『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(1946)

この週末は、『郵便配達は二度ベルを鳴らす』を見た。

郵便配達は二度ベルを鳴らす(1946年版) [Blu-ray]

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1946年のアメリカ映画。
監督はテイ・ガーネット。
原作はジェームズ・M・ケイン
主演はラナ・ターナージョン・ガーフィールド
共演は、『原子怪獣現わる』のセシル・ケラウェイ、『疑惑の影』のヒューム・クローニン。
本作は、これまでに3回映画化されている。
1942年のルキノ・ヴィスコンティ監督版が一番有名だろう。
1981年のジャック・ニコルソン主演版は、僕が小学生の頃、予告が頻繁に流れていたのを覚えている。
しかし、恥ずかしながら、いずれのバージョンも未見であった。
1946年版はモノクロ、スタンダード・サイズ。
画質は良い。
MGM。
不安気な音楽が徐々に穏やかなメロディーに。
流れ者のフランク(ジョン・ガーフィールド)はヒッチハイクでロス郊外へやって来る。
彼を乗せてくれたのは地方検事のサケット(レオン・エイムズ)。
着いたのは、ニック(セシル・ケラウェイ)という初老の男性が経営するレストラン兼ガソリン・スタンド。
店の前でフランクに声を掛けたのは、バイクに乗ったお巡り。
郵便配達ではない。
そもそも、この映画には、最後まで郵便配達など出て来ない。
ニックの店では、働き手を募集していた。
「2、3日試すか」と軽い気持ちで店に入って来たフランク。
若くてセクシーでグラマーでものすごい美人の女性がいて、思わず見とれてしまう。
女性の名はコーラ(ラナ・ターナー)。
彼女は何と、ニックの妻だった。
娘じゃないのか。
これがまた気の強い女で、フランクのことが気に入らないらしく、ニックに「彼を追い出して」と言う。
しかし、フランクもなかなか強引な野郎で、コーラにいきなりキスをする。
それから2週間、コーラはフランクを無視し続ける。
一方、ニックはフランクのことを気に入っていた。
ニックは歌うのが好きで、アル中であった。
これが、実は後の重要な伏線でもある。
ある夜、コーラは水着に着替えて海へ行く。
この水着がまた、1946年という時代を考えると、実にけしからんほど官能的。
欲情したフランクは彼女を追いかけ、自分も海へ。
で、何だかんだで結局、出来ちゃう二人。
コーラは、若い頃から男に言い寄られてばかりだった。
それを振り切るために、金のある男と結婚した。
だが、彼女はニックのことを愛してはいなかった。
コーラは、「愛するフランクと出て行くわ」という置き手紙を残し、ニックの留守中に家出する。
ところが、彼女は、気は強いけれど、考えが足りなかった。
早速、フランクとケンカになり、「戻るわ」と言って、家へ帰る。
仕方がないので、フランクも一緒に帰って来た。
置き手紙をニックに読まれていたら一大事だったが、幸運にも、彼は未だ外出中だった。
ニックは、ベロベロに酔っ払った状態で車を運転して帰って来る。
今なら、飲酒運転の映画など、絶対に作れないだろう。
フランクはコーラに、「ニックを酔わせてガケから落とそう」と言う。
もちろん、冗談のつもりだったが、ニックとの生活に嫌気がさしていたコーラは、本気で「あの人を殺して」と。
で、二人は、浴室で事故死に見せ掛けて、ニックを殺そうとする。
浴室は2階にある。
死体を下ろすためのハシゴを家の壁にセットした。
こんな夜に、誰もここを通る人はいない。
ニックは、風呂に入ると、いつも歌うのであった。
ニックの歌が聞こえ出す。
この辺のテンポが、実にいいねえ。
計画は一見、完全に見えたが。
お巡りがバイクで店の前を通り、ハシゴを見られてしまう。
フランクはうまくごまかすのだが、一匹のネコがハシゴをのぼり、2階で電気回路に引っ掛かって、感電死してしまう。
かわいそうに。
今なら、動物虐待で、こんな映画は絶対に作れないだろう。
つまらない時代になった。
ネコが原因の突然の停電で、コーラは取り乱す。
ニックのことを殴ったが、未だ死んではいない。
強引なフランクも、ここでニックを殺したら、オレ達の人生はおしまいだと思い直す。
こういう時は、一瞬でも日和ったらダメなんだな。
最後まで一気にやってしまわないと。
加藤の乱」みたいに腰砕けになってしまう。
「あんたは大将なんだから」って、大将なら最後まで戦わなきゃイカンだろ。
まあ、止めた人も、何の因果か自転車で転んで、再起不能になってしまったが。
話しが逸れてしまった。
明らかに気が動転しているフランクとコーラの前を、地方検事のサケットが車で通り掛かる。
もう、ニックを病院に連れて行くしかない。
ニックの意識が戻った。
フランクもコーラも、最初に打ち合わせた通り、「これは事故だ」と話すが、明らかにサケットは疑っている。
二人とも、肝心なところでビビリなんだな。
ニックは、1週間入院しただけだった。
元来が風来坊のフランクは、店を出て、ロスの市場で働き始める。
けれども、片時もコーラのことが頭から離れなかった。
そこへ、偶然にも、ニックが現れて、フランクは連れ戻される。
その夜、ニックはコーラとフランクに驚きの提案をする。
実は、ニックの姉はカナダの田舎町にいて、要介護状態であった。
そこで、ニックは店を売って姉の元へ行き、コーラに姉の面倒を見させることに決めた。
フランクには、知人の店を紹介するという。
コーラが幾ら反対しても、ニックは聞く耳を持たない。
彼女に、再び殺意がメラメラとわいて来る。
ああ、こういう話しって、現代でもあるよね。
実に普遍的だ。
で、後半は二転三転の大展開。
アッと驚く結末が待っている。
昔の映画は偉大だ。
有名な映画だと思ったが、46年版は日本未公開だったらしい。
更に、42年のヴィスコンティ版も、彼の監督デビュー作だが、海賊版だったため、日本で公開されたのは79年だとか。
ということは、実質的には、『郵便配達は二度ベルを鳴らす』のタイトルが知れ渡ったのは、81年のジャック・ニコルソン版ということか。
ジャック・ニコルソンは、ジョン・ガーフィールドとは大分イメージが違うけどなあ。
コーラ役のジェシカ・ラングは、完全にお色気路線だろう。
81年版は、官能描写で話題になったらしい。
他のバージョンも見てみたくなった。