『引き裂かれたカーテン』

この週末は、ブルーレイで『引き裂かれたカーテン』を見た。

1966年のアメリカ映画。
監督は、『レベッカ』『逃走迷路』『疑惑の影』『白い恐怖』『ロープ』『見知らぬ乗客』『私は告白する』『裏窓』『泥棒成金』『ハリーの災難』『知りすぎていた男』『間違えられた男』『めまい』『北北西に進路を取れ』『サイコ』『鳥』『マーニー』『フレンジー』『ファミリー・プロット』の巨匠、アルフレッド・ヒッチコック
主演は、『ハスラー』『暴力脱獄』『明日に向かって撃て!』『スティング』『タワーリング・インフェルノ』『ハスラー2』の大スター、ポール・ニューマン
ユニバーサル映画。
テクニカラー、ワイド。
不安気なテーマ音楽。
なお、本作の音楽はジョン・アディソン
お馴染みのバーナード・ハーマンではないんだな。
本作でヒッチコックと対立したらしいが。
ノルウェーのオスターフィヨルド
アメリカからデンマークへ向かう1隻の客船。
暖房が故障して皆、船内でオーバー・コートを着ている。
室温は0度。
食堂では、お冷が凍っている。
この船に乗っているのは国際物理学者の一行。
原子物理学者のマイケル・アームストロング(ポール・ニューマン)と秘書のサラ・ルイス・シャーマン(ジュリー・アンドリュース)は自分達の船室で抱き合っている。
二人は婚約している。
そこへ、1通の電報が届く。
本屋から「本が届いた」という電報だが、マイケルは「人違いだ」と言って追い返す。
しかし、後でマイケルはわざわざ電報を受け取りに行き、返電する。
宛て先はコペンハーゲン
何か怪しい。
コペンハーゲンのホテルに着くと、本屋から電話が掛かって来る。
サラは受け取りに行こうとするが、マイケルから「本屋には行くな」と言われてしまう。
それでも、サラは運河沿いにある本屋へ行く。
本屋の店主は「何故代理を寄越した?」と、ものすごい形相をする。
サラがマイケルに受け取った本を渡すと、マイケルは、わざわざ人がいないことを確認して、トイレの個室に入る。
包みを外すと、本の最初のページに「107ページを見よ」と書かれている。
そのページには、「π(パイ)」の記号に印が付けられていた。
で、マイケルはサラに「スウェーデンの国際会議に出席するためにストックホルムへ行く」と言う。
サラはそんなことは聞いていなかった。
そして、彼女を連れて行かないという。
婚約者の不誠実な態度に不信感が渦巻くサラ。
未だ話しは読めないが、ヒッチコックらしい展開。
彼女が秘かにマイケルの行き先を探ると、何と東ベルリンであった。
あの「鉄のカーテン」の向こうにある東ベルリンである。
ここで、本作のタイトルの「カーテン」とは、「鉄のカーテン」のことだと分かる。
本作は、ヒッチコックの作品としては評価が低いらしい。
特に、若い人には「鉄のカーテン」が何のことやらピンと来ないようだ。
けれども、我々は子供の頃から、ベルリンの壁を越えようとして銃殺される人達の映像を何度も見て来た。
その壁が崩壊した時、涙を流しながら抱き合う人々の姿も映像で見た。
だから、当時、東側へ行くというのがどういうことか、想像は着く。
まあ、今の日本で言えば、北朝鮮へ行くようなものだろう。
ちょっと例が古いが、ハイジャックをしなければ行けないような国なのだから。
話しを元に戻そう。
サラは、秘かにマイケルと同じ東ベルリン行きの飛行機に乗り込む。
機内で彼女に気付いたマイケルは激怒する。
「僕に近付くな。着いたらすぐに戻れ。」
飛行機が東ベルリンの空港に着き、マイケルがタラップから降りると、一斉にフラッシュが焚かれる。
何だか、「アームストロング教授は東ドイツに居住する」とか言っているぞ。
要するに、亡命ということか。
