『有頂天時代』

この週末は、ブルーレイで『有頂天時代』を見た。

1936年のアメリカ映画。
監督は、『ジャイアンツ』のジョージ・スティーヴンス。
主演は、『コンチネンタル』『トップ・ハット』『イースター・パレード』『バンド・ワゴン』『パリの恋人』『タワーリング・インフェルノ』の大スター、フレッド・アステアと、『コンチネンタル』『トップ・ハット』のジンジャー・ロジャース
一連のアステア、ロジャース共演の6作目。
共演者も同じような人ばかり。
同じ時期に続けて見ると、内容が混じる。
モノクロ、スタンダード・サイズ。
明るい陽気な音楽から始まる。
画質はイマイチ。
舞台でタップ・ダンスを踊るダンサーのラッキー・ガーネット(フレッド・アステア)。
今日は同郷のマーガレットとの結婚式。
彼は結婚のため、ダンス・チームを抜けることにする。
それを阻止したい団員達は一計を案じる。
「スクワイア」というファッション雑誌に結婚式の正装であるモーニングのイラストが載っている。
当時のファッション雑誌は、写真ではなく、イラストだったのか。
イラストというのが、この話しのミソなのだが。
ちなみに、僕は学生の頃、『エスクァイア』というファッション誌を定期購読していた。
で、団員が、このイラストのズボンの裾に線を描き入れて、シングルをダブルにしてしまう。
正装の時はシングルというのは常識だが。
なお、僕はスーツの裾はダブルを好む。
舞台を終えて、直ちに駆け付けないと結婚式に間に合わないのに、団員達はラッキーにこの雑誌のイラストを見せ、「シングルの裾は時代遅れだ!」と主張する。
それを真に受けたラッキーは、モーニングのズボンを脱いで、仕立て屋に持って行かせる。
既に1時間の遅刻である。
余談だが、僕が学生の頃、名古屋で従兄弟の結婚式があった。
母の代わりに、僕が出席するように頼まれ、母からご祝儀と片道の新幹線代(帰りは、「お車代」が出るという前提)が送られて来た。
当時、カネがないのに酒飲みという、怠惰な学生生活を送っていた僕は、あろうことか、その結婚式の前夜、茅ヶ崎の友人と飲んでいた。
駅前に、行き付けの居酒屋があったのだ。
で、支払いが足りず、母から送られて来た新幹線代に手を付ける。
翌朝、早起きして、特急料金は既に飲み代に消えてしまったので、何と、茅ヶ崎から東海道線の各停を乗り継いで、名古屋に向かった。
当然、式には間に合わず、披露宴に遅れて駆け付け、二日酔いでビールを飲むハメに。
しかも、学生の僕はスーツを持っておらず、紺ブレにチノパンで出席したのだが、後に、親戚一同の集合写真を見た母は、「はれの日に遅刻して、しかも、替えズボンで行くなんて!」と激怒したのであった。
未だに、親戚一同が集まる場に行くと、「お前はあの時、遅刻したな」とからかわれる。
若気の至りは、一生尾を引くのであった。
話しを映画に戻す。
式場から「早く来い!」という電話が掛かって来るが、それを取った仲間は、ラッキーに伝えない。
一方、モーニングのズボンを直せと言われた仕立て屋は激怒。
「こういうズボンの裾がダブルだなんて、聞いたことがない!」
結局、裾はシングルのまま、時間だけが過ぎ去る。
結婚式場の客は帰り始め、式は中止に。
急いでラッキーが式場に駆け付けた時には、既に客は全員帰った後だった。
マーガレットの父親は激怒し、「1万ドルでも娘はやらん!」
しかしながら、ラッキーがニュー・ヨークで成功し、2万5000ドル稼いで来たら、結婚しても良いと告げる。
またまた余談だが、僕が細君と結婚する時、僕の家族の方には早くから細君を紹介していたのだが、細君のご家族には、結婚の挨拶をしに行く時が初対面であった。
まあ、細君の実家には頻繁に電話をしていて、細君のご両親に電話を取り次いでもらったことは何度もあるが、まともに話したことは一度もなかった。
特に、細君のお父さんは気難しい人だと聞いていた。
僕は、自慢じゃないが、大学中退なので、この結婚の挨拶の時に、「こんな馬の骨に娘はやれん!」と言われたらどうしようと思って、前夜は緊張で眠れなかった。
