『レベッカ』(1940)

この週末は、ブルーレイで『レベッカ』を6年ぶりに再見した。

1940年のアメリカ映画。
監督は、『逃走迷路』『疑惑の影』『ロープ』『私は告白する』『裏窓』『泥棒成金』『ハリーの災難』『間違えられた男』『めまい』『北北西に進路を取れ』『サイコ』『鳥』『フレンジー』『ファミリー・プロット』の巨匠アルフレッド・ヒッチコック
彼のアメリカで撮った第1作目である。
原作は、『鳥』のダフネ・デュ・モーリア
製作は、『風と共に去りぬ』『第三の男』の大プロデューサー、デヴィッド・O・セルズニック
音楽は、『裏窓』のフランツ・ワックスマン
主演はジョーン・フォンテイン
更に、『ハムレット(1948)』『スパルタカス』『空軍大戦略』『マラソンマン』『遠すぎた橋』の大スター、ローレンス・オリヴィエ
共演は、『十戒』のジュディス・アンダーソン、『北北西に進路を取れ』のレオ・G・キャロル
本作は、無類の映画好きである我が社の社長が「面白い!」と太鼓判を押した傑作である。
モノクロ、スタンダード。
優美なテーマ音楽。
画質は良い。
「昨夜、マンダレイの夢を見た」という私(ジョーン・フォンテイン)のモノローグから始まる。
大きな屋敷。
これだけでは何のことだか分からないが、後の重要な伏線になっている。
「全ての始まりは南フランス。」
断崖絶壁の上に、マキシム・ド・ウィンター(ローレンス・オリヴィエ)が立っている。
自殺だと思った私が、声を掛けて止める。
これが二人の出会い。
余談だが、本ブルーレイは中国だか台湾だかのメーカーで作っているようで、日本語字幕が読みにくい(書体が微妙)。
続いて、モンテカルロのホテル。
私はヴァン・ホッパー夫人の付き人として働いている。
この夫人は、よく喋るおばちゃんで、私のことはあごでこき使っている。
そこへ、さっきのマキシム・ド・ウィンターが現れる。
ホッパー夫人は、彼に一方的に思いを寄せている。
ある時、私はレストランで偶然、マキシム・ド・ウィンターと出会う。
二人は同席する。
私は、マキシムに自分のことを話す。
私は、ホッパー夫人の「雇われ伴侶」。
父も母も、既にこの世にはいない。
父は画家であった。
私もスケッチをする。
そう言うと早速、車を出すマキシム。
二人でドライブ。
マキシムはコーンウォール出身であった。
レベッカという名の奥さんがいたが、マンダレイで溺れた。
彼は、大富豪である。
それを聞いて、夢に見る私。
私はマキシムとドライブを重ねた。
ホッパー夫人は、マキシムが自分に気があると勘違いしている。
しかしながら、マキシムは私に気があるのであった。
「君と一緒にいたい」と私は告白される。
ところが、ホッパー夫人の娘が結婚し、彼女はニュー・ヨークへ行くことになった。
当然、付き人の私も同行しなければならない。
最後にマキシムに一言別れを告げようと思ったが、電話がつながらない。
彼の部屋へ行くと、即座に「結婚しよう」と告げられる。
話しは実にトントンと進む。
部屋へホッパー夫人を呼んで、結婚の報告をしようと言うマキシム。
ホッパーは、当然ながら激怒する。
「あんたになんか、彼の妻がつとまるはずがないわ。」
この言葉が、実は不気味な予言になるのであった。
さて、私はマキシムに連れられてマンダレイの屋敷に着いた。
家事はダンヴァース夫人(ジュディス・アンダーソン)が仕切っている。
彼女は、ものすごく冷たい雰囲気を醸し出している。
余談だが、ジュディス・アンダーソンはマクベス夫人が当たり役らしい。
彼女なら、さぞかし似合うだろう。
で、この家にはお手伝いがいっぱいいる。
明らかに、昨日までお手伝いの一人に過ぎなかった私が嫁ぐには、身分不相応な家である。
外は雨。
雨に揺れる窓の光が、実に効果的で、美しい。
ダンヴァース夫人は、何かと言えば、マキシムの前の奥様の話しばかりする。
またまた余談だが、この家では『タイム』を購読しているというのが自慢のようだ。
それから、黒いワンコが飼われている。
