『夜と霧』

この週末は、ブルーレイで『夜と霧』を見た。

夜と霧 アラン・レネ Blu-ray

夜と霧 アラン・レネ Blu-ray

  • 発売日: 2020/04/24
  • メディア: Blu-ray
1955年のフランス映画。
監督は、『去年マリエンバートで』のアラン・レネ
撮影は、『鬼火』のギスラン・クロケと、『去年マリエンバートで』のサッシャ・ヴィエルニ
本作は32分のドキュメンタリーである。
十数年前にDVDで見て以来、二度目の鑑賞。
特に、後半は胸が痛くなる。
カラー、スタンダード・サイズ。
重苦しい音楽から始まる。
現在(撮影時点)はカラーで、戦時中はモノクロの記録フィルムで描かれる。
アウシュビッツの跡地。
のどかなヨーロッパの風景である。
1933年、ナチスヒトラーは収容所の建設に全国民の協力を求め、業者が群がる。
ヨーロッパ各地でユダヤ人が逮捕され、貨車に積まれて収容所へ。
途中、必死の落とし文をする者も。
死者も出た。
収容所では、囚人(ユダヤ人)達は裸にされ、丸刈りにされ、ナンバリングの入れ墨を彫られる。
政治犯と刑事犯は色分けされる。
政治犯の方が格上。
毎朝、点呼が行われるが、死者で毎日数が変わる。
囚人達は強制労働させられる。
食事はスープの配給。
トイレは、床に穴が開いているだけ。
ケガ人専用棟もある。
当然ながら、裸の人々は無修正である。
本作は、公開当時の日本では「残虐過ぎる」という理由でカットされたらしいが。
こういう歴史的な作品に勝手に手を加えてはいけない。
日本も多少は進歩した。
収容所内では密告が横行している。
見せしめの絞首刑も行われる。
囚人達は、抵抗するために組織を作った。
医務室では死の注射が行われ、外科病棟では手足切断などの人体実験が。
22万人の収容者リストからは、死者が出るたびに赤線で消される。
カポ(監視員)用の売春宿もあった。
独房では拷問が行われた。
1942年、ヒムラーが視察に訪れる。
「生産的に処分せよ」との命で、ガス室が作られた。
天井に残る爪痕。
死体の山。
ガス室や火葬場は囚人が作った。
遺品の山も、ものすごい数である。
骨は肥料に、女性の毛髪は毛布に加工された。
死体からは石鹸を作ろうとしたが、これはうまく行かなかったという。
1945年、収容所を拡張。
これにより、10万人の「都市」になる。
敗戦。
連合軍が到着。
死体の山はブルドーザーで除去され、大きな穴に埋められる。
このシーンを見るといつも、人間の尊厳とは何だろうと考えさせられる。
生き残った人々の解放。
戦後、カポも将校も「命令に従っただけ。責任はない」と言った。
では、責任は誰に?
900万の霊が漂う。
今は廃墟に。
戦争の狂気。
元々は人種差別から始まった悲劇である。
現在の日本にも、中国人や韓国人を公然と差別する勢力が存在する。
これが如何に危険なことであるか、本作を見ると、身にしみて分かる。

Night And Fog (1956) Trailer