『キッド』(1921)

この週末は、ブルーレイで『キッド』を見た。

キッド The Kid [Blu-ray]

キッド The Kid [Blu-ray]

  • 発売日: 2016/12/22
  • メディア: Blu-ray
1921年アメリカ映画。
製作・監督・脚本・主演は、喜劇王チャーリー・チャップリン
1971年のサウンド版では、音楽もチャップリン自身が担当している。
なお、ブルーレイに収録されているのはサウンド版。
僕が子供の頃、祝日の午前中に、NHK教育テレビで白黒映画時代の名作を放映していた。
チャップリンの代表作も、大抵はその時に見たと思う。
あと淀川長治さんの『日曜洋画劇場』でも見たような記憶が。
ただ、『キッド』を見たかどうかは記憶にない。
モノクロ、スタンダード・サイズ。
哀愁漂う音楽が流れる。
本作は、映画史上初めて、喜劇と悲劇を融合させた作品だという。
チャップリンの作品の、ドタバタ喜劇の中に、人生の哀愁を感じさせるような作風は、本作で既に完成している。
画質は、100年前の映画とは思えないほどいい。
映画史に残る喜劇王の作品だから、威信にかけて修復したのだろう。
慈善病院を出たある婦人(エドナ・パーヴァイアンス)は、車の中に自分が産んだ赤ん坊を置き去りにする。
ギャング達が車を盗むが、後ろの座席に赤ん坊がいるのに気付いて、赤ん坊を捨てる。
2階の窓からゴミを投げ捨てるような環境で、ゴミだらけの街角に、ギャングは赤ん坊を捨てる。
それを、浮浪者(チャーリー・チャップリン)が見付ける。
余談だが、この時代の人達は、靴底でマッチをする。
今の日本で売っているマッチとは、素材が違うんだな。
チャップリンの作品はみんなそうだが、セリフがなくても、役者の動きだけで物語が理解出来る。
これは、サイレント時代に培われたのだろう。
説明のための字幕は、かなり少ない。
昨年、「日本の喜劇王」とも言える志村けんが亡くなった時、彼のコントは身体の動きだけで笑わせるから、海外でもウケると、追悼番組で言っていた。
ドリフの笑いは、かなりチャップリンの影響を受けているからな。
赤ん坊を置き去りにしたチャップリンは、警官(トム・ウィルソン)に見付かり、仕方なく、この子を連れて帰るハメに。
とんでもないスラムの屋根裏部屋にチャップリンは住んでいる。
本当に貧乏なんだな。
とにかく貧しい様が伝わって来る。
だからこそ、後半が活きて来るのだが。
赤ん坊の洋服には母親からの手紙が挟まれており、それを読んだチャップリンは、この子を育てる決心をする。
母親がやはり後悔して、赤ん坊を置いた車を探しに来るが、既に手遅れであった。
チャップリンは、一人暮らしだったが、シーツや椅子を使って、自分でオムツやおまるを作る。
5年後、5歳になったキッド(ジャッキー・クーガン)。
この時代のガスは、各家庭に設置されているメーターに、25セント硬貨を入れると使えるようになるらしい。
風呂がないので、チャップリンはシーツを切って、キッドの垢をこする。
二人はグルになって「仕事」をしている。
キッドが家の窓ガラスに石を投げて割り、チャップリンがその家にガラスを売って修理する。
しかし、キッドが石を投げようとしているところを警官に見付かる。
更に、チャップリンも怪しまれ、ついに二人がグルだとバレる。
二人の「仕事」は上々だったが。
ある時、チャップリンがガラスを修理し、その家の夫人と談笑していると、何と、そこは例の警官の家だった。
一方、キッドの母親は、今や大スターになっていた。
楽屋に花束を運んで来た黒人の子供にチップを弾む母親。
彼女は不幸な人達に優しい手を差し伸べた。
ある時、他の母親の連れている赤ん坊を見て、我が子のことを思い出す。
その頃、キッドはチャップリンの部屋でパンケーキを焼いていた。
チャップリンはベッドの上でタバコを吸っている。
そして、穴の開いたフトンに首を通すと、そのまま服になる。
ボロボロの革靴。
キッドは、ナイフにはちみつを塗って舐める。
チャップリンは、大きなバターの塊を載せて、パンケーキを食べる。
それから、キッドは、あるおばさん(実は母親)からもらった犬のぬいぐるみをガキ大将に取り上げられ、大ゲンカになる。
チャップリンはキッドを応援する。
自分よりもかなり身体の大きなガキ大将に勝ったキッド。
見た目ほどでもない。
今度は、ガキ大将のいかつい兄貴がやって来て、チャップリンに言いがかりをつける。
チャップリンは、無理矢理キッドが負けたことにするが、兄貴の怒りは収まらない。
今度は、チャップリンと兄貴のケンカになる。
チャップリンは持ち前の軽い身のこなしで、いかつい兄貴に勝利したが…。
キッドが病気になってしまった。
さあ、これからどうなる?
チャップリンの映画は、今見てもやはり面白い。
スタンリー・キューブリックは、「チャップリンは、内容はあるが形式がない。エイゼンシュテインは、形式はあるが内容がない。どちらを取るかと言われれば、私はチャップリンを取る」と言っていた。
子役のジャッキー・クーガンの演技が素晴らしい。
それから、赤ん坊の演技も素晴らしい。
本作は、信じられない回数の撮り直しをしたらしいので、赤ん坊の動きも、膨大なフィルムを回して、ストーリーに合う部分だけを選んで編集したのだろう。
民生委員がキッドを連れて行き、チャップリンが必死で取り戻そうとするシーンは、『イントレランス』を思い出す。
血がつながっていなくても、一生懸命育てた子供は可愛いんだな。
当然のように、本作は世界中で大ヒットした。
今から、ちょうど100年前の映画である。
「ほほえましく、たぶんひと粒の涙をそそる映画」
「慈善病院」
「女―その罪は母たることであった。」
「身よりもなく…」
「男は―」
「朝の散歩」
『とんちき野郎!』
『失礼、落としものですよ。』
「この赤ん坊をよろしくお願いします。」
『あんたの子?』
『名前は?』
『ジョンです。』
「5年の歳月が流れた。」
『ガスのメーターに25セント玉をいれなさい。』
『今日、歩く道は分かっているね?』
「おかしいぞ。」
「仕事は上々。13軒」
「勤務が終わって。」
「あの彼女は、いまや大スターとなった。」
「昨夜の公演をお祝いして」
「興業主グイド」
『批評も読みたまえ―すばらしい!』
「彼女は不幸な人たちに優しい手を差しのべた。」
「兄貴がやってくる。」
『悪い子だ。』
『のしちまえ。』
『お前のガキが俺の弟をのしたら、俺がお前をのすぞ。』
『あなたは、この人を殴りはしないわね。』
『おぼえている? 人もし、汝の右の頬を打たば、左の頬を出せ。』
「みごとな退場」
『奴はここにはいないな。』
『この子は病気です。すぐ医者をお呼びなさい。』
以下、後半。

Charlie Chaplin - The Kid (Trailer)