文学では天を七つ(または九つ)の層と考え、その最上層が神・天使のすみかとされた)
attitude(名)(物事に対する)気持ち、考え、意見(to)
may well do 多分~だろう、(十分)~しそうだ
prove(自)(~であることが)(あとになって)わかる、(~と)判明する、(結果)(~に)なる(=turn out)(+補)
costly(形)犠牲(損失)の大きい
gracious(形)(神が)恵みあふれる、慈悲深い
once(接)ひとたび(いったん)~すると、~してしまえば
depart(自)(人・列車などが)出発する
through(前)(あちこち至る所を表わして)~じゅうを(に)、~の間を(あちこち)
territory(名)地方、地域
along with ~ ~と一緒に、同伴で
five(形)(基数の5)5の、5個の、5人の
at length ついに、ようやく
by(前)(原因を表わして)~のために
happy(形)幸運な
turn(名)(a ~)(情勢の)変化、成り行き(of)
fortune(名)運 ・by good fortune 幸運にも
in(前)(場所・位置・方向などを表わして)~において、~で ・in London ロンドンで(に)
Ceylon(名)セイロン島(インド東南方インド洋上の島/Sri Lanka共和国をなす)
get to ~ ~に達する
there(副)(前置詞・他動詞の目的語として/名詞的に)そこ、あそこ(⇔here) ・from there そこから
Calicut カリカット(インド南西部Kerala州のMalabar海岸にある市/植民地時代ヨーロッパ貿易の重要基地/かつてキャラコ(calico)の産地)
where(副)(関係副詞)(制限的用法で)~する、~した(場所、場合など)(「場所」「場合」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)
conveniently(副)便利に、都合よく
meet up(偶然)出会う、(動物などに)出くわす(with)
against(前)~にそむいて、~に反して
all(形)(否定的な意味の動詞や前置詞の後に用いて)一切の、なんらの
expectation(名)(時に複数形で)予期、予想、期待 ・against all expectation 予期に反して
regain(他)(場所・状態に)復帰(帰着)する、再び到着する
homeland(名)自国、母国、故国

「それもおおあてはずれ」と彼は言った。「というのは、あの人はパリヌールスのようにではなくユリシーズ、いやプラトンのように船旅をしたからです。ところでこのラファエルは――これは彼の呼び名では姓はヒュトロダエウスですが――、ラテン語にもかなり通じていないわけではないが、むしろギリシア語には非常に通暁しています〔ラテン語よりもギリシア語のほうをよく勉強したのは、彼が哲学に全心を傾倒し、この分野ではセネカキケロの多少の著作以外にはラテン語で価値あるものは皆無だということを知ったからです〕。彼は世界を見たいという望みから、故郷〔彼はポルトガル人です〕にあった自分の財産を兄弟たちにゆずり、アメリーゴ・ヴェスプッチの仲間になりました。そして最近あちこちで読まれているあの四回の航海のうちのあとの三回の航海にはずっと同行していました。その最後の航海からアメリーゴといっしょに帰国しませんでしたが、それまではいつも、アメリーゴの仲間だったのです。
帰ってこなかったというのも、彼は、最後の航海の終わりに城塞にとり残されることになった二十四人の中に自分もはいりたいと熱望し、ついにアメリーゴからその許可をとりつけたからです。それで彼はおきざりになりましたが、(故郷の)墓場よりもむしろ旅を選ぶというその心意気どおりになったわけです。というのも、彼はいつもつぎのようなことを口にしているからです。『柩を持たざるものは、天これをおおう』、それから、『天に到る道程はいずこからなりとも等し』。彼のこういう考え方は、もし神様が彼にたいしてめぐみ深くあらせられなかったら、彼にとって命とりになっていたでしょう。
ところで、彼はヴェスプッチの出発後、城塞に残った同伴のうちの五人といっしょにたくさんの国々を歴訪し、奇跡的な偶然のおかげでついにセイロンへたどりつき、そこからカリカットに出て来ました。そこで、ぐあいよくポルトガルの船団に出くわし、ついに期待もしていなかったのにふたたび祖国に帰って来たのです」

【参考文献】
Utopia (Penguin Classics)』Thomas More・著
ユートピア (中公文庫)』澤田昭夫・訳
新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)
リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)
リーダーズ・プラス』(研究社)