この週末は、ブルーレイで『地球の静止する日』を見た。
- 出版社/メーカー: 20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント
- 発売日: 2010/07/02
- メディア: Blu-ray
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監督は、『ウエスト・サイド物語』『スタートレック』のロバート・ワイズ。
音楽は、『ハリーの災難』『めまい』『北北西に進路を取れ』『サイコ』『タクシードライバー』のバーナード・ハーマン。
主演はマイケル・レニー。
共演は、『ベン・ハー』のサム・ジャッフェ。
20世紀FOX、モノクロ。
不気味なテーマ音楽。
テルミンを使っているらしい。
宇宙から地球へ向かう宇宙船の目線。
時速6400キロの飛行物体が飛来したと、世界中でニュースになっている。
今までにもUFOの目撃情報はあったが、今回は本物だと。
飛行物体はアメリカ東海岸のワシントンへ。
国会議事堂越しに空飛ぶ円盤が見える。
この円盤は、古典的な灰皿形だ。
逃げ惑う人々。
円盤が、広場のような所に着陸した。
軍隊も出動する。
何の根拠があってか、政府は「心配する必要はない」と発表する。
たくさんのエキストラが集まっている。
円盤が開いた。
スイカのようなヘルメットを被った宇宙人が出て来る。
「私は平和を願って訪れた」と、何故か英語で話す。
しかし、手には何かアンテナのような物を持っている。
軍隊が発泡し、宇宙人は倒れる。
今度は、円盤の中から金属のロボットが現れる。
逃げる人々。
ロボットの目のような部分が開き、中から光線が発射される。
軍隊の持っている武器が、その光線で次々に消滅する。
このロボットが、SF映画史に名高いゴートだ。
倒れていた宇宙人が立ち上がる。
彼は病院へ収容された。
何故か、地球人と肉体的に異なる所は全くないと。
まあ、これがタコのような外見だったりしたら、すっかり荒唐無稽な映画になっていただろう。
病室へ大統領補佐官がやって来る。
宇宙人の名はクラトゥ(マイケル・レニー)と言う。
本作で宇宙人が英語を話すのは、どうも「英語を話せるのが文明人だ」という、ロビンソン・クルーソー以来の思想が背景にあるように思える。
彼は、4億キロを5ヶ月で飛行して来たと言う。
「全地球の国の代表に会いたい。私は地球の全生命を救うために来た」と。
しかし、大統領補佐官は渋い顔をする。
国際情勢を考えれば、難しいと。
さて、ゴートはあれから停止したまま、動かなかった。
ゴートも円盤も、謎の非常に硬い金属で出来ており、全く歯が立たない。
クラトゥは医者に、年齢は78歳だと言う。
でも、30歳代後半くらいにしか見えない。
彼の星では、人間は平均130歳位まで生きるらしい。
彼が負った傷は、持参した薬で、1日で跡形もなく治ってしまった。
科学文明が、地球よりも遥かに進んでいるということは分かる。
彼は、町の人と会ってみたいと言ったが、断られたので、夜に病室をこっそりと抜け出した。
「貸部屋」を行なっている一般家庭の看板を見て、「部屋を貸して」と頼む。
その家では、家族揃って、テレビで宇宙人のニュースを見ているところだった。
この家の老主人は、新聞を読みながら、「政府が何もしないのは、民主党だからだ」と言う。
典型的なアメリカの保守中産階級だ。
日本では、何故かニート・フリーターのネトウヨが民主党を叩く。
あ、今では民主党じゃなかった、民進党だ。
次の選挙では、大量の無効票が出るだろうな。
幾ら評判が悪くても、簡単に名前を変えちゃいかん。
自民党だって、悪政だと叩かれながらも、ずっと名前は変えなかったじゃないか。
イカン、話しが逸れた。
クラトゥは、この家の子供であるボビー少年に町を案内してもらう。
クラトゥの星には戦争がない。
お金はダイアモンドである。
彼の乗って来た宇宙船は、高度な原子力で動くらしい。
本作の公開当時は、未だ「原子力の平和利用」という幻想があったのだろう。
クラトゥとボビーは、リンカーン記念堂に行く。
まるで、『スミス都へ行く』だ。
クラトゥは、リンカーンの言葉を読んで、いたく感銘を受ける。
「素晴らしい人だ」と。
この辺までを見ていると、この宇宙人はリベラルな思想の持ち主のような気がするが、どうやらそうでもない。
最後まで見ると、本作の重大な矛盾が明らかになる。
クラトゥはボビーに連れられて、有名な科学者バーンハート教授(サム・ジャッフェ)に会いに行く。
教授は留守だったが、部屋の黒板に数式が書かれている。
解答は未だ出ていなかった。
クラトゥは、それを見ると、ちょいちょいと書き換えて、「これで答えが出る」と言う。
教授は、この数式を解くのに何週間も掛けたらしいが。
数学が赤点だった僕には想像も出来ない世界だ。
で、クラトゥは家政婦の女性にメモを渡す。
果たして、教授から連絡が来た。
クラトゥは、教授の書いていた数式の通りに宇宙空間を飛行して来たという。
彼は言う。
「地球人はいずれ原爆を宇宙船に積む。それは我々にとって脅威だ。私は警告に来た。ダメなら破壊を行う。ニューヨークを荒野にする。世界のリーダーと会いたい。拒否されたら、地球を消す。我々の力を示すために、明後日の正午に劇的な何かを見せる。」
そして、世界中の電力が30分間停止されるのであった。
これがタイトルの「地球の静止する日」の意味である。
後半は、かなりサスペンス・タッチになる。
クラトゥは、高度に発達した科学技術を持ちながらも、「寿命を決めるのは全能の神だ」と言う。
本作には、非常にキリスト教的な、唯一絶対の価値基準を当てはめようとする思想が見える。
ゴートは、宇宙の警察役を担うために作られたらしい。
クラトゥは、一見平和を願っているようだ。
しかし、実は、ルールを破ると破壊するという脅しがバックにある。
何と強権的な!
これでは、「核兵器があるから戦争が起きない」というのと、何ら変わりはない。
それが、真の平和だろうか。
あるいは、反乱を起こした野蛮人は文明人が鎮圧するぞという、欧米の植民地主義的発想か。
いずれにせよ、僕は、この点が本作の致命的な弱点のような気がする。