『地球に落ちてきた男』

この週末は、ブルーレイで『地球に落ちてきた男』を見た。

1976年のイギリス・アメリカ合作映画。
監督は、『赤い影』のニコラス・ローグ
原作は、『ハスラー』のウォルター・テヴィス。
主演は、『戦場のメリークリスマス』のデヴィッド・ボウイ
共演は、『アメリカン・グラフィティ』のキャンディ・クラーク。
有名な映画だが、何故か今まで見る機会がなかった。
先日、ブルーレイが発売されたので、早速購入して、見ることにした。
大気圏に突入する宇宙船の映像から始まる。
宇宙船は、猛スピードで湖に落下。
宇宙人らしき男(デヴィッド・ボウイ)は、ダッフル・コートを着て、フードをかぶっている。
彼は、郊外の道路を歩く。
デヴィッド・ボウイは、如何にも宇宙人っぽい表情をしている。
バックには、電子的な音楽が流れる。
彼は、雑貨屋のような店に入り、妻からもらった指輪を売る。
20ドル。
それから、彼は川べりで、川からカップですくった水をゴクゴクと飲む。
よく川の水なんか飲めるな。
ニコラス・ローグが撮影監督出身だけあって、本作の映像は美しい。
画になっている。
彼は、100ドル札をたくさん持っている。
さっきの指輪も、いっぱいある。
作品全体が不思議な雰囲気だ。
ここまで、セリフも余りない。
彼は、ケント・デリカットのような凸レンズのメガネを掛けたオリバー弁護士の基を訪れる。
オリバー弁護士は特許に通じている。
宇宙人は、弁護士の前でトマス・ジェロームニュートンと名乗る。
ニュートンは、持参して来た書類をオリバーに読ませる。
オリバーは驚愕した。
その書類には、RCAコダック、デュポンを手中に出来る九つの特許について記されていたのである。
「おそらく3億ドル以上になるだろう」とオリバーは言う。
更に、ニュートンは、特許の売り込みについては全てオリバーに任せ、収益の一部を渡すという、とんでもない条件を提示する。
インチキな歌舞伎を観るニュートン
本作には、至る所に日本趣味(但し、ちょっと怪しげ)が見られる。
どうして、欧米の映画で日本を描くと、みんな奇妙に見えるんだろう?
一方、化学の博士号を持つ大学教授のブライスは、教え子である女子大生と、激しいメイク・ラヴを繰り広げていた。
行為の最中に、その様子をカメラでバンバン撮影。
すると、そのカメラに入っていたのは、撮影したものが即座に現像されるフィルムだった。
ブライスは驚愕する。
この頃には、未だポラロイド・カメラはなかったのかな?
ちなみに、本作のファック・シーンは完全無修正である。
かつては、当局の検閲によって、ファック・シーンには強制的にボカシが入れられたものだが。
時代は変わった。
ワイセツではない、芸術なのだ。
大島渚は国家権力と闘った!
我々は勝利した!
この世にワイセツなどない!
誰にだってチンもマンも付いているではないか!
話しが逸れてしまった。
今度は、自動車電話で話すニュートン
ニュートンは、特許で莫大なカネを得て、ワールド・エンタープライズという会社のオーナーになっていた。
自動車電話も、昔は高価で、庶民には一切縁がなく、大企業の社長が使うものというイメージであった。
それが、ほんの2、30年で、小学生までもがスマート・フォンを持つようになったのである。
時代の流れは早い。
田舎のホテルに着くニュートン
彼は、車やエレベーターのような高速で移動する乗り物がキライであった。
ニュートンは、エレベーターの中で倒れる。
その時、案内係を務めていた町の娘メリー・ルー(キャンディ・クラーク)は、彼を部屋まで運び込む。
デヴィッド・ボウイは細いから、女性でも持ち上げられるのだろう。
ニュートンは部屋で嘔吐する。
メリー・ルーは、彼を介抱する。
彼女はアルコール好きだったが、ニュートンは水しか飲めなかった。
彼は、メリー・ルーに、ホテルの部屋にテレビを運び込むように頼む。
で、この後、簡単に言うと、ニュートンとメリー・ルーは恋仲に陥るのであった。
さて、ブライスは、ワールド・エンタープライズに何度も入社希望の手紙を送っていた。
その合間に、相変わらず、女子大生と関係を持ちまくる。
今の日本なら、マスコミの格好の餌食になるだろう。
ニュートンはと言うと、ホテルの部屋で何台ものテレビに囲まれる生活。
こうやって、地球の風物を吸収しているのだろう。
メリー・ルーに、一緒に教会に行こうと誘われるが、教会には行かない。
彼女とニュートンとの関係は、奇妙なものであった。
実は、ニュートンには、故郷の星に残して来た妻子がいるのだ。
しかし、ついにメリー・ルーと教会に行く。
本業はミュージシャンなのに、わざと音程の外れた讃美歌をうたう。
そして、彼は故郷の星を思い出していた。
緑、砂漠、宇宙服のような衣装を着た家族…。
本作には、ホームシックを思わせるような映像が何度も挿入される。
ニュートンは、メリー・ルーを連れて、自分が最初に墜落した場所へ行った。
ワールド・エンタープライズは、ニュートンの指示で、いよいよ宇宙計画に着手した。
ニュートンは、湖畔に家を建てて、メリー・ルーと暮らし始める。
インチキな和風の部屋。
ニュートンは、天体望遠鏡をメリー・ルーにプレゼントする。
喜ぶ彼女。
最初はぎこちなく見えた二人も、ようやく恋人同士に見えるようになる。
激しいメイク・ラヴ。
デヴィッド・ボウイのペニスが一瞬映る(無修正)。
だが、話しをしてくれないニュートンに、メリー・ルーは感情を爆発させ、半狂乱になる。
この頃から、ニュートンはアルコールを飲むようになった。
彼は、宇宙計画の中心にブライスを据える。
ブライスは、謎の多いニュートンの正体を疑い始めた。
ニュートンは、自分のことをイギリス人と言っていた。
ブライスは「Through hardship to the stars.」をラテン語で言ってみる。
これは、英国空軍の標語だから、ニュートンも知っているはずだった。
でも、彼は知らない。
彼が見ているテレビ番組には、そんな言葉は出て来なかったのだろう。
このブライスという人物は、なかなか曲者であった。
高い知能を持っていても、心根はピュアなニュートンは、これからどうなるのか。
この後、彼の正体を宇宙人だと知ったメリー・ルーが、失禁するシーンもある。
ニュートンのトカゲのような目には、カラー・コンタクトを入れて、人間に変身していた。
当時のカラー・コンタクトは、数分間しか着けていられなかったそうだから、撮影は大変だっただろう。
ニュートンの星は干ばつが激しく、水を求めて地球にやって来たということが、ようやく明かされる。
本作を見ていると、改めてSFはアイディア勝負だと思わされる。
本作には、大した特撮シーンはない。
CG全盛の現在なら、これはSFとは認められないかも知れない。
それでも、見事にイマジネーションで勝利している。
全体として、やや冗長な部分もあるが。
出来るだけ説明を廃し、映像で語っている。
ラストは、何というか、切ない余韻が残る。
独特な映画である。
まあ、宇宙人は、なかなか理解されないということか。
昨今の日本では、マスコミも国民も、理解しようとすらしない(特に、ネトウヨ)。
ただ、排除するだけだ。