婚約者を置いて、そんな鉄のカーテンの向こうにある国に亡命しようとする人の神経が分からん。
我々だって、北朝鮮なんかに行ったら、二度と日本に戻っては来られまいと思うだろう。
で、マイケルは、秘密諜報員のグロメクという目がギョロッとしているオッサンの案内で、東ドイツ保安省の役人ゲルハルトに会う。
ゲルハルトからは秘書の同行を咎められる。
だが、ゲルハルトは「鉄のカーテン内に残る気持ちは?」とサラに尋ね、彼女が首を縦に振ると、一転、同行を認める。
僕の細君は、僕が「平壌に行く」と言ったら、「勝手にどうぞ」と言ったが。
マイケルの記者会見が大々的に行われた。
彼は、「迎撃ミサイルの開発のために亡命を決意した」という。
で、カール・マルクス大学の教授に就任するんだと。
カール・マルクス大学って、名門だよな。
マイケルのことをじっと見ているグロメクが今後のポイント。
マイケルとサラはホテル・ベルリン(ベタな名前だ)へ。
サラは、マイケルに騙されたことを怒っている。
それでも、マイケルは「今は訳は言えない」の一点張りで、彼女は大変不安になる。
翌朝、サラが目覚めると、マイケルの「帰国しろ」という置き手紙が。
当のマイケルはどうしたかと言うと、「散歩に行く」と言い残して、バスに乗った。
そのバスを、グロメクがバイクで追って来る。
明らかに、何か怪しまれているようだ。
マイケルはバスを降りて博物館へ(内部はマット・アート)。
グロメクに着けられていることが分かると、今度は裏口から外へ。
グロメクを撒くためにタクシーに乗る。
タクシーは郊外の農家へ。
中から出て来た女性に、マイケルは「π(パイ)」の記号を、靴で地面に書いて示す。
女性は、農場でトラクターを運転しているヒゲの男を指し示す。
ヒゲの男はアメリカのスパイだった。
で、マイケルと彼は何やら相談事をする。
ところが、案の定、グロメクはこの場所まで来たんだな。
副大臣に報告するぞ」とマイケルを脅すグロメク。
マイケルは、(この農家は)遠縁の親類だ」と言って誤魔化そうとする。
グロメクは、先程マイケルが地面に書いた記号を指して、「π(パイ)とは何だ?」と迫る。
実に緊迫感のあるやり取りである。
「ヘタな芝居はやめろ! スパイ野郎め!」と叫び、グロメクは電話機のところへ。
電話機にナベを投げ、電話線を切る女性。
グロメクのピストルを奪い、女はグロメクを包丁で刺した。
それでも死なないグロメクを、女はスコップで殴る。
グロメクは、怪力でマイケルの首を締めている。
マイケル絶体絶命!
その時、女がオーブンのスイッチを入れた。
燃え盛るオーブンの中に(その描写はないが)、二人はグロメクの首を突っ込む。
このシーンは、肝心な部分は映さないが、ものすごい緊迫感である。
正に、手に汗握るシーンだ。
映画史上名高いのも頷ける。
全てが終わり、血の付いたマイケルの上着を暖炉で焼く女。
更に、血の付いた手を洗う。
女は、「グロメクの死体は埋める」と。
「グロメクのバイクも埋める」と。
そして、マイケルは待たせていたタクシーに乗って帰った。
一方、ゲルハルトはサラと話し合っていた。
彼女は、「東側の研究に協力する」と告げる。
ゲルハルトは、部下に「グロメクを呼べ」と言う。
しかしながら、彼は行方不明であった。
「探し出せ!」
今回の件で、明らかにマイケルは怪しまれていた。
さあ、これからどうする?
本作は、ヒッチコックの作品の中では、余り評価されていないらしい。
でも、すごいサスペンスだと思うけどね。
特に後半は。
グイグイと引き込まれるよ。
ヒッチコックは、共産主義の内実を暴きたかったのかな。
とにかく、彼らは「組織」だよな。
世界同時革命を目指す僕でも、本作を見ると、心が折れる