『パリはわれらのもの』

この週末は、ブルーレイで『パリはわれらのもの』を見た。

1961年のフランス映画。
監督は、『修道女』のジャック・リヴェット
ジャック・リヴェットと言えば、先日亡くなったミシェル・ピコリが主演の『美しき諍い女』が代表作だな。
僕は学生の頃、ビデオで見たような気がする。
まあ、エマニュエル・ベアールが目当てだったのだが。
4時間も、延々と絵を描き続ける映画だった。
『パリはわれらのもの』は長編デビュー作だが、既に長い映画を撮る監督という印象がある。
本作は日本未公開らしい。
製作総指揮が、『美しきセルジュ』『いとこ同志』(監督)のクロード・シャブロルと、フランソワ・トリュフォー
何とヌーヴェルヴァーグな組み合わせであろうか。
主演はベティ・シュナイダー。
共演は、『美しきセルジュ』『いとこ同志』のジャン・クロード・ブリアリ。
なお、『勝手にしやがれ』『軽蔑』『気狂いピエロ』『東風』『万事快調』『パッション』のジャン・リュック・ゴダール(監督)が出演している。
ヌーヴェルヴァーグだなあ。
あと、ジャック・ドゥミ(ノンクレジット)も。
ジャック・ドゥミの『シェルブールの雨傘』は大昔、京都の名画座で観た。
名作だ。
音楽が素晴らしい。
『パリはわれらのもの』に話しを戻す。
モノクロ、スタンダード・サイズ。
不安げな音楽から始まる。
「パリは誰のものでもない シャルル・ペギー」というクレジット。
舞台は1957年6月のパリ。
アンヌ・グーピル(ベティ・シュナイダー)がアパートの部屋でシェイクスピアの戯曲を読んでいる。
隣室のスペイン人の女性の体調が悪い。
彼女は、アンヌの兄ピエールの元恋人であった。
彼女は、「彼らに殺されたの!」「世界に危険が迫っているの!」と、意味不明なことを叫ぶ。
大分頭がおかしい。
街のカフェでピエールと会うアンヌ。
ピエールの現在の恋人イダがやって来る。
アメリカ人の演出家フィリップ・カウフマンの話しになる。
フィリップ・カウフマンって、『存在の耐えられない軽さ』の監督だよね。
で、アンヌはピエールの部屋へ行く。
ここは、芸術仲間達のサロンみたいになっている。
アンヌは居心地が悪い。
そこには、フィリップ・カウフマンもいる。
彼はアル中だ。
彼は、ある女性と英語で、「フアンを殺したのは君だ」みたいな話しをしている。
翌日、アンヌはジャン・マルク(ジャン・クロード・ブリアリ)と会う。
学食で並んでいると、フィリップ・カウフマンがはじき出される。
「学生じゃなきゃダメだ」と。
僕は以前、早稲田の近くの会社で働いていたことがあるが、昼休みには早稲田の学食でよく食事をした。
別に、学生じゃなくても、文句は言われなかった。
で、フィリップは、シェイクスピアの『ペリクリーズ』上演のために人を集めているという。
アンヌは舞台の練習を見に行く。
そこで、演出家のジェラール・レンツから「台本を読むのを手伝って」と言われる。
アンヌは文学部の学生だが、演技は素人だ。
そこへ、謎の女テリーがやって来る。
どうやら、ジェラールと付き合っているらしい。
で、彼女は「フアンは短刀で死んだの」とか言っている。
アンヌは、偶然見掛けたフィリップに声を掛ける。
その夜、人が車ではねられる。
フィリップは陰謀論を口にする。
不安になったアンヌは、タクシーで自室に帰る。
ピエールの部屋へ行くアンヌ。
実は、アンヌが帰宅すると、隣のスペイン人の女が消えていたのであった。
アンヌは、カミット通りのフィリップを尋ねる。
そして、ジェラールに電話をするが、彼はいない。
アンヌがフィリップの部屋に入ってみると、彼は倒れている。
ミッドウェイの後遺症らしい。
時代だ。
で、彼はアンヌに「この前のこと(=陰謀論)は忘れてくれ」と告げる。
そこに、テリーがやって来る。
アンヌはジェラールと会う。
彼はアンヌに、『ペリクリーズ』について、「君なら出来る筈だ」と出演を口説いている。
フアンの即興音楽のテープがなくなったらしい。
で、テリーは実は苦労人で、フアンの死に動揺しているらしい。
ピエールがアンヌの部屋に来ている。
彼は、芝居について、慎重になるようにと言うが、アンヌは出演依頼を受けることにする。
数週間後。
芝居の稽古中。
案の定、アンヌは下手クソで、現場は険悪な雰囲気に。
アンヌは落ち込む。
かつてジェラールにスカウトされた女性から、「入団前は優しくして、後は無視される。私も犠牲者」と聞かされ、図星なので、更に落ち込む。
で、何か知らんが、ジェラールに危険が迫っているらしい。
最初は、この話しの人間関係に戸惑ったが、進んで行くと、はっきり見えて来るので、問題はない。
ストーリーがどこに向かっているのかがなかなかつかめなかったが、どうやら本気で陰謀論を信じているようだ。
ベンジャミン・フルフォードか。
で、アンヌは、下手クソな自分の演技をごまかすために、バックに流すフアンの即興音楽が必要だと考える。
「フアンのテープを探すわ。」
「フアンはこの人の家で死んだって」と聞いて、アニュータという子持ちの女性を訪ねる。
最初は「知らない」と言っていた彼女も、次第に、「私が家に戻って来たら、腹を刺されていた」などと告白する。
彼女はテリーのせいだと考えている。
「経済学者のジョルジュ博士なら知っているかも」と言われ、博士を訪ねるアンヌ。
博士には、変な女がまとわり付いている。
テープの話しは、「くだらん!」と一蹴。
「これ以上探しても、テープは見付からないよ」と忠告。
場面は換わって、芝居の稽古。
ピエールが見に来る。
アンヌはジェラールに片っ端からダメ出しされている。
「突っ立ってちゃダメだ! 家で稽古して来い!」
ジェラールがキレ出す。
ピエールはテリーと話していて、興味がなさそう。
で、アンヌはフィリップの部屋を訪ねる。
フィリップは「舞台なんかインテリのヒマつぶしだ!」と吐き捨てる。
どうでもいいが、ジェラールはいつもコーデュロイのスリーピースを着ていて、偉そうだな。
で、アンヌはテリーと対立する。
この話しは一体どこへ行くのか?
後半、ジェラールが大手の劇場での公演が決まって、一瞬喜ぶが、演出の権限を全部奪われるのは、見ていてちょっと気の毒になる。
が、最後の最後まで、陰謀論で突っ走る映画。
何となく見てしまうが、見終わった後は、後味が良くない。
僕は陰謀論なんて全く信じていないからね。
なお、最後の方に、チラッと『カイエ・デュ・シネマ』が映る。
日本で言えば、『キネマ旬報』かな。

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