『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』

この週末は、ブルーレイで『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』を見た。

1974年のイギリス映画。
監督は、『未来世紀ブラジル』のテリー・ギリアムと、テリー・ジョーンズ
脚本は、テリー・ギリアムと、『未来世紀ブラジル』(出演)のマイケル・ペイリンら。
主演はグレアム・チャップマン
共演は、テリー・ギリアムテリー・ジョーンズマイケル・ペイリンら。
モンティ・パイソン』というのは、名前だけは以前から知っていたが、現物を見たことはなかった。
本作も、ブルーレイは以前に買ってあったのだが、何故か未だ見ていなかった。
しかし先日、『未来世紀ブラジル』を見たので、そのつながりで、「やはり見てみよう」と思い立ったのだ。
カラー、ワイド。
いかめしいテーマ音楽が流れる。
タイトル・バックの字幕は何語か分からない。
ふざけた内容の字幕が出る。
その度に、「字幕の担当者は解雇しました。」
なかなか本編が始まらない。
90分しかない映画なのに。
舞台は紀元932年のイングランド
本作は、『アーサー王物語』のパロディーである。
僕は、筑摩書房の全5巻の『アーサー王物語』(トマス・マロリー著)に挫折しているので、何とも言えないが。
日本人にはそんなに馴染みがなくても、イギリスでは誰でも知っている有名な物語のはずだ(でないと、パロディーは成り立たない)。
アーサー王グレアム・チャップマン)と従者パッツィー(テリー・ギリアム)が旅をしている。
馬に乗らずに、ココナッツの殻で足音だけ立てている。
もちろん、ギャグなのだが、予算がなくて、馬を使えなかったらしい。
最初に訪れた城では、ココナッツについて、延々と議論(屁理屈)が繰り広げられる。
セリフはいちいちバカバカしい。
まあ、しかし、日本人に理解出来るかは微妙。
笑いの感覚というのは、国によって、かなり違うものらしい。
死体回収屋が回っている村。
スゴイ時代だ。
本作は、バカバカしい部分も多々あるが、時代考証はしっかりしているらしい。
村や人々の衣装などがリアルだ。
アーサー王のセリフも、朗々として偉そうである。
生きている老人を回収させようとする若者。
ギャグなのだろうが、かなりブラックだ。
アーサー王は、この村を通り、今度は農村へ。
畑で仕事をしている農民は、王に向かって怒り出す。
彼は、階級闘争に熱心なのだ。
僕は、大いに共感出来る。
この村は、労働組合が強くて、君主がいないのだ。
もちろんギャグなのだが。
こんな所で、アーサー王は「私は王である」と言っても、何の意味もない。
鎧に身を包んだ騎士同士が闘っている。
勝者をスカウトしようとするアーサー王
勝った方の黒騎士がアーサー王に向かって来たので、腕を叩き切る。
血が吹き出す。
しかし、彼は「痛くない」という。
ついには、両手両足を切り落とすが、それでも「痛くない」らしい。
スプラッター映画も真っ青の、かなりショッキングなシーンである。
本作は、結構残酷描写がヒドイ。
今では、こういう内容は、障害者団体が怒り出すから、到底映像に出来ないだろう。
今度は、魔女狩りの現場へ。
中世には、こういう理不尽なことが日常的に行われていたのだろう。
アーサー王は、魔女の正体を見抜いたペディヴィア卿(テリー・ジョーンズ)をスカウト。
更に、ガラハッド卿(マイケル・ペイリン)、ランスロット卿(ジョン・クリーズ)、ロビン卿(エリック・アイドル)がアーサー王に忠誠を誓う。
一行は、キャメロット城へ向かうが、歌って踊ってばかりの城には、馬鹿らしくて立ち寄るのを止める。
だが、連中の歌や踊りは本格派である。
天の神(ヘンな顔のアニメ)から、一行は「聖杯を探す旅」を命じられる(タイトルの「ホーリー・グレイル」は聖杯)。
なお、作中に多数のアニメが登場するが、これらはテリー・ギリアムが製作したらしい。
最初に訪れた城はフランス人の城だった。
このフランス人からは、『フルメタル・ジャケット』の教官みたいな差別的な罵詈雑言を浴びせられ、挙句は城の上から牛や鳥の死骸が飛んで来る。
人種差別的な内容も、現代ではNGだろう。
本作のギャグは、いちいちブラックである。
今度は、トロイの木馬みたいに、木のウサギを造って、城の前に置くアーサー王達。
中へ入ろうとするが、ウサギが城から飛んで来て破壊され、失敗。
そこで、いきなり現代の映像が入り、歴史学者アーサー王について語るが、突然騎士に斬り殺される。
このシーンが、実はラストの伏線になっている。
騎士達は分散して、聖杯探しの旅をすることになる。
ロビン卿は、キングギドラみたいな三頭の騎士に出会うが、敵前逃亡する。
要所要所に不気味なアニメが挿入される。
ガラハッド卿は、嵐の中、聖杯が光っているように見える城を見付けた。
それは、アンスラックス炭疽症)城で、若い女性がたくさんいた。
彼女達は皆、ヘンな名前を持っており、ガラハッド卿を誘惑する。
先程、彼が見たと思った聖杯は、杯の形をした標識灯だった。
こんな調子で、聖杯探しの旅が続く。
ギャグは、ドタバタでナンセンスで、ブラックで、シュールだ。
最初は面食らうが、慣れて来ると、面白くなって来る。
本作にハマる人がいるのも理解出来る。
それにしても、残酷描写は多いし、とにかくブラックである。
如何にもイギリスで、アメリカでは、こんな映画は作れないだろう。
モンティ・パイソンというのは、日本で言えば、ドリフみたいな感じなのかな。
まあ、とても子供には見せられないが。
本作は結末がスゴイ。
ネタバレになるので、書けないが。
国家権力は断じて許せない!
本作の続編『モンティ・パイソン ライフ・オブ・ブライアン』はキリストの生涯のパロディらしい。
このノリでキリストを描いたら、絶対に面白いだろう。
是非見たい。