『ハリーの災難』

この週末は、ブルーレイで『ハリーの災難』を見た。

1955年のアメリカ映画。
監督は、『裏窓』『泥棒成金』『めまい』『北北西に進路を取れ』『サイコ』『鳥』『フレンジー』『ファミリー・プロット』のアルフレッド・ヒッチコック
音楽は、『めまい』『北北西に進路を取れ』『鳥』『タクシードライバー』のバーナード・ハーマン
衣装は、『裏窓』『泥棒成金』『十戒』『めまい』『鳥』『明日に向かって撃て!』『大空港』『スティング』『ファミリー・プロット』のイーディス・ヘッド。
主演は、『放射能X』のエドマンド・グウェン。
共演は、『チャンス』のシャーリー・マクレーン
テクニ・カラー、ヴィスタ・ヴィジョン。
画質は素晴らしい。
軽快ながら、やや不気味なテーマ音楽。
舞台はアメリカ・ヴァーモント州。
もみじが美しい景色。
機関銃のオモチャを持った一人の男の子アーニー・ロジャース。
本物の銃声に驚く。
地面に、スーツ姿の男の死体が横たわっているのを見付ける。
キレイな革底の靴。
ウサギ狩りに来た元船長のアルバート・ワイル(エドマンド・グウェン)も死体を見付ける。
「わしがやったのか?」
要するに、ウサギを撃ったつもりが、人間を撃ってしまったんだな。
動転して、死体を動かそうとすると、ミス・グレヴリー(ミルドレッド・ナトウィック)という中年女性に見付かってしまう。
「これは事故だ」と説明するアルバート
そこへ、アーニーがママのジェニファー(シャーリー・マクレーン)を連れて来る。
アルバート達、急いで隠れる。
シャーリー・マクレーンが、今の姿からは信じられない程、キレイだ。
「ハリー、こんな姿になって。」
ジェニファーは、死体の男を知っているようだ。
親子が立ち去ると、今度は初老の紳士が本を読みながら歩いて来る。
医者のグリーンボーだ。
死体につまづくが、本に夢中で、気付かない。
アルバート達は、隠れて様子を見ている。
今度は、ホームレス風のじいさん登場。
このじいさんは靴を履いていない。
死体から、おあつらえ向きの立派な革靴を盗む。
素足に革靴とは、石田純一か。
戦争は文化じゃない。
今度は、売れない絵描きのサム・マーロウ(ジョン・フォーサイス)が歌いながら歩いて来る。
よろず屋でサムの絵も売っているのはウィッグス夫人。
その息子のカルビンは保安官代理で、ボロ車を乗り回すのが趣味。
こいつが、小さな集落の中では「オレが法律だ」などとのたまう。
「狩りは禁止だ。」
ミス・グレヴリーは、アルバートと自宅で食事をする約束をした。
中年女性の恋か。
だが、彼女はどう見ても42歳には見えない。
僕の細君は43歳だが、どう見てもミス・グレヴリーの方が老けている。
彼女は、アルバートがやって来るのに備えて、ウィッグス夫人の店で大きめのカップを買う。
ウィッグス夫人は、そんな彼女のために、髪の毛を切ってあげる。
その頃、店の外に飾られているサムの絵を、高級車でやって来た金持ちそうな初老の紳士が熱心に見ている。
しかし、店員がいないので、買えない。
サムはスケッチ・ブックを抱えて、先程の死体の辺りへ。
腰を降ろして、風景画を描こうとした時に、死体に気付く。
サムは、死体をスケッチしようとする。
隠れていたアルバートが、それを止めに来る。
アルバートがサムに事情を話す。
で、二人は死体を隠そうとする。
そこへ、またグリーンボーが本を読みながら歩いて来て、死体につまづく。
「これは失礼。」
だが、死体だとは気付かない。
医者なのに。
本作では、人が一人死んでいるというのに、周りの人間は、誰もこの死人には関心がない。
そこがブラックなコメディなのであるが。
アルバートが村へ戻ると、州警察の車が止まっている。
ヒッチコック映画にありがちな、脅しの手法。
アルバート、手に持っていたライフルを隠しながら、そろりそろりと車の横を通り過ぎる。
サムは、ジェニファーの家を訪ねる。
「あなたは美しい。絵のモデルになって下さい。」
古典的なナンパの手法だ。
彼女は、サムに身の上話をする。
死体のハリーは、実はジェニファーの夫であった。
けれども、ジェニファーはハリーが死んだことを気にしていない。
実は、ジェニファーの前の夫はハリーの弟ロバートであった。
それがアーニーの父である。
ロバートが死んだので、兄のハリーが無理矢理ジェニファーと結婚した。
彼女は、ハリーに愛情がないことを知って、初夜を抜け出し、実家へ。
そして、名前を変えて姿を隠した。
今朝、ハリーが家に来た。
それで、彼女は牛乳瓶で頭を殴った。
ハリーは森へ。
続いて、アルバートはミス・グレヴリーを訪ねる。
二人は、かねてからお互い秘かに想い合っていたことが分かった。
ところが、グレヴリーはアルバートに打ち明ける。
森の中でハリーに襲い掛かられたので、ハイ・ヒールのかかとで彼の頭を殴ったと。
さあ、本当にハリーを殺したのは誰だろうか?
後半は、この謎解きをメインに、4人がそれぞれの思惑を持って、死体を埋めたり掘り返したりを繰り返す。
その限りでは、コメディ・タッチである。
アメリカでは、死者を冒涜しているとして、あまり客が入らなかったそうだが。
まあ、日本人の感覚でもそうだろうが。
最初からブラック・コメディだと思って見れば、面白いかも知れない。
もちろん、最後にどんでん返しがある。
余談だが、アーニーの持っているウサギの死体は硬直している。