『街の恋』

連休中は、ブルーレイで『街の恋』を見た。

1953年のイタリア映画。
監督は、フェデリコ・フェリーニミケランジェロ・アントニオーニ、カルロ・リッツァーニ、ディーノ・リージ、フランチェスコ・マゼッリ、チェーザレ・ザヴァッティーニアルベルト・ラットゥアーダ
音楽は、『アレキサンダー大王』のマリオ・ナシンベーネ
本作は、スター俳優を一切起用せずに、ドキュメンタリー・タッチやフィクションを交えて描かれたオムニバス映画である。
モノクロ、スタンダード・サイズ。
華やかなテーマ曲(しかし、音は曇っている)。
ナレーション「ビルと人が行き交う大都会。240万の男女が苦悩と共に生き、愛し合う。生き方や運命は十人十色だ。」
「主役は大都市に住む市民たち。彼らの記録。」
「色んな人たちの恋愛模様。恋愛を基にした記事は売れる。我々は調査してみた。」
ここで言う「大都会」とは、イタリアなので、ローマのことだ。
第一話「お金で買う愛」
監督はカルロ・リッツァーニ。
娼婦の話しである。
「街に立つ女性たちから何人か話しを聞いた。」
彼女達は、街を一晩中歩き回りながら客を探す。
警察の巡回を避けて。
シングル・マザーや、男に捨てられたとか、ほとんどの女性が似たような境遇。
僕の知り合いに、日本の性風俗やらAVやらの記事で有名なライターがいるが、彼の本にも同じような境遇の女性ばかり出て来る。
時代が変わり、国が変わっても、変わらないということか。
第二話「自殺未遂」
監督はミケランジェロ・アントニオーニ
自殺を働いた人々の話し。
婚約者を待つ女性。
彼女は、婚約者から本を持っているだけで暴力を振るわれる。
今で言うDVだな。
ちなみに、彼女の読んでいた本はチェーホフだとか。
彼女は妊娠してしまう。
が、婚約者は去ってしまった。
絶望した彼女は、車に飛び込む。
しかし、彼が戻って来て病院へ。
でも、彼とは結局、別れてしまう。
自殺をするくらいだから、不幸な人達ばかり。
娼婦もそうだったけど、なかなか重い。
第三話「3時間のパラダイス」
監督はディーノ・リージ
舞台はダンス・ホール。
出会いを求める人達で溢れ返っている。
男女お互いに相手を物色し、踊りの合間に口説く。
これは、そんなに暗い話しじゃない。
まあ、これも、形は変わっても、出会いを求める男女の姿は、いつの時代も変わらんだろう。
第四話「結婚相談所」
監督はフェデリコ・フェリーニ
この話しの主人公は、結婚相談所に興味を持って、調査をするという。
相談所で話しを聞くと、ここに来る女性たちのことを「彼女たちは真剣なんです。どんなお相手でも受け入れる」という。
主人公は、「友人が狼男のような奇病を持っているが、結婚すれば快復すると医者に言われた」と、とんでもないウソを言って、相手を探すように依頼する。
結婚相談所というのは、カネが掛かるところのようで、何だかんだと理由を付けては集金する。
人は何故、結婚相談所に行くのか?
ところが、狼男と結婚したいという女性が現れるんだな。
しかも、相手は真剣だった。
ヒドイ話しだな、全く。
第五話「カテリーナの物語」
監督はフランチェスコ・マゼッリ。
主人公の女性は、シチリアからローマへ出て、不法入国で逮捕され、その後、父親の分からない子供を産む。
育てられないので、子供は人に預ける。
だが、そんなに長期間は預かってもらえない。
仕事に就こうにも、身分証がないと就けない。
公的な施設を訪ねても、身分証がないと保護を受けられない。
身分証を発行してもらうために警察に行くと、前歴を調べられて、強制送還になってしまうから行けない。
悩んだ彼女は、とうとう子供を置き去りにしてしまう。
未だおむつをしているような子供なのに。
この話しが一番重い。
かわいそうで見ていられない。
第六話「イタリア人は見つめる」
監督はアルベルト・ラットゥアーダ
これは、特にストーリーはない。
ひたすら街を歩く若い女性と、それを見つめる男達が映し出される。
中には、ストーカーまがいなのもいる。
まあ、目の保養になるようにということだろう。
一番脳天気な内容。
最後に、ナレーションで「我々が追い求めるのは、身近にある現実のみ。」
「かつてない映像表現を徹底的に追求したのだ。」
とは言うものの、全体的にまとまりはないし、出て来るのがやっぱりちょっと訳ありな人達ばかりだから、本当の市井の人々を描いたとも言えないような気がする。
リアリズムという点でもどうだろう。
「かつてない映像表現」は言い過ぎかなあ。
まあ、フェリーニやアントニオーニが初期に参加しているから、注目されているのではないか。
僕は、『道』とか『崖』とか『カビリアの夜』は大好きだけどね。

L'amore in città (1953), Antonioni, Fellini, Risi, Lattuada, Zavattini, Maselli by Film&clips