お盆休みは、ブルーレイで『我等の仲間』を再見した。
1936年のフランス映画。監督は、フランス古典映画の巨匠ジュリアン・デュヴィヴィエ。
音楽は、『北ホテル』のモーリス・ジョベール。
主演は、『フレンチ・カンカン』『シシリアン』の大スター、ジャン・ギャバン。
共演は、『泥棒成金』のシャルル・ヴァネル。
モノクロ、スタンダード。
このブルーレイに収録されているのは、2015年に復元されたオリジナル・バージョン。
画質は良い。
明るいテーマ曲。
造花を作っている女達。
その一人ユゲットの婚約者マリオがやって来る。
警察がマリオの周囲を嗅ぎ回っているという。
だから、マリオは自分の部屋には戻れないと。
安宿「イギリス王」にはマリオの仲間ジャン(ジャン・ギャバン)が暮らしている。
失業中で宿代が払えない。
家主は「追い出してやる!」と息巻くが、彼らは他に行く宛てもないので、頑なに出て行かない。
そこへ、マリオが「かくまってくれ」と言ってやって来るが、当然ムリ。
近くのカフェにマリオが行くと、女房と別れたシャルルがいる。
マリオの状況を知って、シャルルは「かくまってやろう」と言う。
マリオは、ユゲットにコンパクトをプレゼントしたいが、カネがない。
タンタンは、店のUFOキャッチャー(!)でコンパクトを取る。
こんな時代のフランスにUFOキャッチャーがあったとは!
更に、店主がいないスキに、台を傾け、インチキをして、UFOキャッチャーで時計やら何やらを取りまくる。
そこへ、マリオと待ち合わせたユゲットがやって来る。
男達から彼女にプレゼントが渡される(どれもUFOキャッチャーの景品だが)。
マリオからは、彼女が欲しがっていたコンパクト(もちろん、UFOキャッチャーの景品)をプレゼントする。
マリオは寝る場所もないが、ジャンが「心配するな、オレの部屋に泊めてやる。」
そして、連中は「イギリス王」へ。
ロウソクの灯かりでトランプをする。
タンタンの声がデカイので、宿中に響き渡る。
そこへ、行商に出ていたジャックが帰って来る。
タンタンと買った宝くじが当たったという。
10万フラン!
まあ、この時代の10万フランというのが、現在の日本円に換算すると幾らくらいなのか分からないが。
この後、レストランを改築出来るくらいだから、何百万円ではないよな。
1億円くらいか。
で、この朗報を聞いて、大家もゴキゲン。
皆はジャンの部屋でワインで乾杯する。
賑やかなタンタンは、宿中の人達に声を掛けて、ジャンの部屋はさながらパーティー状態になる。
中には子連れで酒を飲む親も。
今の日本なら大問題になるだろう。
大らかな時代だ。
翌日、5人はくじを現金に引き換える。
彼らは、まずボロい靴を買い換える。
それから、スーツも新調。
5人は10万フランを一人2万フランずつ山分けする。
それぞれ、自分の夢を実現するのに使おうとあれこれ思いを巡らすが、結局、5人で組んで家を買おうということになる。
5人とユゲットは川をボートを漕いでさかのぼり、家事に遭って放置されていた山荘の廃墟を見付ける。
「ここを買って、レストランを作ろう!」
最初は、誰が誰かという人間関係が分かり難かったが、いつの間にかハッキリした。
登場人物それぞれのキャラクターがしっかりと描き分けられていて、物語に溶け込んでいる。
5人で協力して、ボロ家の改築を開始する。
ユゲットが彼らの食事を作る。
レストランの名前は、ユゲットが提案した「我らの家」に皆が賛同して決まった。
なお、原文では「chez nous」と言っている。
英語に直すと「at us」、つまり、「我々のところで」になる。
ちなみに、本作の原題「La belle equipe」は、英語に直すと「The nice team」、つまり「すばらしき仲間」くらいの意味だろう。
