『モンティ・パイソン・ライフ・オブ・ブライアン』

この週末は、ブルーレイで『モンティ・パイソン・ライフ・オブ・ブライアン』を見た。

1979年のイギリス映画。
監督は、『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』のテリー・ジョーンズ
脚本は、『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』のグレアム・チャップマンジョン・クリーズテリー・ギリアムエリック・アイドルテリー・ジョーンズマイケル・ペイリン
製作総指揮はジョージ・ハリスン(!)。
主演は、グレアム・チャップマンジョン・クリーズテリー・ギリアムエリック・アイドルテリー・ジョーンズマイケル・ペイリン
競演は、『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』のキャロル・クリーヴランド
前回、『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』を見た時から、本作には大変興味があった。
さすがに、キリスト本人をパロディーにすると、色々と問題があるだろうから、本作は「キリストと間違われた男」を主人公にしている。
それでも、色々と物議を醸したようだが。
宗教音楽風の曲から始まる。
ベツレヘムの星が輝く。
牛小屋でうたた寝するブライアンの母親マンディ(テリー・ジョーンズ)。
傍には、生まれたばかりの赤ん坊(ブライアン)がいる。
東方の三博士がやって来る。
彼らは、「この子はメシアだ」という。
しかし、本物の救世主は、隣の家にいた。
彼らは、「間違えた」と言って、去って行く。
ここに限らず、本作はキリスト教の知識がないと、なかなか笑えないだろう。
イギリス人にとっては常識なのだろうが。
オープニングは、例のテリー・ギリアムのアニメ。
時は若干流れて、西暦33年のユダヤ
説教をしているイエスに大勢の人々が集まっている。
後ろの方で聴いている人達がケンカを始める。
まあ、ここでヘタな文章で書いても、この強烈にブラックなコメディーの面白さは伝わらないな。
ホーリー・グレイル』もそうだったが、この作品も、時代考証は相当きちんとしているような気がする。
神の名を口にした罪で、男に石打ちの刑が行われている。
そのための石を売っているヤツまでいる。
青年になったブライアン(グレアム・チャップマン)は、病気をダシに物乞いをしている人と出会う。
しかし、イエスに病気を治してもらったお陰で商売上がったりだと怒っている。
当時は、こういう輩もいたのだろう。
ブライアンの鼻はデカイ。
「実は父親はローマ人で、レイプされて生まれたのがお前だ」と、ブライアンはある日、母親から聞かされる。
「僕はユダヤ人だ!」と叫ぶブライアン。
エルサレム円形闘技場には、切れた脚やら腕やらがゴロゴロ転がっている。
当時は、こんなものを見世物にしていたのだ。
スパルタカス』では、ここまで描かれていなかったが、かなりグロい。
ブライアンは、ここで売り子をしている。
彼は、ローマ人に復讐するために、レッジ(ジョン・クリーズ)率いる過激派「人民戦線ユダヤ」に入る。
ホーリー・グレイル』でも感じたが、このシリーズは、左翼の描写が非常に上手い。
夜、ブライアンは宮殿の壁に「ローマ人は国へ帰れ」と落書きするよう命じられる。
ところが、ローマ兵に見つかり、ラテン語の文法の誤りを指摘される。
この作品の脚本を書いたメンバーの中に、ラテン語を学習したことがある人がいるのだろう。
厄介なラテン語文法を大変面白くネタにしている。
まあ、僕もラテン語を多少かじったので、ここでは大笑いをした。
ただし、本作の字幕を担当した人は、ラテン語の知識がないようだ。
「予格」とあったが、「与格」の間違いだろう。
あと、「位置格」というのは「地格」ではないか。
それから、本作の舞台はユダヤだが、セリフはヘブライ語ではなく、英語だ。
まあ、イギリス映画だからな。
よく、「英語は文法なんかやるから使えないんだ」という人がいるが、本作で分かるように、イギリス人だって、ラテン語を勉強する時は、思い切り文法から入っている。
そして、文法の知識がいい加減だと、「ローマ人は故郷へ帰れ」といった簡単な文さえ、正しく書けない。
外国語を学ぶには、文法から入る以外に道はない。
話しが逸れた。
「人民戦線ユダヤ」のアジトでは、ローマ帝国の総督ピラト(マイケル・ペイリン)を脅迫して、ローマ帝国を解体しようという相談をしている。
ローマ帝国の解体」という壮大な目標の割に、手段が総督の脅迫というところが、如何にも過激派らしい。
夜、連中は宮殿へ侵入する。
ところが、同じタイミングで、同じことを決行しようとしていた「ガリラヤ解放戦線」と衝突する。
目的は同じなのに、内ゲバを繰り返す様は、まるでどこかの国の野党勢力のようだ。
何が「排除します」だ。
前原は早く腹を切れよ。
イカン、また話しが逸れた。
ブライアン以外は、全員ケンカで倒れる。
で、ブライアンはローマ兵に捕まってしまう。
ピラトの前に連れて来られたブライアン。
ここで、またラテン語ネタ。
「ビッガス・ディッカス(デカチン)」という人名。
しかし、これは単にbig dickを語尾だけラテン語の男性名詞にしただけだろう。
でも、大笑い。
なお、ラテン語はローマ字読みなので、Bigus Dickusなら「ビグス・ディクス」だろう。
「ビッガス・ディッカス」というのは英語読みだな。
で、このピラトは、英語の「r」の発音が苦手なようだ。
何度話しても、「r」の発音がうまく出来ない。
後半では、これをネタに、わざとピラトに「r」の付く単語を言わせて笑いを取る。
まあね。
これは面白いんだけど、語学をやる者としてはどうかなと。
昔、大相撲の千秋楽で、「ヒョーショージョー!」と大声で読み上げる外国の人がいたが。
そして、場内は大ウケ。
しかし、外国語の発音というのは、大変難しいものだ。
日本語だって、外国人で日本人のように発音出来る人は、まずいない。
よく、日本人の英語はカタカナ発音だと批判されるが。
それは、ある程度、仕方がないことなのだ。
帰国子女なんかで、得意気に英語をベラベラ話している人がいるが。
あれだって、日本人には流暢に聞こえるが、当のネイティヴはどう思っているか。
関西弁ですら、関西出身じゃない人が真似をしても、関西人にはすぐ分かるのだから。
原口あきまさ明石家さんまのモノマネは、関西弁が致命的に違う。
でも、それは無理のないことだ。
だから、外国人の発音の訛りをネタに笑いを取るのはどうかと。
まあ、いいや。
で、ブライアンはピラトの基から逃げ、塔のてっぺんから落ちたところを、何故か宇宙人の船に助けられる。
荒唐無稽なスター・ウォーズもどきの映像。
で、宇宙船は不時着し、ブライアンは地上へ戻って来る。
「人民戦線ユダヤ」のアジトにブライアンがやって来ると、彼は既に死んだと思われていた。
ローマ兵がアジトにやって来たので、隠れようとして、窓の下に落ちてしまう。
そこには、たまたま説教していた宗教者がいたのだが。
ブライアンは、その宗教者と入れ替わってしまう。
で、何故かブライアンが説教をするハメに。
こうして、彼は、いつの間にか偉大なメシア扱いされるようになるのであった。
とことんバカバカしい話しなんだけど。
まあ、どうやって宗教が作られるのかは、よく分かる。
モンティ・パイソンのメンバーは全員、無神論者らしい。
じゃないと、こんな映画は作らんわな。
余談だが、本編中に、ブライアンの無修正ペニスが映る。