結局、心配は杞憂に終わり、お父さんは、女ばかりの家族(細君のお母さん、細君、母方のお祖母さん)の中で、ようやく男の話し相手を見付けたというように、気さくに色々と話してくれて、ホッとしたのだが。
その時のストレスだろうか、翌日から頭皮に湿疹が出来て、皮膚科に通うハメになった。
ああ、話しがどんどん逸れるねえ。
結婚というのは、大変なものだということだ。
話しを映画に戻す。
ニュー・ヨーク行きの列車の切符を買おうとしたラッキーの元に団員が駆け付け、「結婚式中止に賭けていた」と言って、ラッキーからチケット代を取り上げる。
チケットが買えないまま、列車が発車してしまったので、ラッキーは貨物列車に飛び乗る。
相棒のポップも一緒に飛び乗る。
ラッキーは、タバコの自販機の前で、通りがかりの女性にコインの両替を頼む。
その女性こそ、ダンサーのペニー・キャロル(ジンジャー・ロジャース)なのだが。
ラッキーとポップは、自販機を殴って、タバコと釣り銭を獲得する。
今なら、直ちに警報が鳴って、現行犯逮捕だろう。
手品が得意なポップは手癖が悪く、ペニーにコインを返すフリをしてポケットに入れる。
彼女は、「この人(ラッキー)がコインを盗んだ」と訴えるが、正装のラッキーを見て、「この方はそんなことをしない」と取り合わない。
逆に、彼女のことを「公務妨害で連行するぞ!」と脅す。
ヒドイ時代だ。
ラッキーは、彼女が講師として務めているゴードン・ダンス・スクールにコインを返しに行く。
ここの校長は厳しく、ペニーに「今度、遅刻したらクビだ!」と宣告する。
そこへ訪ねて来たラッキーは、彼女に接近するため、ダンスを教わりに来たフリをする。
コインの一件でラッキーを心良く思わないペニーは、露骨に冷たく当たる。
それを見た校長は、「生徒を追い出すとは何事だ!」と、解雇権を濫用して、彼女をクビにしようとする。
ラッキーは、それを止めようと、「彼女のお陰で、こんなにダンスができるようになりました!」と、見事なタップ・ダンスを披露する。
それを見た校長は驚いて、ペニーのクビを撤回する。
そして、二人に「シルバー・サンダル」という地元で有名なナイト・クラブのオーナーにオーディションを受けさせるように頼む。
ラッキーは、ポップにタキシードを調達してくれと頼む。
ラッキーは、ペニーに見栄を張るため、高級ホテルに泊まるフリをする。
一方、ギャンブラーでもあるポップは、なけなしのカネを博打で擦った。
代わりに、タキシードを着たギャンブラーの友人を連れて来る。
3人は、カードで勝負を始める。
ラッキーは、またもオーディションに遅刻。
訪ねて来たペニーは、ラッキーがカード賭博に興じているのを見て、憤慨する。
本音は仲直りしたいペニーだが、やはり怒っている。
で、ラッキーがピアノの弾き語りを聴かせる。
仲直りする二人。
何だかなあ。
で、二人が一緒に踊ろうとしてホールに行くと、ペニーに惚れている楽団の指揮者・ロメロは、ペニーがラッキーと踊るなら演奏をしないと言い出す。
「君が誰かと踊ると妬けるんだ。愛してる。」
「変な愛情表現。」
ペニーはつれない。
ラッキーとポップは、楽団のオーナーであるレイモンドから所有権を奪おうと、またもやギャンブルを持ち掛ける。
インチキ手品師のポップは、インチキなカードを引いて、ギャンブルに勝利。
レイモンドから楽団の所有権を奪い取る。
「僕は楽団のオーナーになった!」
「リカルド氏のご厚意でワルツを演奏してくれます。曲は『スイング・タイム』!」
踊るラッキーとペニー。
さあ、これからどうなる?
話しの展開は、ややぎこちない。
まあ、このシリーズは毎度そうだが、ご都合的である。
ラッキーは、自分が婚約していることをペニーに言わないが、これってどうなんだろう。
婚約者も、あまりにないがしろにされていて、かわいそう。
まあ、基本はコメディーなのだが。
相変わらず、クライマックスのダンス・シーンが長い。
まあ、ミュージカルだから当然なのだが。
フレッド・アステアが顔を黒塗りにして踊るシーンがあるが、今なら、黒人団体からクレームが来て、一発アウトだろう。
伏線はラストで回収される。
アカデミー賞歌曲賞受賞。

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