『ナバロンの要塞』

この週末は、ブルーレイで『ナバロンの要塞』を見た。

1961年のアメリカ映画。
監督はJ・リー・トンプソン
猿の惑星・征服』や『最後の猿の惑星』なんかも監督しているが、代表作は間違いなく『ナバロンの要塞』であろう。
僕の高校時代、この『ナバロンの要塞』と続編『ナバロンの嵐』が大好きだと公言している同級生がいた。
自室の床の間には日の丸を飾り、愛読書は『連合艦隊の最期』、あげくに、修学旅行のバスの中で軍歌をうたうという筋金入りの軍国少年であった。
彼は防衛大学を受験するも不合格、一浪の末、京都のR命館大学に入学したが、卒業後、初志を貫徹して帝国海軍の軍人になった。
僕は高校時代、『60年安保闘争』『全学連全共闘』を愛読していた左翼少年であり、彼とは思想的に水と油であったが、何故か仲は良かった。
後に、結婚式のスピーチを頼まれた程である(さすがに自衛隊批判は自主規制した)。
で、その彼の薦める『ナバロンの要塞』をいつか見なければと思っていたが、今に至るまで見ずに過ごして来たのである。
戦争映画としてはかなり有名な作品だが、実際に見てみると、想像していたのとは全然違った。
戦闘シーンそのものはあまりなく、冒険映画のような感じ。
そして、人間ドラマが中心になっている。
そうすると、大事なのは俳優陣。
主演はグレゴリー・ペック
大スターで、著名な作品に多数出演しているが、僕が見たのは情けないことに『オーメン』くらいしかない。
ただ、思ったほど演技はうまくない。
しかし、共演が本当に役者揃い。
ナイル殺人事件』のデヴィッド・ニ―ヴン。
『道』『アラビアのロレンス』のアンソニー・クイン
『道』におけるザンパノの、粗野な男の心の中に秘められた悲しみの表現は素晴らしかった。
ハムレット』(1948)、『アラビアのロレンス』『ローマ帝国の滅亡』のアンソニー・クエイル
天地創造』『カサンドラ・クロス』のリチャード・ハリス(ただし、本作での印象は薄い)。
音楽は、『ローマ帝国の滅亡』等を手掛けたハリウッドの巨匠ディミトリ・ティオムキン
舞台は第二次大戦中のギリシア
最初に、パルテノン神殿のような遺跡が映し出される。
要するに、ギリシアのイギリス軍を助けなければならないが、艦船を送るためには、ナバロン島の要塞にあるドイツ軍の大砲を何とかしなければならない。
だが、それが断崖絶壁の上にあるため、破壊するのが困難。
そこで、少数精鋭のゲリラ部隊が潜入し、直接爆破しようという作戦が立てられる。
だが、それは司令官自身も「可能性はゼロ」というような困難な作戦であった。
作戦は6日間掛けて遂行された。
最初、連合軍は飛行機に爆弾を積んでナバロンの要塞を爆破しようとするが、地形が特殊なので歯が立たない。
キース・マロリー大尉(グレゴリー・ペック)は登山家で、ギリシア語とドイツ語が話せるので、今回のゲリラ作戦に白羽の矢が立つ。
更に、爆薬の専門家・ミラー伍長(デヴィッド・ニ―ヴン)、レジスタンスの闘士・スタブロス大佐(アンソニー・クイン)等。
立案者はフランクリン少佐(アンソニー・クエイル)で、彼自身も同行する。
どうでもいい話しだが、アンソニー・クインはシア・サッカーのいいスーツを着ている。
僕も昔、ラルフ・ローレンの同じ生地のスーツを持っていたが、これは汚れが目立つんだ。
島に渡るために用意されたのは、ひどいオンボロ船。
途中、ドイツ軍の船に見付かり、ギリシア人のフリをする。
でも、彼らはドイツ戦を爆破する。
この後、猛烈な嵐に襲われる。
このシーンは、セット撮影だろうが、大量の水を投入して大変な迫力である。
これは、CGでは絶対に出せない臨場感だ。
ここは、本当に特筆に値する。
ちょっと、見たことのないレベルの映像だ。
さすが、アカデミー賞を獲っただけのことはある。
で、オンボロ船は座礁してしまうが、彼らはそのまま島に上陸する。
この嵐で、爆薬は何とか助かったものの、食料と薬品を失ってしまう。
雨の中、登山家のマロリーが先導して、120メートルの断崖絶壁を登る。
ここはリア・プロジェクションのアラが見えてしまうが(ブルーレイだと特に)、それはご愛敬。
崖の上の敵に気付かれるが、射殺する。
ただ、敵の本部への通信で異変に気付かれてしまう。
その上、フランクリン少佐が崖から落ちて、脚の骨を折る大怪我をしてしまう。
彼を置いて行く、または「殺す」という選択もあったが、とりあえず、担架に載せて連れて行くことにする。
今度は雪。
次から次へと困難が訪れる。
よく分からないが、ゲームをしているような感覚なのだろうか。
本作は、こういう冒険映画の走りのようである。
途中、地元のレジスタンスと合流。
3日目、敵の捜索が始まっている。
4日目、フランクリン少佐の脚は壊疽になり、切断しなければ危険な状態に。
おまけに、とうとう敵に発見され、全員捕らえられてしまった。
彼らの運命や如何に?
何度も言うが、この時代の戦争映画(に限らず、娯楽大作は何でも)って、結局は人間ドラマなのである。
ただし、メロドラマは要らない。
まあ、これも一応は伏線になっているのだが、ここで見せるグレゴリー・ペックの大根っぷりが、惜しいと言えば惜しい。
ラストの爆破シーンは、ミニチュア丸出しで、ちょっと残念。
当時の技術の、これが限界だろう。
アカデミー賞視覚効果賞受賞。
61年洋画興行収入3位(1位は『荒野の七人』。ちなみに、邦画の1位は『椿三十郎』。正に、映画の黄金時代である)。