タンタンは給仕を担当。
マスターは全員。
「ここでは市民が大統領だ!」とジャン。
まるで、山本太郎みたいだな。
昨今、国民や都民よりもオリンピックの方が大事なガースーや小池のような政治家が多いが、是非このセリフを聞いて欲しい。
山本太郎を過激派呼ばわりするネトウヨも多いが、彼の言っていることは間違っていない。
むしろ、これまでの永田町の政治家の論理が間違っていたのだ。
ただ、彼には政治力がない。
野党の中でも孤立しているから、現実の政治の世界で活躍するのは難しいだろう。
話しが逸れてしまった。
さて、5人が一生懸命レストランを改築しているところへ、シャルルの別れた妻ジーナが訪ねて来る。
要するに、「分け前が欲しい」と。
この女は、男に色目を使う性悪女なのだが。
一方、ジャックはユゲットに気がある。
しかし、ユゲットはマリオの婚約者だ。
ジャンは、横恋慕は「全てが水の泡になる」とジャックを諭す。
家を完成させるのが第一だと。
ところが、皮肉なことに、結局はジャンも横恋慕で破滅することになるのだが。
その夜、大嵐がやって来る。
ガラス屋根は割れ、瓦は吹き飛ばされる。
全員で屋根に上がって、雨風が吹き付ける中、瓦が飛ばないように押さえる。
もちろん、皆ずぶ濡れだ。
この辺、全員の団結がよく描かれていて良い。
翌朝、ユゲットがやって来ると、ジャックの置き手紙があった。
彼は、ジャンの言葉で自分が身を引こうと決意し、旅に出ることにしたのだ。
嵐で壊れた屋根を修復しなければならない。
非常用に取って置いた貯金があるはずだ。
だが、2000フラン足りない。
何と、シャルルがジーナにせがまれて、渡してしまったのだと白状した。
ジャンは激怒し、「家を直すのに必要な金だ! 取り戻して来い!」と命じる。
シャルルは手切れ金のつもりで渡したので、「オレは行かない」という。
そこで、ジャンがジーナの部屋を訪ねる。
彼女はセクシーなモデルの仕事をしている。
「目当ては私でしょ」とジャンを誘惑するジーナ。
「その前に金を出せ。」
ジャンはジーナから金を取り戻して来たが、それでも未だ足りない。
そこへ、憲兵がマリオを捜しにやって来る。
仲間達は「知らない」と言い張る。
タイミングの悪いことに、ユゲットが大声でマリオの名を呼びながらやって来た。
仕方がないので、隠れていたマリオは顔を出した。
憲兵は、48時間以内の国外退去を命じる。
レストランの完成には間に合わない。
なお、マリオが何の罪を犯したのかは、作中では明らかにされない。
さあ、これからどうなる?
後半、仲間達は一人また一人と欠けて行く。
そして、ジャンとシャルルのジーナを巡る争いが起こる。
宝くじが当たって、貧困のどん底だった5人が共通の夢を見出し、物語は明るいトーンで進んでいたのだが。
最後は、全く予想外の結末を迎える。
結局、あぶくゼニは身に付かないということだろうか。
改めて見たが、なかなかスゴイ映画だ。
ちなみに、本作の中では、タンタンがジャワ語を喋れるという設定が出て来る。
ジャワ語って何だ?
僕は寡聞にして知らなかったが、調べてみると、インドネシアの地方語で、話者数は7500万人もいるらしい(なお、公用語はインドネシア語)。
東京外大にも、インドネシア語学科はあるけど、ジャワ語学科はない。
しかし、母語話者数が世界13位だって。
日本語が9位、ドイツ語が10位、フランス語が11位だから、相当多いな。
世界には、僕なんかの聞いたこともない言語がまだまだたくさんあるということか。
アマゾンで調べたら、大学書林の『ジャワ語の基礎』という参考書は6000円もするんだな!
それにしても、大学書林の守備範囲の広さは恐るべしだ。
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