このワンコも、前の奥様にはなついていたが、私のことは敬遠する。
実に演技派のワンコである。
更に驚いたことに、この家には内線がある。
戦前ですよ!
私は、居間でレベッカのアドレス帳を見付ける。
それを開こうとした時、テーブルの上にあった天使の像を落として壊してしまう。
とっさに破片を拾って、引き出しの中に隠す私。
とにかく、私はこの家では落ち着かない。
マキシムの姉夫婦が遊びに来た。
緊張する私。
姉からは、ダンヴァース夫人はレベッカのことを慕っていたと聞かされる。
私は、上流階級のたしなみも教養も、何もない。
服装もお粗末。
乗馬も出来ない。
しかし、ここで暮らすには、乗馬も出来るようにならないといけないらしい。
私は、ヨットも出来ない。
だが、この言葉を私が漏らした時、一瞬にして不穏な空気が流れた。
どうやら、私には知らされていないことがあるらしい。
こういう空気感の演出が、ヒッチコックは抜群にうまい。
屋敷の近くには海があった。
私は、入り江へ行きたい。
ワンコが海の方へ駆けて行ったので、それを追って、私も海へ。
波が実に激しい。
海岸に、謎の小さな小屋がある。
ワンコは、この小屋の前へ。
中から知らない怪しいオッチャンが出て来た。
この部屋の備品は、蜘蛛の巣が張っているが、レベッカのイニシャルが刺繍された小物があった。
ここは、かつてレベッカの部屋だったようだ。
オッチャンは、ただここへ忍び込んだだけであった。
マキシムは、私が勝手にこの小屋へ来たことを知って、怒り出す。
「ここへ戻るべきじゃなかった。」
泣き出す私に差し出されたハンカチにも、「R」のイニシャルが!
この小屋はボートの停泊所であった。
私は、一番話し易い財務担当のクローリーに話しを聞いた。
レベッカは、一人でボートに乗って、海に投げ出されたらしい。
皆が私をレベッカと比べる。
もう耐えられない、と私はクローリーに訴える。
レベッカは、とても美しい女性だったらしい。
それを聞いた私は、明らかに似合わないドレスを着て、マキシムに見せる。
マキシムは、それで不機嫌になる。
ネムーンの時に撮った映画(16ミリ?)を見せるマキシム。
何故か、フィルムの訳が「テープ」になっている。
その時、家宝の天使の像を古参の召し使いが壊したと言って、ダンヴァース夫人が激怒しているのが聞こえて来た。
召し使いは「絶対に私じゃない!」と言い張る。
実は、それを壊したのは私であった。
そのことを告げられた時の、ダンヴァース夫人の恐ろしい形相。
私は、いよいよ耐えられなくなり、マキシムに「何故私と結婚したの?」と食って掛かる。
マキシムは「結婚は一方的だったかも」と言う。
「幸せとは何か、私は知らない」とも。
上流階級ではあるが、実は彼はさびしい人なのかも知れないということを匂わせる。
私は、マキシムが外出するのも、さびしくて耐えられない。
さて、前の奥様が亡くなって以来、誰も使っていないはずの西館に、人影が見えた。
果たして、これは誰なのか?
ここまでが前半。
後半、話しは思わぬ方向に大展開する。
実にコワイ物語である。
ヒッチコックは、豪腕演出でグイグイ引っ張る。
後半は、やや話しを詰め込み過ぎな気もするが。
それもテンポがあって良い。
マキシムが情景を延々と独白する場面がある。
この描写力は、さすがシェイクスピア役者だ。
アメリカ映画の歴史に刻まれる作品。
アカデミー作品賞、撮影賞(白黒部門)受賞。
ヒッチコックの作品賞受賞は本作のみ。
監督賞は、4度もノミネートされるも、一度も受賞していない。
チャップリンオーソン・ウェルズキューブリックもそうだが、アカデミー賞は、真の天才には冷たい。
なお、2020年にベン・ウィートリー監督によってリメイクされたが、当然ながら、オリジナルの評価は超えられなかった(未見)。
それにしても、昨今の映画はリメイクと続編ばかりでウンザリする。

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